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「すまないな。アーミュー。その魔力をおさめてくれないか?」
「王女が戯言を言わないなら」
「ははっ、安心していい。妹にはそれを実行する力などないよ。それにもう君にすっかり怯えているから、そんなことを言う気もないだろうね。君は本気で、今の生活を脅かされるのならば私のことだって簡単に殺すだろう。中々危険な思考だ」
「それを知ってどうする気で?」
「どうもしないさ。君の大切な宝に手を出さなければいいだけの話だろう? 君はその年でこの国に有益な魔法具も生み出しているし、これだけの魔法の才能がある。私はそんな君を他国にやるのは嫌なんでね」
王太子殿下とアーミューがそんな会話を交わしている。
なんだろう、王太子殿下って漫画の世界ではただのルトラールの友人枠でしか出てなかったし、もっと心優しい王太子ってイメージだったけれど……、なんかもっと王族としての冷徹さみたいなのを持ち合わせているのかもしれない。
それにしても絶対零度みたいな魔法の中で涼しい顔をしている王太子殿下は中々強そうだ。
「私たち王族は君たちに手を出さないことを約束するよ。ウィネッサのためにもお金と権力はそこそこほしいんだろう? 無理強いはしないけれど、国の為にそこそこ動いてくれると嬉しいな」
「……本当に邪魔をしないなら」
「しないよ。そもそもこんなに思いあっている男女を引き裂くなんて野暮な真似はしないよ。それにしてもこういう状況でもそんな風な様子のウィネッサは噂よりもずっと強そうだね。面白い」
「僕のウィネッサを見ないでくれますか?」
「凄い独占欲だ。君は、ウィネッサに何かあったら王国ごと壊しそうだね?」
「当然です」
「ははっ、王族の前でそんな断言をするとか本当に面白い」
私のアーミューは本当に素敵だわ。
これだけ振り切れているというか、王族相手にこういう物言いをするほどにはっきりしているアーミューを見ると、私って愛されているんだなぁと思う。
私に何かあったら国を滅ぼすかもしれないアーミュー。ううん、もしかしたら世界ごと滅ぼす可能性もあると思う。多分、アーミューはやろうと思えばそういうことも出来るから。
でもそれだけ重い気持ちが嬉しいって私は思っている。
それに私もアーミューに何かあったら、アーミューほど派手には出来ないけれど報復はすると思う。
「ウィネッサは、こーんな重い感情向けられてて怖くない?」
「怖くないです」
「アーミューは、君への重過ぎる思いが暴走すれば君も殺すかもしれないよ?」
王太子殿下は私の反応を探るかのようにそう言って笑う。
ちなみにルトラールは呆れた表情のままその会話を見守っていて、王女殿下は震えて固まったままだ。あと部屋の外に護衛騎士もいるのだけど……アーミューが何かしていて入ってこれないのか、それとも異変を気づかせないようにしているのか……飛び込んでこない。
やっぱり私のアーミューはとても優秀だ。
それにしてもアーミューが私を殺すかもしれないか。
それはなんて……、
「なんて素敵なことだろうって思いますわ! 私のすべてはアーミューのものだから、私が殺されるのならアーミューに殺されたい。アーミューに殺されるならいいと思うもの。ああ、でも私は生きているアーミューを見たいから、死にたいわけではないですけど……」
私はアーミューに生きていてほしいと思っている。
死にたいという感情を抱いているわけでもない。
けれども、アーミューへの好きだって気持ちが溢れているのか……私はアーミューに殺されることを妄想すると、なんて素敵なんだろうって思っている。
「ふふ、僕もウィネッサに殺されるならいいかなっては思っているよ。もちろん、僕はウィネッサと一緒にもっと色んなことをしたいから、そんなこと望んでないけどね? でもそうだね、年老いて、寿命で死ぬって時にはウィネッサに殺してほしいし、僕もウィネッサの命を僕の手でつまみたい」
「まぁ、それは素敵だわ! 私も私のアーミューの命が私以外に消されてしまうのは嫌だわ。それが病気とか、寿命とかでも……。だって寿命で召されてしまったら私のアーミューが神様に取られてしまいそうだもの」
「僕はウィネッサのものだけどね? でも僕も僕のウィネッサが神様に取られてしまうかもっていうのは嫌かも。だからウィネッサの命が消えかかった時は、僕が殺すね?」
「ええ。そうしてね。私もアーミューの命が消えかかった時は殺すわ」
「それで僕がウィネッサを殺した後は、僕も後を追うから」
「あら、そうなると長生きしないといけないわ! でも私も……アーミューに自分で命を散らしてほしくないって思いながら、アーミューが死んだら生きていけないって思ってしまうわ」
「ふふ、僕も長生きするよ。ウィネッサと一緒に長生きするから、おじいさんとおばあさんになったら一緒に仲良く逝こうね?」
そんなアーミューとの会話を楽しいと思っている段階で、やっぱり私も病んでるなぁって思うけれど幸せだからいいの。




