窓際の不思議な彼-part6-駄菓子
窓際にいる不思議な彼
彼に悩みを話すと解決するという噂が・・・
「〇〇学校の〇〇クラスの」
「窓際にいる不思議な彼に」
「困っていることを話すと」
「解決するらしいよ」
「解決できた人を知ってる」
「ただのデマだよ」
「誰なの?」
「その学校の生徒らしい」
「その学校の生徒じゃないって聞いた」
「先生らしいよ」
「部外者だって」
「すごいイケメンだって」
「すごい可愛い女の子だよ」
「汚いおじさん・・・」
「優しいおばあちゃん」
「近所の悪ガキ」
「赤ちゃん・・・」
「印象にも残らない普通の人」
「彼は学校だけにいる訳じゃない」
「あの喫茶店でよく見るって!」
「パッと見で雰囲気が違うのが分かるって」
「自分から話したくなるんだって」
「なにそれ、怖くない?」
「公園のベンチにいたって!」
「部活に入ってるらしいよ」
街の様々な所でそんな噂の話がされている。
■駄菓子
「いらっしゃい。色んな駄菓子があるわよ」
「ふふ。学生さん?」
「そんなに珍しくないわよ」
「うちは老若男女問わずだから」
「みんな子供の頃に食べた駄菓子を忘れないのね」
「ああ。これ、美味しいわよね」
「あなたも子供の頃、良く食べたの?」
「え?そうねえ。私は・・・これね」
「ふふ。本当に、昔からあるわよね」
「あなたも好き?」
「そう。いつでも人気なのね」
「よかったら、そこの窓際の席で食べていってね」
「はい。ありがとう。またどうぞ」
「あら。また来てくれたのね」
「どうぞ。ゆっくり選んで」
「え?このお店?」
「そうねえ・・・どのくらいかしら?」
「だいたい〇〇年くらい前かしら」
「そう。私のおばあちゃんがね」
「最初は駄菓子屋さんというより・・・」
「そう。八百屋さん、八百屋さんね」
「ええ。私の母もやってたわよ」
「今はお店には滅多に出ないけど」
「?。ああ、大丈夫。元気も元気よ」
「別のお仕事をしているの」
「こっちの方にも住んでないし」
「母はそもそも駄菓子が好きじゃなかったの」
「私?ふふ。駄菓子大好き」
「母に怒られたことはないけど、よく食べてた」
「おばあちゃんがね、こっそりくれたの」
「おばあちゃんもまだ元気よ」
「奥にいるの。たまーにお店に出るわよ」
「あら?ああ、おかえりなさい」
「手を洗いなさいよー」
「ふふ。ごめんなさいね」
「うちの子なの」
「ふふ。ありがとう」
「え?うーん、好きなんだろうけど・・・」
「自分から欲しがったりはしないわね」
「ふふ。思春期ってやつかしら」
「最近、あんまり口をきかないの」
「別に悩みとかではないけどね」
「私もそんな時があったし・・・」
「あ。そういえば・・・」
「悩みというか心配なことが・・・」
「最近、うちの子が電話で誰かと話してて」
「そう。結構な頻度で」
「別れた元夫かと思ったけど、違うみたい」
「それに・・・」
「あんまりお店に興味が無いのに・・・」
「店内をよく見てたり・・・」
「でも、いいの」
「元気でいてくれれば・・・」
「ああ。ごめんなさい。何を話してるのかしら」
「決まりました?はい。ありがとう。またどうぞ」
「いらっしゃ・・・」
「お母さん・・・おかえりなさい」
「え?おばあちゃん?いるわよ」
「うちの子?もう少しで帰って来るわ」
「え?ええ・・・ちょっと待って」
「どうしたの?急に・・・」
「あ、おかえりなさい」
「手を洗ってねー」
「?」
「どうしたの?」
「あら。おばあちゃんまで」
「なによ、みんな集まっちゃって」
「え?みんなから?私に?」
「これ・・・」
「私の好きな駄菓子・・・それも・・・」
「かなり珍しい特大サイズの・・・」
「やだ、もう、なによこれ?」
「どうしたの?みんなで急に」
「大事な話?いやだわ、改まって・・・」
「なによ、怖いじゃない・・・」
「・・・そう」
「それで・・・」
「悩んでいたのなら、話してくれればいいのに」
「うん。分かった。あなたを応援します」
「お母さん、頼んでいいの?うちの子を」
「うん。そっか、ありがとう」
「ふふ。この子ったら・・・」
「なにを心配してるんだか・・・」
「私の好きな駄菓子を探そうとしてたの?」
「やだ。もう。素直に聞きなさいよ・・・」
「わざわざ特大サイズを取り寄せたの?」
「もう・・・」
「お母さんと長電話してたのね?」
「私に相談しなさいよ」
「え?傷付くんじゃないかって?」
「馬鹿。どう思っているか知らないけど・・・」
「そんなにヤワじゃないわよ」
「むしろ・・・」
「嬉しいわよ。私のじゃなくても・・・」
「私のお母さんの仕事の方面へ進むんでしょ?」
「傷付くわけないじゃない」
「それに、私だけじゃなくて、おばあちゃんもいる」
「だから、なにも心配しなくていいの!」
「良かったじゃない。進路がもう決まったなんて」
「嬉しいのよ。親からしたら・・・」
「自分の子が、やりたいことを見つけたんだもの」
「精一杯、応援するわよ!」
「え?なによ、あなた駄菓子好きなの?」
「おばあちゃんにもらってた?」
「ふふ。私と一緒じゃない」
「お母さんは相変わらず駄菓子は好きじゃないの?」
「え?これだけは食べる?」
「そう・・・」
「そっか・・・」
「この駄菓子・・・」
「思い出した・・・」
「お母さんが初めてくれた駄菓子がこれだった・・・」
「ふふ。だからなのかな」
「私も、これが好きなの」
「え?私の反抗期ってそんなにひどかった?」
「ええ?ウソ・・・」
「そんなことを?・・・」
「うん・・・覚えてないわ・・・」
「ごめんなさい・・・」
「ちょっと、あなたまで笑わないでよ・・・」
「もう、恥ずかしい!」
「あら、いらっしゃい。久しぶりね」
「え?これ?ふふ。目立つでしょ?」
「かなり珍しい特大サイズ」
「ふふ。これがね」
「インパクトが強いのか、かなり売れるの」
「子供にはこういうのウケるのよね」
「ええ、みんなでお金を出し合って買っていくの」
「なんだかお客さんが増えた気がする」
「あなたも買っていく?特大サイズ」
「はは。そうよね。大きすぎるわね」
「はい。いつもありがとう」
「あなたが来てくれるようになって」
「ちょっと変わったわ。良い方に」
「ふふ。なんでもないわ。ひとりごとよ」
「あら?おばあちゃん」
「珍しいわね、お店に出るの?」
「え?さっきの彼?」
「最近来るようになったの」
「え~、勘違いだよ」
「他人の空似でしょ?」
「うん。最近だもん」
「そんなに昔から変わらない人はいないわよ」
「ふふ。でも、そうね・・・」
「そういう風に考えるのも素敵ね・・・」
連載となります。
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