王女と推しと再会
―――私がその後ジオさまと再会したのは、その1年後の13歳の時だった。はぁはぁ、な、長かったぁ。
毎日ジオさまの図を見返して、何とかジオさまパワーを摂取してきたこの1年間。ルシウスは約束通りジオさまの図を定期的に持ってきてくれた。1年間、それと天使な弟・セシルとルカくんの図で何とか生き延びた。
そして、ルシウスに付き添われてやってきた15歳になったジオさまは背も伸びており、大人っぽさがプラスされていた。あと、執事服を着こなしている。
「ルシウス、これってどういうこと?」
「ん?教育の賜物」
全く以って良くわからないのだけど。
教育って、行儀見習い的なものだったのかな。
「今日からマリアについて、姫さまの身の回りの世話をしますので」
「え?そうなの?あ、ありがと」
ルシウスがそう告げると、マリアがこちらを見て微笑んでくれる。そしてその後ルシウスに軽蔑の視線を向けることも欠かさない。
しかしながら、ジオさまは私をじっと見つめたまま、ひと言も発しない。えっと、イケメンにじっと見つめられたらちょっと照れちゃうな。
でも、何でずっとしゃべらず、表情も変えないのかな。
―――ま、まさかとは思うけど。
「ちょっとルシウス、やっぱりジオさまに何か妙な教育をしたんじゃ!?」
「いや、さすがに他人にショタコンを強制したりはしないですよ?」
そう言うことじゃねーよっ!まぁ、ルシウスは他者の趣味には寛容である。ドMの料理長や熟女好きの侍従長ともとっても仲良しである。
私はルシウスを騎士にしたことで、城のみんなの秘められた性癖にまで詳しくなってしまった。そして私は彼らの中でもマニアックな部類と位置付けられている。―――解せぬっ!!
「と、とにかく!これからよろしくね。ジオさま!」
「―――はい、姫さま」
ジオさまは私にぺこりと頭を下げた。でも、表情は無表情のままである。でもいい声。まだ声変わり前なのだろうけど、いい声である。
「姫さま、恐れながらよろしいでしょうか」
「なぁに?マリア」
不意に、マリアが声を上げる。
「このものはこれから姫さまに仕える立場。“さま”は不要にございます」
「そ、そうだった」
しまった。ジオさま連呼しすぎて王女らしさがおろそかになっていた。もちろんダメ王女にはなりたくないので、勉強も人一倍頑張ってるけども。
「あの、“ジオ”と呼んでいい?」
私がジオを見つめて問えば。ジオはコクリと頷いた。
「私は普段、近しい立場のものからは“姫さま”って呼ばれるわね。でも、“イェリン”と呼んでくれたらすっごく嬉しいわ!」
「姫さま」
「ま、マリア」
ちょっと推しにぐいぐい言ってみたら、すかさずマリアに注意されてしまった。ふぐぐっ。
「―――イェリン、さま」
え?今、ジオさま、いやいやジオが私を“イェリンさま”と?
名前で、呼んでくれたの?
元々は私に刃を突き立ててきたジオ。けれど何故かルシウスの謎の矯正プログラムを受けて、執事の格好をしてここにいる。
そして全くしゃべらず無表情だったから、もしかして私、嫌われてる?とかついつい不安になってしまったのだが。
しかし、再会しての第一声が、まさかのまさかの。
私の名前えええぇぇぇ―――――っっ!!!
「あぁ、推しが、尊、―――い」
私はふらりと崩れ落ち、マリアの悲鳴と共にマリアの腕に身を委ねた。
あぁ、ジオが、私と一緒にいてくれる。何て素晴らしい日々。
ベッドに寝かせられ、うっすらと瞼を開けばすぐ傍にジオの顔があった。
「じ、お、さま」
あ、また“さま”付けちゃった。長年の、いや前世からの癖はなかなか抜けないかも。
あはは、またマリアに怒られちゃうな。
「イェリンさま」
また、ジオが私の名前を呼んでくれてる?
それとも、夢かなぁ。バッドエンドだらけの私に女神さまが与えてくれた幸せな、夢。
「イェリンさま。俺は、あなたが―――」
ジオ?後半がよく聞こえないけど。
けれどジオが私の手を両手で包んでくれた気がして、とても温かい気持ちになった。




