結婚相談所
結婚相談所
「本日は私共の結婚支援の会、α会の説明会にお越し頂き誠にありがとうございます」
「御社の会のシステムについて概容を説明して頂けますか?」
「はい、私共のα会は日本最大規模の男女合わせてI名の会員様に御登録を頂いております。会員様同士のコミュニケーションを促進する為、様々な方法を用意してございますが、もっとも基本となりますのは、会員様がお相手様をコンピュータシステムを通して検索して頂き、お気に入られましたお相手様にコンタクトをとる方法、またコンピュータが自動的にふさわしいお相手様を判定し、そのお相手様をお客様にご紹介をする方法です」
「私からコンタクトを取った後、またはコンピュータからの紹介の後の流れはどのようになるわけですか?」
「お客様からコンタクトを取った場合、お客様のプロフィールがお相手様に送られます、お相手様がお受けになられますと、そこからは会員様同士直接コンタクトを取って頂き、交際を始められることとなります。コンピュータからの紹介の場合もほぼ同様でして、コンピュータから紹介された方々の中からお客様の理想に近いお相手様にコンタクトを取って頂きます。その後はご自分でコンタクトをとられた場合と同様の流れとなります」
「つまり、相手を選ぶのはコンピュータの支援に頼り、ひとたび理想の相手を見つけたら後は会員同士のやり取りになるという訳ですね」
「大まかに言いますとその通りでございます」
「α会自体がお相手を斡旋するといったことはしないのですか?」
「α会では定期的に会員様をお招きするイベント、パーティ等を開催いたします。その場合はコンピュータ上のデータでは無く、直接本人にお会いして理想のお相手様を探すことができ、その場でご本人同士で何らかのお約束を取り付けて頂いて交際をスタートさせることができます」
「つまりこういうことですな、α会は昔の見合い写真を持って回る世話焼きおばさんのように、男女をくっつける為に、双方を訪ねて説得し、結びつけるようなことはしないと」
「左様でございます。α会はお相手様選びについて第一に会員様の自由なご意志を尊重いたします。できうる限りの出会いのチャンスを設けさせて頂き、そのチャンスを会員様の自由なご意志で結婚まで発展させて頂く、そういうシステムでございます」
「ところで、会員数は何名とおっしゃいましたかな」
「男性J名、女性K名でございます」
「それは国内の結婚を志望する人々の何パーセントに当たるのでしょうね」
「現在はほぼ30%、私共は日々この数字を上げ、会員様の出会いのチャンス増加と会費低減に貢献するために邁進しております」
「仮に結婚を志望する人々全てを入会させた場合どうなるのでしょうね」
「そこまでは無理と思いますが、そうなりますとα会は日本国内全てのカップルについて出会いの場を設けたということになりますね」
「あなた方は日本全体のコミュニティそのものであると」
「それは大げさな」
「しかし一方、相手を探すのは自分の努力次第であると」
「はい、α会では余計な介入は却って会員様に何の利益をもたらさないと考えております」
「つまり無いのも同じということですかね」
「はい、私共のα会はその存在自体が全く感じられなくなるほどまでに人々に認知され、且つその本来の機能を最大限発揮すべきと考えております」
「では会費は何のために?」
「ですからその存在自体が全く感じられなくなるほどまでに……」
「それでは虫が良すぎるでしょう」
「しかしながら、実社会において男女の方々がともに生活しているというのに、結婚へのプロセスの場となり得ていないという現実があります。私共α会はそれを補完するものであります。人々は夢を見すぎています。現実で無い夢を。私共α会は夢を見る場です。たとえその結果が退屈な現実であってでもです。私たちはとにかく先へ進まなければならない。一時しのぎの夢を借りてでも」
「夢はいずれ破綻するでしょう」
「はい。しかしそこから先はたまたま行きがかったお二人、ご夫婦で新しい夢をお探しになることができます」
「というか、離婚がまず考えられませんか」
「結構。それでも結構。それでも前進です。人生は前進です。人生で早すぎて困るのは葬式だけです」




