泣いた鬼は魔王に為った
昔々とある村に鬼がおった。
その鬼は村人を殺戮したのち、あらゆる魔物やならず者たちをまとめ上げ、過激派組織『魔王国』樹立を宣言。『魔王』を名乗り暴虐非道の限りを尽くしていた。
「魔王よ。その首、もらい受ける」
魔王は玉座よりひとりの人間を見下ろす。
それは中性的で、精悍で、それでいて美しい顔立ちの男だった。腰まである紅髪をひとつに束ねて、革の鎧にぼろぼろのマント、鞘から抜かれたるは鈍く輝くロングソード。彼は『勇者』だった。
魔王は目を細める。
「久しいな紅毛の」
勇者は剣を構えたまま首をかしげた。はて、久しいとはどういう意味か。彼が魔王城へ攻め入ったのは今回が初めてだ。すこし考え、おそらく過去に倒しそこねた魔物が魔王に成ったのだろう、と思いついた。
「まあ覚えてはいないだろうな、貴様は。いくつもの戦場に送られ、いくつもの国を落とし、数え切れないほどの人や魔物を殺してきたものなぁ。生きた戦略級兵器『勇者』よ」
魔王城の外には無数の肉塊が転がっている。つい先ほどまで魔王国の兵士だったもの。すべて勇者により屠られたものだ。魔王国は既に壊滅状態に陥っていた。魔王は、頬杖をしたままため息をつく。
「そうさな……今から話すのは遺言代わりの自分語りだ。興味がなければ聞き流すがよい」
話はさかのぼる。昔々の、そのさらに少しだけ昔。魔王がまだただの鬼だったころのこと。
その鬼は、人間の村のかたすみに居をかまえて、青鬼とふたりでつつましい生活をしていた。昼間は家にこもる。夜は獣やら賊やらが村へ入って悪さしようとするのを追い払う。住まわせてもらっている手前、決して村人に迷惑をかけないよう努めていた。そのおかげもあってか、食物や道具や、生活に必要な物資を分け与えてくれる村人もいた。
「どうか気をつかわないでくれ」
「いえ。あなた方がこの村を守ってくださっているのは存じておりますので。必要なものがあれば何でも……」
「いい。いい。他の者にもいい顔はされないだろうに」
事実、村人のほとんどは鬼たちに出ていってほしいと思っていた。家に石を投げ込まれるなど日常茶飯事。放火されたことも何度もある。どうせ粗末な家なので修繕するのも簡単なものだが。
「人の世で鬼が生きるというのはこういうことなのだ。皆、鬼はこわいだろう」
青鬼は口癖のようにそう語るのだった。
また、この青鬼は優しい心根をもっており、酒に酔っては次のようなことを口走る。
「ようおまえ。おれが村ん中で適当に暴れるから、それを討伐するといい。そうすれば英雄として皆に受け入れられるだろうよ」
いつもこれだ。もちろん鬼はこれを丁重に断る。自分のために親友が悪者になるのは耐えられないから。それにそんなことをしたら青鬼は村に居られなくなるだろう。
「おれはおまえと違って人間が嫌いだ。ここを出てひとりで暮らすさ。人の世は、わずらわしい」
一方的にそんなことを語ってはごろりと転がって大いびきをかいて眠るのだ。何か言い返したくても、鬼は、言葉に詰まるだけ。ただ罪悪感を飲みこんだ。
ある日のこと。鬼の家を訪ねる者が居た。
のぞき窓からのぞくとそれは見知らぬ紅毛の人間だった。ここの村人ではない。戸を開けようとする鬼を青鬼が制止する。
「賊かもしれん。おれが出る」
青鬼は頭巾を被って角を隠し、できるだけ恐ろしくないようにして、戸から出た。
「何用か」
「鬼、だな。貴様は」
人間のマントからちらりと剣が見えた。
「ここに住んでいる、のは、貴様ひとり、か?」
「そうだ」
