二話 母親
日光のまぶしさに目が覚める、今の時間は、九時半だった、日光で起きた訳では無かったらしい。
取りあえず顔洗いに行こうと思い一階に行くとアリーチェさんと母さんが仲良く話していた。
アリーチェさんが僕に気付いた様だ。
「おはよう」
思考が追い付かなかった。
「大丈夫か?」
カレンダーを確認したところ今日は日曜日か夏休みで曜日感覚が無くなっていた。
話を聞くと九時丁度にアリーチェさんが家に来てお母さんが家に上げ話し込んでいたらしい。
出会って二日程度の人を家に上げようとした僕が言える立場じゃないが、見ず知らずの人を家に上げるなよ。
「アリーチェちゃんはお金に困ってたりしないの?、困ってるなら家庭教師として雇うけど、どうする?」
「私はお金に困っていないので大丈夫ですよ」
「じゃあこの家の誰も使ってない部屋使う?」
「なら使わせていただきます」
「よし、じゃあその部屋片づけるから二人で勉強とかしてて」
「今日は一時間程度勉強するぞ」
驚いた、もっと勉強するつもりだったがなんでこんなにも短くしたのだろう。
「そんなに短くて良いんですか?」
「どうせ私がいなくても勉強するだろ、それに志望校と成績を聞いたが、一日三十分程度の勉強を毎日続けるだけでも行けると思うよ」
「まあ、僕が普通に勉強したら行ける高校で一番近い高校を先生に聞いて選んだので、根詰める程ではないですが、念には念をと」
「不安要素を取り除くのは良いことだな、取り合えず始めようか、まず教科はどうする?」
「一番苦手な英語で」
「英語か、じゃあ取りあえずテストを作ってきた、これを解いてみて」
「はい」
手書きで作られた問題を渡される、たまたま英語だけテストを作ったとは思えないし、全教科のテストを一晩で作って来たのか、凄いな。問題を見ると学校で受けるテストと変わらないような問題だった。
「思っていたよりも出来るね、これなら英語で会話出来るんじゃないか?」
「苦手です」
「じゃあ、残りの二十分は英語で会話するか、勿論分からない単語があれば聞いてくれ」
英語で話して思ったが見た目は二十代前半だが何百年、数十年、いやもっと数百年さらには数千年生きている人の様に感じるのは気のせいだろうか。
何だろう、アリーチェさんには何処か不思議なところが多い気がする。
「これで勉強は終わりだけど何する?」
「何する?」
「お互いの事を殆ど知らないから、雑談でもする?」
人間関係を構築するならまずは話して相手のことをある程度知るところからだろう。
「じゃあそれで、アリーチェさんの趣味ってなんですか?」
「読書が多くなるな、優輝は?」
読書か本は読むがライトノベルだけなんだよな、それもアニメを見て面白かったら続きをライトノベルで読むだけだ、僕の趣味で行くとアニメを見たりになるのかな。
「アニメ見たりゲームしたりです」
「アニメとゲームか今まで触れた事無いものだな、アニメはどういったものだ?」
「多分僕の説明を聞くより見た方が早いと思う」
「今見れるの?」
「うん、色々ありますよ、バトルや恋愛、推理、SFとか」
「じゃあ優輝のおすすめで」
何でも良いのは困るな、純粋にストーリーが面白いアニメ映画でいいか。
アリーチェさんと一緒に見ていたら中盤辺りでお母さんがリビングに戻ってきた。
「昼ごはん作るけどアリーチェちゃんは何が良い」
「私は肉じゃがとか好きです」
「わかった、待っててね」
「ありがとうございます」
映画を見終わり、感想を話し合っている頃に、テーブルに料理が並べられた。
肉じゃがと味噌汁とご飯だった。
「冷めないうちに早く食べて」
「いただきます」
ちょっと遅れて僕も言う。
「いただきます」
「アリーチェちゃんどう?美味しい?」
「はい、美味しいです、とても」
「それなら良かった」
お母さんとアリーチェさんの雑談が始まった、何かママ友みたいな感じだ。
「アリーチェちゃんには恋人とか気になっている人はいるの?」
今までは右から左に聞き流せていたが、今の会話は聞き逃すことは出来ない、聞きたくない気持ち半分聞きたい気持ち半分、どっちとも言えるし言えない心境のなか心拍数が上がっていくのを感じた。
「いないです、そもそも人と関わるのが苦手で」
「あら、美人だから彼氏位いると思ってたのだけれど」
良かった、まだ僕の青春は終わらないらしい。
