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こりすま日記  作者: らいどん


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鏡花読書~黒髪(竜胆と撫子)

『黒髪』(大正十一年一月~六月)


 前回の『飯坂(いいざか)ゆき』に書いたように、未完の長篇『りんだうとなでしこ』の一部をなす雑誌連載部分には、『黒髪』というタイトルが付けられていた。「新編 泉鏡花集 第十巻」に初収録されている。


 わかりにくいので図で示すと、


 黒髪    a~d   e~g, i   h

      ――――  ――   ―

竜胆と撫子     ――  ――― ――― ~~~~~~~

      ===============   続篇

       単行本『りんだうとなでしこ』

       (全集では『竜胆(りんどう)撫子(なでしこ)』)


 ――と『黒髪』は、単行本『りんだうとなでしこ』にすべて含まれ、全篇の半分近く(約47%)を占めている。

 そうなると全集で『竜胆と撫子』を読めば、『黒髪』を特に読む必要は(細かい異同を確かめる以外に)ないことになるのだが、「新編 泉鏡花集」収録の『黒髪』は最新の校訂で、しかも雑誌連載時の挿絵が復刻されているのだから、全集の『竜胆と撫子』だけを読んで済ませるのはもったいない。


 感想などは全体の読了後にまとめることにして、ここでは『黒髪』として執筆された部分の概略をメモしておくにとどめる。

 メインヒロインである三葉子を主軸として語られる部分はそれほど多くない。物語が進むにつれて、彼女にまつわる人々の身に降り掛かる出来事の合間で、伝聞として消息が伝えられるといった扱いになっていく。

 そんなヒロインをあえて中心に据えて全体を場面ごとに分けると、以下のようになる。


a(一) [舞台:飯坂温泉]

 ・三葉子(みわこ):七歳

 飯坂温泉を訪れた美術学校教授の彫刻家、毛利(もうり)織夫(おりお)が孤児の三葉子を見出し、老車夫の平九郎に金を預けて支援をはじめる。

b(二)

 平九郎から話を聞いた旅館銀山閣の主人、雪松謙造が、三葉子を引き取る。

c(三) [同]

 ・三葉子:十一歳

 三葉子は雪松家で先に養女になっていた二つ年上の(かおる)の妹になる。

 薫は芝居に夢中になる。

d(四)一~四 [同]

 三葉子は仙光院の和尚、周山と近づきになり、姉の形見の鼓を預ける。

e(四)五~七 [多摩郡堀之内(現東京都杉並区)玉菜苑]

 ・三葉子:十七歳

 薫は新劇の新人女優。三葉子はお茶の水の女学生。

f(五) [同]

 玉菜苑に兇賊が侵入。薫を強姦しようとするが、薫は身代わりに三葉子を差し出す。

g(六)一~二 [同]

 長い黒髪を切ろうとした三葉子を見て感じ入った兇賊は、その場を去る。

h(六)三 [神楽坂のカフェー]

 ・三葉子:二十一歳

 美術学校の学生たちが、人気女優となった薫について議論する。

i(六)四~六 [九段の招魂祭、鶴樹の下宿(回想)]

 物語は学生の一人、内向的な鶴樹(つるぎ)一雛(いっすう)と、謎の女、黒川あやめとの関係に舵を切る。(中断)


 単行本『りんだうとなでしこ』では、回想部分である i が時系列に沿った位置に戻されて、より読みやすいかたちに再構成されている。いつもの鏡花小説とは違ってエピソードの時系列的な錯綜が避けられ、ひたすら並列して語られるのが『竜胆と撫子』全体を通した叙述の特徴になるようだ。


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