次の瞬間、青鬼の左腕がとんだ。いつのまにか剣が抜かれていて、急所を守れただけでも幸運であった。切断面からどくどくと血があふれる。
「やめてくれ。人の世の秩序は守ってきたつもりだ」
青鬼の懇願に対して人間は興味なさげに、ただ剣を眺める。剣は刃こぼれしていた。鬼の骨を断つにはなまくらすぎたのだ。人間は剣を捨てて前蹴りで青鬼を蹴飛ばした。家が巻き込まれて吹き飛び、隠れていた鬼も瓦礫の下敷きになる。
「この辺では、人がよく、食い殺されている。貴様だろう。人食い鬼め」
「村のまわりには魔獣の巣もあるのだ。それにやられたのだろう」
「知らん。村人も、迷惑していると言っていた、ぞ。貴様のような鬼は、居るだけで迷惑、だ」
人間が拳を振るう。まるで天変地異が人の形をして顕現したかのように、その一挙手一投足で地形すら変わっていき、爆心地にいる青鬼は見る間にぼろ雑巾のようになってゆく。鬼は息をひそめて遠巻きにながめることしかできなかった。
「……ふん」
やがて物言わぬ肉塊になった青鬼を、紅毛の人間はただ見下ろして、どこかへ去っていった。
静かになったのを見計らって村人が集まってくる。最初に青鬼が村外まで蹴飛ばされていたので、幸いにも村への被害はほとんどなかったが、不安には変わりない。そして人々は、その惨状を目の当たりにして言葉を失った。
鬼は瓦礫の下で歯ぎしりをする。自分らが招いた破壊だろうになにを「ここまでするつもりはなかった」とでも言うような顔をしているのか。いやしかしそれもマシな方か。中にはこの光景を前にしてなお喜んでいる者も居る。骸へ石を投げたり唾を吐いたりする者も。今すぐ飛び出したかったが、万一先ほどの人間が戻ってきたら勝ち目はないと見て、鬼は必死で息をひそめた。
夜になり辺りにひと気がなくなってから鬼は外へ這い出した。青鬼を埋葬してやりたかったが、骸はどこかへ持ち去られている。仕方あるまい。村を出ることを決め鬼は荷物をかき集める。行くあてなどないがここにはもう居られまい。誰にも迷惑をかけないように遠くへ行くのだ。とにかく遠くへ。
……ふと耳をすますと、何やら地響きが聞こえてくる。もしや紅毛の人間が戻ってきたのかと鬼は身構えたが、違った。魔獣だ。地形が変わったせいで巣も破壊され、混乱した魔獣の群が村へ向かっているのだ。鬼は荷物を捨てて魔獣の群に立ち向かった。しかし数が多すぎてひとりでは捌ききれない。そもそも、鬼は青鬼ほどは戦闘が得意ではないのだ。そうこうしているうちに次へ次へと魔獣が村へなだれこむ。
鬼が村内へ戻ったころにはもう地獄絵図だった。人が生きたまま食い散らかされている。家の中にまで魔獣が入り込んでは、絶叫と、骨をボリボリ噛み砕く音が響いてくる。鬼は目につく魔獣をなぎ倒しながら、ひときわ騒ぎの大きい方向へ走った。
村の中央。魔獣と武装した人間が入り乱れるそのど真ん中に、異形の怪物がいた。その怪物は周囲の死肉を無差別に食らっては更に大きく歪な形へ変貌していく。その青い肌を見て鬼は、これが青鬼の成れ果てであると思い至った。死に損ねたのか憎悪で蘇ったのかは定かではないが、とにかくそれはもう知性すらない、親友とは呼べないバケモノになっていた。
鬼はバケモノに拳を振るった。鬼族の身体強度をもってすれば、下手な武器を持つのはむしろ手加減にしかならない。己の四肢と牙こそ最強の武器である。しかし悲しいかな、傷ひとつつけられない。相手は腐っても戦闘に長けたあの青鬼だ。地力から差が大きすぎる。小動物でも相手するかのように指先でピンと弾き飛ばされ全身の骨が砕けた。
