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窓際の不思議な彼-part7-成功者

窓際にいる不思議な彼

彼に悩みを話すと解決するという噂が・・・

「〇〇学校の〇〇クラスの」

「窓際にいる不思議な彼に」

「困っていることを話すと」

「解決するらしいよ」

「解決できた人を知ってる」

「ただのデマだよ」

「誰なの?」

「その学校の生徒らしい」

「その学校の生徒じゃないって聞いた」

「先生らしいよ」

「部外者だって」

「すごいイケメンだって」

「すごい可愛い女の子だよ」

「汚いおじさん・・・」

「優しいおばあちゃん」

「近所の悪ガキ」

「赤ちゃん・・・」

「印象にも残らない普通の人」

「彼は学校だけにいる訳じゃない」

「あの喫茶店でよく見るって!」

「パッと見で雰囲気が違うのが分かるって」

「自分から話したくなるんだって」

「なにそれ、怖くない?」

「公園のベンチにいたって!」

「部活に入ってるらしいよ」

「駄菓子食べてた!」

街の様々な所でそんな噂の話がされている。



■成功者

「こんにちは。君も招待されたの?」

「もしかして・・・彼の、お孫さん?」

「違う?これは失礼しました」

「随分お若いので・・・」

「ああ、失礼、申し遅れました」

「私、こういうものです」

「ええ。おや、ご存じで?」

「ええ。私も彼の書く物語に心を奪われまして」

「はは。良く知ってらっしゃる」

「いえいえ、成功者だなんて」

「私のは運ですよ。たまたま事業が上手くいっただけ」

「え?そうですね・・・」

「そこまで辿り着けない人もいる・・・」

「たしかに。それにしても・・・」

「あなたは、不思議な方だ」

「いえ、実はね、一目見て何か・・・こう・・・」

「惹きつけられたのですよ」

「ええ、今日の主役のあの方に似ている・・・」

「なんというか、話してみたくなるのです」

「それで・・・あっ、今日の主役の登場ですね」

「すごいパーティーですね」

「新作の発表会といっても、多分ですが・・・」

「お隣の素敵な方達の紹介がメインでしょうけど」

「ええ。本当に・・・」

「まるで小説の中の出来事ですよ」

「運命・・・なんですかね」

「偶然にも再会できた方と、また・・・」

「私?ええ。私の家族もあちらに」

「もう少し落ち着いたらご紹介を・・・」

「いえ、全然お邪魔には・・・」

「そうですか?分かりました、では、また別の機会に」

「先生、本当におめでとうございます」

「いえ、そんな、私の大量のラブレター・・・ですか」

「いや、お恥ずかしい。あまりにも先生の作品が・・・」

「素晴らしいものでしたから・・・」

「ええ。微力ながらも宣伝させてもらいました」

「いえいえ、そんな・・・」

「先生の作品をもっと知ってもらいたかったのです」

「そういえば、先生、若い男性の方を招待されたのですか?」

「え?ええ。先ほどまで話していました」

「いや、かなりお若い方でしたよ?」

「学生さん?かな?」

「ああ。やはり招待したのですね?」

「えっ。来てくれるとは思ってなかったんですか?」

「そうなんですね?」

「なんという・・・それも運命なんでしょうか」

「彼との待ち合わせから・・・」

「本当に、なんという偶然・・・」

「え?噂?窓際の?はは。たしかに先ほどの彼も・・・」

「窓際にいましたよ」



「ふう。大丈夫?なにか食べれてるかい?」

「ああ。ほら、あれが僕が夢中になっている作家先生だよ」

「はは。年甲斐もなくってやつだね」

「紹介したいけれど、あの状況じゃあね・・・」

「おっ?あそこにいるのは君が夢中な〇〇先生じゃないか?」

「ああ、気にせずに行っておいで」

「さあ、パパと美味しいものを探しに行くか?」

「良し。行こう」



「先生。素晴らしいパーティーでした」

「ええ。えっ、もう新たな作品を?」

「はは。本当に凄い」

「え?僕は先生とは違いますよ」

「誰かがすでに考えたアイデアに乗っかっただけです」

「ええ。そうですね・・・」

「飽和状態だと言われていた中で、飛び抜けることができた」

「僕の力だけじゃありませんよ・・・」

「多分、僕が先生の作品に惹かれるのは・・・」

「その圧倒的な独創性。オリジナリティ・・・ですよ」

「僕は本当に運が良かった・・・それだけです」

「僕には、先生のようなオリジナリティは無い・・・ですから」

「はは。すいません。比べるなんて、おこがましい」

「え?ああ、もうとっくに書いてませんよ」

「自分には物書きの才能はありませんでしたから・・・」

「ああ。僕の家族です。ご紹介します」



「おや?また窓際にいたね」

「そろそろお開きみたいだよ」

「どこに行ってたんだい?」

「先生が会いたがっていたよ」

「運命的な出会いを演出した君にね」

「・・・ねえ、君は、物を書くのかい?」

「書かないのかい?良い物が書けそうなのに」

「ほう。それは意外だね」

「物語よりも現実の出来事の方が良いのかい?」

「でも、現実は中々に厳しいものもあるだろう?」

「もちろん僕も現実の方が良いさ。少なくとも・・・」

「今は、ね」

「ん?ええ、あんまり人に話すようなことじゃないよ?」

「そう?そうかい?」

「じゃあ・・・」

「僕はね、もともとは作家志望だったんだ」

「実は、何作かは書籍化したんだ・・・」

「え?タイトル?多分、知らないと思うよ・・・」

「・・・本当?まさか・・・」

