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「わぁ……」
今日はアーミューに連れられて王宮にやってきている。
王宮魔法師団の施設を案内してもらうためである。アーミューが過ごしている場所を見れると思うととても嬉しくなる。
私は自分の家の屋敷と、公爵邸以外に居ることはほぼないからこうして初めて来る場所に思わず声をあげてしまう。
アーミューと一緒にデートに出かけることはあるけれど、それ以外は基本的に限られた場所で私は過ごしているのよね。
ちなみに王宮の手前までアーミューの転移で移動した。
馬車で移動するという選択肢もあったのだけど、アーミューが「ウィネッサを僕が連れていくよ」と言ってくれたから。
身に纏っているドレスは自分で意見を出したものなの。アーミューに似合っているって言われてとても嬉しい。
それに王宮魔法師団の制服を身に纏うアーミューはとってもかっこよくて、私はそんなアーミューを見れたのも嬉しかった。
アーミューにエスコートされて、中へと入ったのだけど……、アーミューは実績を出しているのもあって顔パスで入れるみたい。それに視線も凄いわ。私にこれだけ視線を向けてきているのはどうしてかしら。
アーミューに視線が向いているのは分かるのだけど……。何だか、私のことを見て驚いている人とかも多いのだけど……。
そう思っていたら「アーミュー、それが婚約者か?」とそんな声が聞こえてきた。
水色の髪の男性……多分、アーミューが話してくれた魔法師団の知り合いの方ね。アーミューは交流関係を全部私に話してくれている。私に隠し事はしたくないっていって。私も交流のある方については全部話してあるわ。
アーミューは私と関わりある人については全部調べて、問題があるようだったら何かしら対応をしているみたい。まぁ、そもそも私とかかわりがある人なんて全員が全員、アーミューが調べて許可した人だけど。
「ウィネッサ、これはダフネ」
「これってなんだよ!! ウィネッサさん、初めまして、こいつの友達のダフネです! 『幻の妖精』さんに出会えて嬉しいですよ!」
「ウィネッサです。いつもアーミューがお世話になっています。ところで、『幻の妖精』っていうのは……?」
『幻の妖精』なんてよくわからないことを言われて問いかける。
ダフネさんはアーミューににらまれながら説明してくれた。何でもアーミューは学生の身でありながら王宮魔法師団に顔を出しているし、魔法具も作成していて、表舞台にはほとんど立ってはいないけれど一部では有名らしい。
あとアーミューはとっても綺麗で、かっこよくて……そのことも話題に上がっているんだとか。
それでアーミューは私への気持ちを外に隠したりなんかしなくて、全部婚約者である私のための行動だって堂々と言い張っているらしい。
――ウィネッサとの未来のためにそれなりの地位を確保しているだけ。
何だろう、出世したいとか有名になりたいとかそういうのではなく、私のためにそういうことを言うあたりがアーミューらしいと思う。
それでそれだけアーミューに特別視されている婚約者である私はアーミュー以上にお茶会などにも出てこなくて、表舞台にも上がらないので、幻のようだってことで『幻の妖精』なんて呼び方をされているらしい。
私の知らない間によくわからない呼び名が……。
「ウィネッサは可愛いから、妖精って呼び名がぴったりだよね」
「いやー、本当に別人かって感じ。お前、女性に話しかけられても超冷たいのに」
「ダフネさん、アーミューに話しかけた相手は何方ですか? この魔法師団の方ですか?」
ダフネさんの言葉が看過できなくて私はそう告げる。
「……ウィネッサさんが恐ろしい顔になってんだけど」
「ウィネッサ? 嫉妬してくれているのは嬉しいけれど、僕はそんな女狐には引っかからないよ? 僕にとって一番可愛いのはウィネッサだから」
「分かっているわ。でも……私のアーミューに手を出そうとしているなんて嫌で……。アーミューはとっても綺麗で、かっこいいから心配で」
「ふふ、可愛いね、ウィネッサ。僕がそういう女を気にかけないって思っていてもやっぱり嫉妬するんだ?」
「うん。アーミューが気にしなくても、私は嫌だと思うの。だってアーミューは私のものだもの」
「ウィネッサ……」
「アーミュー……」
「ちょっと、おふたりさーん、此処に俺いるんですけど! 二人の世界に入らないでくれますか? って、睨むなよ、アーミュー!!」
それにしてもアーミューに手を出そうとしている方はどんな方なのかしら?
私のアーミューなのに、アーミューを自分の物にしたいって思っている子がいるってことだよね? アーミューが外に出るのって嫌だわ。アーミューはとってもかっこいいから、アーミューに目を付ける相手がいるんだもの!
そう言う相手には牽制しないと。私のアーミューに手を出そうなんて思わないように。