血を吐く鬼にバケモノがぬらりと迫る。
何を思ったかバケモノは、散らばっている村人の死体から腕一本拾って、鬼の口へ押し込んだ。
「……くエ」
息ができなくなり、鬼は、否応なしに咀嚼させられる。初めての人肉の味。すじ張っているし臭いし、体毛が口の中で絡んで不愉快だし、そもそも血抜きもしていないしで、とても食えたものではない。なのに、鬼の舌は多幸感をもってそれを受け入れる。牙はひとりでに肉を噛みちぎり骨を噛み砕き、喉が嬉々として開いて生ぬるい血とともにそれらを胃袋へ流していく。自分は人を食う生き物なのだと鬼の身体が言っているようだった。
腕一本平らげたところで鬼の身体に異変が起こる。怪我がみるみる癒え、血液とは違う『闘気』のようなものが凄まじい勢いで全身を駆け巡る。精神の高揚に任せ再び振るわれた鬼の拳は、バケモノの骨を粉砕した。同時に拳も砕けたが痛みは感じない。逆の拳を振るい、そちらも砕けたら蹴り、脚も砕けたら牙で食らいつく。バケモノの血肉を食らうとまた傷が癒えた。また激しくぶつかり合う。そして食らう。その繰り返しだ。互いの心身を削り合う最中、鬼の胸中に、ふと疑問が湧き起こる。はて、いくら自分が闘いに目覚めたからと言ってあの青鬼と対等に果たし合えるなんてことがあろうか。しかもこのように変貌した青鬼と……。
その疑問はついぞ解けることはなかった。バケモノは今度こそ絶命し、完全に沈黙。その前に立つ鬼もまた、かろうじて生きてはいるもののもはや原型が分からないほどの重傷を負っていた。ぎょろりと目だけ動かして見回すと、魔獣はいなくなり、村人たちが遠巻きに見ている。どうやら少しは守れたらしい、と鬼は安堵した。朦朧とする頭に浮かぶのは「おれが暴れるから」といういつもの青鬼のたわごと。はからずもその通りになってしまった。なにも英雄になりたくて村を守ったわけではない。しかしまあ、ここまでやったのだから、少しは……などと期待している浅はかな自分に鬼は気がついた。
「うわぁ……」
浅はかな期待はいとも容易く裏切られた。村人たちの目にあるのは尊敬でも感謝でもなく、恐怖と嫌悪感。鬼たちを受け入れていたはずの者すら失望をもってその光景を眺めていた。
「やっぱり危ないやつらだったんだ」
「さっきアレが人を食うのを見たぞ」
「あんなになってもまだ生きてるなんて、気持ち悪い」
「今ならおれたちでもアレを殺せるんじゃないか?」
「やろうやろう」
農具や狩猟具で武装した村人たちが、瀕死の鬼へにじり寄る。誰かが猟銃を発砲したのを皮切りに一方的な暴力が始まった。刺したり斬ったり撃ったり。しかし急所という急所は硬い骨で守られているので人間の力ではどうにもならず、数人がかりで頭を押さえ込んで、ノミやノコギリで首を落とそうと悪戦苦闘する。鬼は自分が死んでいくのを冷静に眺めていた。首が落ちるまでもなく失血によっていよいよ死ぬな、と。
「あ痛ッ」
ノコギリを引いていた手元が狂い、自分の手をざっくり切って、村人のひとりが流血した。その血が一滴。ほんの一滴。鬼の口へ。
「ぎゃああああっ」
瞬く間に鬼の意識は覚醒し、衝動のままに村人の腹へ食らいついた。たるんだ皮膚と薄い肉を食いやぶり、ほとばしる血をすすり、こぼれ落ちた臓物をむさぼった。食うほどに傷が癒えていく。そしてより強く丈夫な身体へ作り変えられていく。理解。鬼は、人を食うほど強くなる生き物なのだ。
「うわああ来るな」
「ひいい」
「ゆ、ゆるしてっ」