殆ど話したりもせず、黙々と食べていたからかアリーチェさんよりも相当早く食べ終わった。
「ご馳走様」
「もう食べ終わったの、じゃあ私はお皿洗ってくる、優輝とアリーチェちゃんはゆっくりしてて」
「はい」
目の前の食器をお母さんが持っていく。
「良いお母さんだな」
「はい、母親一人で子供を不自由を感じさせないで育てるのは相当大変だと思う、だけどお母さんは苦しそうな顔一つもせずいつも笑顔でいてくれる、アリーチェさんのお母さんはどんな感じだったんですか」
「覚えてないな母は随分前に亡くなったから」
亡くなったか、聞かない方が良かったと後悔をする。
数分経ちアリーチェさんが食べ終わる。
食器をアリーチェさんが持っていく。
久しぶりに自分以外の料理を食べた、台所に着き食器を千尋さんに渡す。
「ご馳走様でした美味しかったです」
「お粗末様、美味しかったのなら良かった、もし舌に合わなかったらと考えていたから」
料理を振る舞って貰ったんだ何か手伝いでもしておきたい。
「手伝える事があれば言ってください」
「ありがとう、なら頼もうかな、私が優輝に構ってあげられて居なかった分優輝を構ってあげてください、私は仕事ばかりで優輝と会話だってする機会が少ないから」
話が終わり台所からリビングに戻る。
リビングにいる優輝を見たら、ソファに仰向けになっていた。
「食事後直ぐに寝ると牛になるよ」
「そんなの迷信ですよ」
「そうだな、眠いのか?」
「はい」
ならあれをやってみよう。
「一回上半身を起こしてくれ」
優輝が不思議そうに上半身を起こす、丁度枕代わりのクッションを置いていた所に座る。
「体倒して良いよ」
優輝が言われるがままに体を倒す。
状況を理解したとたんすぐさま体を起こす。
反応がちょっと可愛かった。
「ほら眠いんでしょ」
「分かりました」
割と優輝は甘えてくるのは母親に甘えれなかったからだろうか。
優輝は疲れていたのか寝不足だったのか、直ぐに寝た。
優輝を初めて見た時あの人にどこか似てると思ったが性格も似ているとはな、あの人はとっくの昔に死んでるのに未だに考えてしまう。
優輝は相当リラックスしている様に見える、可愛い。
今後優輝とはどういう関係になっていくんだろう、どんな関係になろうともそのうち伝えるべきだろうな、伝えて優輝の前から離れるべきだろう、それも出来るだけ早く、優輝に心的ダメージを与える前に。
暇だしちょっと目をつぶるか昨日はあの問題を作っていたから寝る時間がそんなに無かった。
アリーチェさんに膝枕してもらったが直ぐに寝てしまった、アリーチェさんを見ると寝ていた。
どうするか、お返しするか。
体を起こし自分の膝にゆっくりとアリーチェさんの頭を乗せる。
さっき頭を膝に乗せるときに気付いたが髪の毛が相当サラサラだった、髪が長いから手入れは相当大変だろう。
何をしようか、アリーチェさんの顔を眺めてるだけでも良いが、スマホでアニメでも見よう三話中盤辺りでアリーチェさんが起きた。
「ごめん、寝てたか」
「大丈夫」
アニメをながしていたが状況が状況なので全く集中出来なかった。
今の時間は三時過ぎ何をするか。
「そう言えばさっきアニメとゲームを良くやっているみたいなこと言っていたがこの家にゲームがあるってことだよな、何があるんだ?」
「テレビゲームだけじゃなく、ボードゲームも色々あるよ」
「テレビゲームをやってみたい」
「じゃあやろう」
アリーチェさんはゲームが上手かった、操作方法さえ教えれば直ぐに僕を倒せる様になった、特に戦略ゲームなどの考えるゲームが上手だった、やっぱり頭が良いのだろう。
「一通り持ってるゲームはやったよ」
「家でやれる事は無くなったし、どこか出かけ、いやもう外も暗いな」
「今日はここまでにするか」
「あら、もう帰っちゃうの?、今からご飯作る所だったけど、どうする?」
「辞めときます、外も暗いので、早めに帰りたいので」
「それもそうね、夜道は危険だし」
「今日はありがとうございました」
「明日は私仕事だから、家に居ないけど、いつでもこの家に上がても良いからね」
「ありがとうございます、優輝明日はどうする?」
アリーチェさんの家に行ってみたいがどうするべきだろうか、素直に言ってみるか。
「アリーチェさんの家に行ってみたい」
「分かった明日迎えに来るよ」
