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「はぁ……」
「義姉上、兄上が学園に通いだしたからって溜息吐きすぎじゃない?」
私が溜息を吐いていると、ルトラールにそんなことを言われた。
あの日、王族たちと遭遇した後から早数年……ついにアーミューが学園に行ってしまった。
アーミューと離れ離れなのは、結構寂しい。それに私の知らないアーミューを他の子が見るなんて嫉妬しちゃうわ。私だけがかっこいいアーミューのことを見れたらいいのに……ってそんな独占欲が溢れるの。
「アーミューに会いたい」
「いや、義姉上? 兄上、結構頻繁に帰ってきているよね? わざわざ義姉上に会いたいからって自力で転移魔法身に着けたじゃん」
……そうアーミューは学園に入学するまでに、一人で転移出来るように転移魔法を身に着けていた。
そんな偉業を成し遂げた理由が学園に入学した後も私に会いたいからだなんて……、なんて素敵なのかしら。
考えただけでも嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「それでもよ。私がアーミューと同じ年だったらよかったのになぁって。アーミューと一緒に学園生活を送れたらきっと素敵だったと思うもの」
「まぁ、流石に年の差はどうしようもないからね」
「……ルトラールじゃなくて、アーミューが同じ年だったらなぁ」
「そんなこと言ってもどうしようもないよ。それにしても兄上からの手紙、毎日届いているんだって?」
「ええ。流石に転移魔法を使えても毎日帰るのは許可されなかったみたいだから」
アーミューは毎日かえってくることは流石に学園側に許可されなかったらしい。
それでも週に一度はこちらの屋敷にきている。それでいて転移魔法を応用して、手紙を私宛に毎日くれる。本当にアーミューはマメで、私のことを好きでいてくれていて私はいつも嬉しくて仕方がない。
私はアーミューに対する気持ちを募らせている。
「本当に兄上と義姉上は……なんていうか凄いよね」
「どこが? ただ思いあっているだけよ」
「その思いが強いからだよ。兄上なんて、特待生だからってほぼ人前にも出ていないみたいだし。学園に通いながらも誰とも交流しないのが兄上らしいけど……」
アーミューは学園に通っているけれど、その優秀さから特待生たちの暮らす限られたエリアにいて、ほぼ人前には出てないらしい。アーミューは魔法具を作成したり、転移魔法を完成させたりしたのもあって、王宮魔法師団から声もかけられ、もう仕事をしていたりもするから学園に居ないこともあるし。
……私の知らないアーミューが居るのが嫌だなぁって言ったら、そのあたりのことも手紙に書いてくれている。あと、今度アーミューが王宮魔法師団に私のことも連れて行ってくれるって言っていた。
私はというと、アーミューの傍に居る力は欲しいなぁと思って、調合とかそちらの勉強をしたりしている。社交界はアーミューが嫌がるし、出る気もないので他に力をつけたいから。
あとは前世の記憶を使って、ドレスとかにも力を入れたりしている。まぁ、こういうデザインどうかな? って意見を出しているだけだけど。あとアーミューの意向で、私の名前のブティックまで作られているのよね。私はちょっと意見を言っただけで、実際にそれを作っているのは職人たちなのだけど……。
学園に通うとして、私は多分特待生にはなれない。前世から勉強もそこまで得意でもなかったし、魔法の腕もそんなにないもの。
そう考えると学園に通う時は普通に一般生徒たちと同じように通うのよね。
……私、ウィネッサとして生きて来てからあんまり人と関わらずに生きてきたから学園に通う際にどうなるか少し不安ね。まぁ、アーミュー以外私はどうでもいいけれど、それでも周りの評判が悪すぎるのもなんか嫌だしなぁ。
「義姉上、黙り込んでどうしたの?」
「学園通うのが少し不安だなって、ほら、私全然人と関わってないじゃない? 正直、アーミューと家族と、ルトラールと使用人たちと以外ほぼ会話していないもの」
「……義姉上は何も心配しなくていいよ。俺も一緒だし。それにミーガレダ様もいるし。兄上が厳選して、義姉上が健やかに過ごせるように周りを固めるはずだから」
そういえば、ミーガレダ様とはあれからちょくちょく文通をしているのよね。実際にお会いすることはあんまりないけれど、文通をしている仲だものね。
それにしてもアーミューは私が学園に通いやすいように動いてくれているのかしら。
それなら学園に通うのも一安心ね。
アーミューのことを考えているとアーミューに会いたくて仕方なくなるわ。
「義姉上に何かあったら兄上が本当に何しでかすか分からないから、義姉上も変なことに巻き込まれないように気を付けてくれよ。俺の心臓に悪いから」
「もちろん、そういうことには関わらないわよ」
私はルトラールの言葉にそう答えた。
ああ、でもアーミューが私のためにって暴れたらどんな光景かしらとちょっと見てみたい気もする。