命乞いをする村人たちを見下ろしながら鬼は考える。かくもか弱い生き物どもをどうすべきか。もともと村を出るつもりであったから、もう放っておこうか。しかし、もし、これらが先ほどの紅毛を呼び戻しに行ったらどうなる。アレは強かった。きっと電光石火の速さで再び現れて今度こそ殺されてしまうだろう。死にたくは、ない。
なればこそ……ひとりも生かしはしない。
鬼は村人を残らず殺害した。さすがに村ひとつ滅ぼすのは骨が折れたが、孤立した場所だ。村から出る道は限られているので、まずそれらをふさいで、それからしらみつぶしに片っぱしから殺して回った。家や用水路は破壊し、魔獣も呼び込んで、女子供も老人も分け隔てなく。そして腹が減ればそれらを食ってまた力をつける。
村を滅ぼした鬼は放浪を初めた。出会った人間は殺し、食う。ただ自分が殺されないため。安心のためだ。ところで、放浪の途中で人間とはちがう種族と出会うこともあった。獣よりかはずっと高い知能と、一定の文化・文明や社会性を持ち、しかし人間社会とは相容れない、いわゆる『魔物』と呼ばれる少数種族の者たちだ。鬼族もまた魔物の一種である。魔物たちは往々にして、人間社会から爪弾きにされたり虐げられたりしていた。鬼はそんな魔物たちを仲間に引き入れて回った。仲間は次々に増え、自分から仲間に加わりに来る者も現れはじめ、グループとしての規模が加速度的に膨れ上がり、複雑に組織化され、いつしか反社会的組織として人間社会に認知され始めた。
そしてあるとき、鬼たちはとある人間の国に『大粛清』をおこなった。不当な搾取に対する抗議、という大義のもと、強制収容所に攻撃をしかけて占拠。そして収容されていた魔物たちを解放。周辺地区を制圧。
鬼は『魔王国』樹立を宣言した。
「なあ勇者。我はどうすればよかったのだ?」
魔王が話す間、勇者は剣を構えたまま動かなかった。殺そうと思えばいつでも殺せるからだ。しかし、投げかけられた問に対しての答えは、持ち合わせていなかった。
「あのまま大人しく殺されるべきだったか? そうかもしれんなぁ。でも我は、殺されたくなどなかったぞ」
「たくさん殺した、貴様が、言う権利はない」
「先に殺そうとしたのはあいつらのほうだ。それに、それこそ我が生まれるずっと前から魔物は人間に虐げられてきた。黙って殺されるべきは人間のほうではないか?」
鬼は憐れみすら感じさせる目で、勇者を頭からつま先まで眺めて、言う。
「勇者。お前、去勢されているだろう」
勇者は何も答えない。肯定を意味する沈黙だった。なぜ魔王なんぞにそんなことが分かるのか、勇者に知る由もないが、腐っても一国の王を名乗る者である。魔王国のスパイはそこら中におり、勇者当人すら知らぬ情報まで魔王は握っているのだった。
「勇者などと持ち上げられてはいるが、身分的にお前はあくまで奴隷。自由は限りなく制限されている。うっかり知らないところで子など作られたら困るものなぁ。勇者は一点モノの兵器でなければ困るものなぁ」
「……子ができても、勇者になるとは限らん、だろう」
「なるさ。お前の強さはその血によるものだ」
「血……?」
「やはり自覚はないのだな。お前は人族と鬼族とを無理矢理かけ合わせて作られた人為的な半人半鬼だ。半分は我が同胞なのだよ勇者」
本来鬼族の力は人を食うことで覚醒し成長する。そこを、ひとつの肉体に鬼族と人族の因子を同居させることで、常時覚醒状態を維持し続けている。火に油を投入し続けているような状態だ。それが勇者の正体だった。もし勇者が子を成せばその特性が受け継がれる可能性は無視できない。