「じゃあこれで、帰ります」
「また今度ね」
母親は料理の用意をしながら言った、僕は玄関まで着いて行く。
「じゃあね、また明日、明日は私が料理を振る舞ってやろう」
「楽しみにしてる、じゃあまた明日」
「お邪魔しました」
家に帰ったところでやることがある訳でもない、明日もどうせ遊ぶのだろう、なら何か面白いものでも買って帰ろうかな、だとしたら何が良いかな、そんな事を考えながら夜道を歩いた。
アリーチェさんが帰った、ご飯食べて寝るしかやる事はないな。
今日アリーチェさんと過ごしたが、やはり懐かしさを感じる、昔会ったことがあるのか?まあ他人の空似のようなものだろう。
「夕飯出来たよ」
「今行く」
考え事を止めてリビングに戻る。
「まだあったかい内に」
「頂きます」
「それで、いつ告白するの?」
急なことに驚き、咽てしまう。
「何で急に」
「好きなんでしょ、アリーチェちゃんのこと」
「何でそう思ったの」
「あれ、違った?、私の感が外れたか」
確かに僕はアリーチェさんの事が好きだ、少し小声になりながら言う。
「まあ、好きだけど」
「当たってたか、良かった」
十五の息子が二十代の女性に恋をしている事にはノータッチなのか。
「良いの?年結構離れてるけど」
「流石に私の年くらいになると心配するけどアリーチェちゃんはまだ若いでしょ、そもそも好きならそれで良いじゃない、年の差なんて考えるだけ無意味だよ好きな人を好きでいればいい、あとアリーチェちゃんは良い人そうだし、優輝を安心して任せられる、まあアリーチェちゃんに断られたら仕方ないけど」
心の中に確かに在った迷いが無くなった気がする。
「ありがとう」
「がんばってね、ちょっと待ってて」
お母さんが何処かに行き戻ってくる。
「これ、あげる」
渡されたのは三万円。
「後は分かるね」
プレゼントを買って渡せという事だろう。
「ありがとう」
「一応、その中に優輝のお子遣いも入ってるから」
「でもプレゼントって何が良いの?」
「困ったらネックレスでも渡しておけば?、それか今日は日傘さして来ていたし日傘とかもいいかもね」
「ありがとう明日は予定あるから明後日位に買いに行ってくる」
久しぶりにお母さんときちんと会話した気がする。
アリーチェさんの何処が好きか等の色々質問されながら食事を終えた。
「優輝、今から買いに行く?私も選ぶの手伝えば多少安心できるでしょ?」
夜に特別やる事も無いし、一人で選ぶよりは良いだろう。
「お母さんが良いなら行きたい」
「なら行こうか、準備して来て」
自室に行き財布にさっき貰った三万円を入れる。
買うものを入れるための鞄と財布を持ちリビングに戻る。
「じゃあ行こうか」
「うん」
お母さんと共に家を出る。
「プレゼントをして告白か、まるでプロポーズだね、本当にプロポーズしても私は良いけどね」
「流石にしない、というか出来ないよ」
「それもそうだね」
他愛もない会話をしながらショッピングモールに向かった。
ショッピングモールに入り真っ先に向かったのは縁が無いと思っていた、高そうなアクセサリーショップ、高そうな物ばかり置いてある。
「ネックレスなら此処だよ」
綺麗なネックレスが沢山置いてある。
「買うならどんなのが良いの?」
「あの子なら派手な奴は好みじゃなさそうだしシンプルなものでいいんじゃないかな、あとアリーチェちゃんに似合う奴とか」
シンプルで似合いそうな奴か、どれがいいかな、宝石が付いてる奴とか似合いそうだな。
優輝はネックレスを前にずっと考えている、それほど思いが強いのだろうなら応援しないとね、私がしてあげられる事は少なかったけど、こうして好きな人が出来てきちんと悩めているならちゃんと育っててくれているのかな。
時間を確認すると此処に来てからに二十分は経っていた。
「お母さん、これどう思う?」
「いいんじゃない、アリーチェちゃんにも似合いそうだし、でも最後に決めるのは優輝だよ私じゃない」
「分かった、これにするでも本当に良いの?」
「これ位しか出来ないからね、いつもは何もしてあげられてないから」
否定したいがお母さんの何処か寂しそうな表情にやるせなさい気持ちになった。
ネックレスを買い家に帰る。
その後風呂に入ったりゲームをしたりしていたら直ぐに寝る時間になったので寝た。
三話は多少遅くなると思います