「読んでくれたのかい?」

「はは・・・お世辞でも、嬉しいものだよ」

「世間での評価は・・・」

「いや、そもそも評価なんてされるレベルにすらないよ」

「星の数ほどある書物の端くれさ」

「私はね、周囲や家族・・・」

「自分以外の人には成功者と呼ばれる」

「でもね、私が本当に成功したかったものは・・・」

「私が絶対に成功できないものだったんだ」

「ふふ。ごめんね。暗い話になってしまった」

「え?まだ、話してほしいって?」

「ふう。じゃあ、とことん話してしまおうかな」

「君には、何故か話したくなるんだ・・・」

「若い時はね、本を読むのが好きでね」

「予想もできないトリック」

「最後のどんでん返し」

「本という媒体だからこその仕掛け」

「緻密な伏線の描写」

「テレビや映画とは違うオリジナリティ」

「昔は・・・本の中が私のリアルだった・・・」

「そんな本好きの男はね・・・」

「自分も書き始めるようになる・・・」

「そして・・・才能の無さに気付くのさ」

「ペンを何度折ったか分からない」

「自分の手も折ってしまおうかとすら考えた」

「でもね、たまーに良い話が書けるんだ」

「そう、それが何作か書籍化した物だよ」

「でも、自分が100%満足できる物は書けなかった」

「それに・・・自分の作品よりもはるかに多く・・・」

「素晴らしい作品というのは作られる・・・」

「まさしく鳴かず飛ばず」

「常に焦りと挫折の思いがあった」

「そんな日が続いていくのかと思ったけれど・・・」

「妻に出会ったんだ」

「彼女は私の書籍を読んでくれていてね」

「ああ。彼女も本を読むのが好きなんだ」

「私が物を書いている姿が好きらしくてね」

「気分転換も兼ねていろんなところで書いていたんだ」

「付き合うようになって、生活のリズムが変わったよ」

「まともになっていった」

「なんというか、健康的にね」

「食事をしっかり食べ、仕事をした」

「そう。今の仕事の前身となる会社に入った」

「安定した日常に妻がしてくれた」

「それでも、時間があれば物を書いていたよ」

「しばらくして、子供を授かった」

「物を書くのは辞めたよ」

「あれだけ執着していたのに・・・」

「子供ができると分かった時にね」

「こんなことをしている場合じゃないって・・・」

「強く思ったんだ」

「もう、とっくに気持ちは切れていたのかもね」

「まるで、辞める言い訳を探していたみたいに・・・」

「迷いもなく仕事に打ち込んだよ」

「そして、今に至る」

「ふふ。周りがどんなに成功者と言おうと・・・」

「私自身が成功者ではないことを知っているんだ」

「なにを成功というのかは、自分にしか分からない」

「おっと、お開きみたいだね」

「ありがとう。こんな話を聞いてくれて」

「そうだ。ひとつ、私からもお願いがあるんだ」

「今度は、君の話を聞かせてよ」













「え?インタビュー?まいったな・・・」

「そんなに話せることはありませんよ?」

「そう?それなら、少しだけ・・・」

「はい。もうあの会社は私のものではありません」

「すでに売却し、信頼できる方にお譲りしました」

「作品について・・・」

「作品の出来は100%満足していますよ。私はね」

「あとは、読んでいただいた方に評価していただければ」

「ええ。楽しんでいただければ幸いです」

「ええ。ええ。いやー、何年ぶりでしょう?」

「いや、お恥ずかしい・・・」

「そんな前に書籍化したものまで・・・」

「それより、みなさん、ほら、私なんかよりも」

「他の先生方にもインタビューを」

「え?最後に?なんです?」

「・・・なるほど。それなら心配ありません」

「作家自身の話題性だけで賞が取れるほど」

「甘くないのは知っていますから」

「あくまでも内容ですよ」

「どれだけ人の心を動かすことができたか」

「それに、今回の審査員の中には・・・」

「そうです。わざわざ今回ご参加いただいたのです」

「あの方がいるなら、全ての作品は平等に評価されますよ」

「では、失礼します。家族が待っているので」



「ふう。ごめんよ。お待たせ」

「うーんと、ああ、この席だね」

「はは。そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」

「どんな結果になろうと、後悔は無いよ」

「それにしても、君が僕にまた物を書いてほしいなんて」

「そんなことを言うとは思わなかったよ」

「あのパーティー以来だよね?」

「え?先生が?他の先生も?」

「いやー、さすがにお世辞だと思うけどなー・・・」

「ああ、ごめん、ごめん」

「君は僕の書いた物語のファンだもんね」

「今、思えば、勝手に自分だけで作品を判断していたよ」

「読んでくれている人がいることを忘れていたよ」

「え?他にも僕の作品を好きな人がいたの?」

「・・・それって・・・」

「もしかして、窓際にいた?」

「違う?そう・・・」

「おっ、始まるね」

「ふふ。何故だろう」

「どんな結果でも受け入れると言っておきながら」

「緊張してきたよ」

「ああ、そうだ。これだけは言っておくよ」

「僕はね、とっくに成功者だったんだよ」

「え?ああ、違う違う」

「事業の成功とかじゃなくて・・・」

「君とこの子に出会えたことだよ・・・」



司会者

「それでは、今回の大賞作品は・・・」

連載となります。

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