勇者はあくまで奴隷であり兵器である。難しいことはよく分からない。ただそれが正義だと言われ、信じて、求められた通りに力を振るってきた。多くの人々がそれを望むので疑う余地などなかったのだ。しかしここに来て、望まれないものが侵食してきて、何か前提の部分から『正義』が揺らいだ。
「そもそもの話としてだ。なぜお前はここに来た?」
「それは、魔王国が悪だから、だ」
「悪ならなぜこうなるまで放っておいた?」
「……は?」
「魔王国がここまで大きくなる前に勇者をけしかければ良かったではないか。そうすればもっと犠牲者は少なく済んだ。お前の国は、何故そうしなかった」
「それは」
「それは魔王国が比較的どうでもいい存在だったからだ」
「そんな、ことは」
「我らはただ魔物を人間から解放するために粛清を行った。それだけだ。一部の自治区を占拠したりはしたが、国相手に宣戦布告や侵攻などはしていない。だから別段どうでもよかったのだ」
「しかし、現に、私はここに送られて……」
「ああ。ようやく脅威と言える程度には魔王国が強くなったのだな。もしお前の国に侵攻していたならそれなりには戦えただろう。我々魔物は、決して弱くはない。ただ少数だった。故に多数にとっては都合が悪く、虐げられてきた。数こそ強さだ。都合だ。だから我は仲間を集めた」
「都合……」
「そうだ。この戦いには、初めから正義などない。正義というのは対等であって初めて機能する。人と魔は対等ではない。だからこれは正義のないただの食い合いだ。都合の押しつけ合いなのだ」
ひとしきりしゃべった鬼はしゃべり終えて口を閉ざし、目を閉じた。もう語るべきことはない。あとはすべて、勇者次第。
「魔王。魔王よ。急に黙るな。どうすればいい、私は。分からない。私はただ、正義のために、甘んじて、勇者の役目を、受け入れてきた。今更、半分は鬼だ、などと言われても。自分で考え、決断したことなど、私は、一度も……」
ふと彼の頭によぎるのは母のこと。母は人間で普通の奴隷だが、王宮の一室を与えられて衣食住の満たされた生活をしているらしい。勇者の母だから大事にされているのだと思っていたが、ただの人質なのだと、今更気がついた。かたや外を見れば魔物の死体が無数に転がっている。彼自身、魔物などどうでもいい存在だと思っていた。だから殺せた。両者の重みを天秤にかければどちらが重いかなど言うまでもなかった、はずだ。
魔物は人間にとって悪だ。文化や生態が、人間にとって致命的に都合が悪く、社会秩序を脅かす。中には人間社会にとけこむ魔物も居るが、そういう者は人間社会のルールに合わせて大人しくしている。そうあるべきだ。それができぬなら住み分けをすべきだ。それすらできぬなら死ぬべきだ。……そんな正論が、偉い誰かの語った言葉が、勇者の頭をぐるぐる駆け巡る。
しかしそれは『対等』か?
魔王は語った。正義は対等であって初めて機能するのだと。少数は多数に迎合すべきだ、などと言っている次点で対等などではないだろう。魔王の言葉を借りるなら、それはもう正義が正常に機能する状況ではないのである。
そこまで考えて、勇者は思い至った。この『都合の押し付け合い』を終わらせるために自分が為すべき、役割を。
魔王配下の生き残りが見守る中、勇者は、魔王の首を落とした。そして玉座に座り宣言した。
「たった今より、私が、魔王だ。
人間の国に、宣戦布告を、する」
紅毛は逆立ち、額からは角が突き出し、その瞳は血の涙に濡れていた。