物忘れ(子どものころから)
読むことや書くことに熱中していると、あたりまえのことかもしれないが、他のことが疎かになってしまう。自分の場合はそれがかなり極端で、普通なら忘れないようなこともスルーしてしまって、ときどきとんでもないことになる。
昨日も大事な書類を準備しなければならないはずが、今から取りに行くと娘から連絡があって、忘れていたことに気がついた。LINEで何度も催促したのに、いつまで待っても既読にならないと叱られたのだが、そもそもスマホそのものの存在を忘れて、一ヶ月くらいは放置していることも多い。娘からの連絡も、固定電話にかかってきたのだった。
持っていてもなんの意味もないのだが、コンサートなどの催しで電子チケットを見せるためにだけは必要なので、口惜しいことに手放せない。
書類がと言われてこちらは鏡花の『南地心中』を読みふけりながら、そうか、『曽根崎心中』の歌舞伎の初演は昭和二十八年だった、とか確かめて喜んでいたわけで、どうやら頭のなかの優先順位が、そんなものから先に番号が付けられて上に積み重なるので、必要なことがどんどん埋もれてしまうらしい。
そういう傾向は子どものころからで、夏休みなんかは思い切り本を読んだり映画を観たりできるので、小学校では出校日というものがあることをよく忘れていて、窓の外をランドセルを背負った近所の子どもが帰ってくる姿を見て、あ、そういえばと思い出したりしたものだった。
まあ、そもそも、学校というものがずっと好きになれなかったのだけれど、そんな話はまたべつの機会に。




