18
二年生になった私である。
とはいえ、生活は全く変わっていない。
私のアーミューは魔法使いとしても魔法具師としてもどんどん活躍しているから一部では有名になっているわ。でも全然表舞台には出てこないから、探されていたりするみたい。
あとアーミューの事を知って、婚約者である私に接触して来ようとする人とか。
大体アーミューがルトラールとかを使って、対応してくれているみたいだけど。
それにしてもアーミューの有能さを知って、アーミューを味方にしたいと思っている人も多いみたいなのよね。ただアーミューはそもそも全く以て表に出なくて、アーミューの姿を知る人は少ない。
だからこそ、アーミューのことを人前に出れないぐらい不細工なんじゃないかとか噂されているのが私はちょっと嫌だったりする。だって、アーミューのことを見たことがないのにアーミューのことを好き勝手言うのよ。まぁ、私の世界で一番素敵なアーミューのことをまわりが見つめていても嫌だから、私だけが知っていていいと思うけれど。
最近、ルトラールに近づこうとしている女子生徒がいるの。その子はルトラールに冷たくされてもルトラールにまとわりついているのよね。
可愛い子だけれども、ルトラールが興味がなさそうなのでくっつくことはなさそうだわ。
でもルトラールが言うには、その子はルトラールが好きでまとわりついているのではなさそうって話だった。私にはさっぱり分からないけれど、別の思惑があるのかもしれないって。
ちなみにその子は私にも時々話しかけようとして、ルトラールとかに止められていたりする。私も何を考えているか分からない子に近づく気はないもの。
……そう思っていたら、何だかその子の友達だという訳の分からない少女も現れた。
その少女は、何故だか私がルトラールに実は惚れていて、見目もよろしくない引きこもりの兄に飽き飽きしているとかそういう何処で広まっているのか分からない噂? みたいなのを信じているのか、そういうことを言ってくる。
私は寮室でアーミューを呼んでのんびりしたり、二人でひっそりと街を巡ったりはしているけれど……、確かにアーミューと人前でいちゃいちゃしたりはあまりしていない。だからといって、実は私がアーミューを嫌っているなんて心無い噂があるのは嫌だと思った。
というか、アーミューに頼まれてルトラールが私の傍に居るからそういう噂が出回っているっぽい。一部の人たちはそれを信じているんだとか……。
理由はルトラールが周りに対して表情を変えることもないのに、私に対しては過保護だからって。
ルトラールはその話を聞いて、嫌そうな顔をしていた。
多分、そういう噂が出回ればアーミューに怒られるかもしれないと思っているのだと思う。
私のアーミューは、私のことを大切にしてくれているものね。
「ウィネッサ様、婚約者様の話全然しませんし、本当はルトラール様狙いなんでしょう?」
「いいえ」
私にそんなことを言われても……と不愉快な気持ちにはなる。
だって、私がアーミューの話をまわりにルトラールとか限られた人にしかしないのは、私のアーミューの素敵さを他の人に知られて、アーミューに夢中になったら困るからってだけなのだけど。
「ルトラール様は素敵ですものね。引き籠ってばかりのお兄さんと婚約していても、ルトラール様のように素敵な方が隣に居れば惚れてしまいますよね。私は分かっておりますわ!」
「いいえ。私はアーミューを愛しているもの」
「また、そんなことを言って! 本当はルトラール様のことを狙っているのでしょう?」
うーん、ルトラールが婚約者を作らなかった弊害が出ている気がする。
一部では私がルトラールと学園で一緒に居ることが多いのもあって、私がルトラールが婚約者を作るのを邪魔していると思われているらしい。
断じてそんなことはないのだけど……。そもそも私はルトラールがお相手を見つけるのを推奨しているわけだし。
幾ら否定しても徐々に収拾がつかなくなってきた気がする。
噂というものは結構力を持つのよね。本当は違ったとしてもあまりにも広まりすぎるとそれが真実のように思われたり。
正直面倒だなと思っている。
私たちのことをよく知っている人たちはそんな噂馬鹿らしいって思ってくれているけれど。
「ウィネッサ様、本当にルトラール様のお兄様を愛しているというのならば、実際に見せてくださいよ。ウィネッサ様が本当にその方を愛しているって示してくださいよ」
誰かがそう言った。
うん、なんかアーミューを表に引っ張り出そうとしている? そういう思惑はありそうだって思ったけれど……、私もいい加減うんざりしてきた。
だってルトラールのことは弟にしか思っていないもの。それにアーミューと会いたい気もするし。
引っ張り出そうって気持ちだったとしても呼んでも問題ないわ。だってアーミューだもの。
私はそう思って、アーミューの名を呼んだ。
「アーミュー」
たったそれだけの呼びかけで、その場の魔力が蠢いた。




