運命の出会い
―――日々推しに会うため、推しの肖像画と我が天使な弟セシルの肖像画を拝みつつ過ごしていた私に転機が訪れたのは突然のことだった。
その日は王家主催のお茶会に、弟セシル、そしてその幼馴染みであるルカーシュことルカと一緒に私は参加していた。
ルカは実は第2シーズンの攻略対象でもある。将来セシルの側近となるルカもまたかわいらしい美少年である。ラベンダー色の髪は左右のひと房ずつが長く、瞳はアメジスト。肌はもっちもちすべすべめちゃかわいい。セシルと並ぶとマジ双子天使!
「あぁ、セシルとルカのツーショットが尊い」
「もう、仕事とかどうでもいい。ずっと崇めていたい」
そう言って、私の騎士・ルシウスは二人を眺めながら祈りのポーズをとっていた。本当に、コイツを騎士にして良かったのだろうか。やっぱり不安になってきた。
全くコイツは。不意にお菓子に目を取られとてとてと近寄って行けば、王女な私はあっちゅーまにご令嬢たちに囲まれてしまった。どうやら、あんな変態顔でも7歳年上である青年であるルシウスが一緒にいたことで、みんな近寄りがたかったらしい。そう言えば、セシルとルカもそうだけど。護衛騎士は少し離れたところにいるわね。もちろん、私の護衛は専属がルシウスなだけで、ルシウス以外の騎士たちは離れたところに控えている。
ルシウスが近くにいるのは、専属騎士だから?お兄さまはどうだったっけ。いや、見たらムカつくから注視してなかったなぁ。それでも、ルシウスと私はなんだかんだ言って気が合うのかもしれない。
令嬢たちの10人くらいで一斉に質問してくる新手のお茶会の洗礼に耳が痛くなってきた頃、私は不意にあり得ないひとを見た気がした。
あれは、まさか!
ダークブラウンの髪の私よりも少し年上の男の子。
「ちょっとお花を摘みにぃっ!」
そう叫んで華麗に令嬢たちの輪から逃走した私は駆けた。その後ろ姿に!
「待って!」
せっかく見つけたのに行ってしまう!
必死に駆けた。
「待って、ジオさま!」
そう、叫んだ。
しかし不意にジオさまの後ろ姿が消えてしまう。
そう言えばここ、どこ?多分お城の庭園のひとつなのだろうけど、いかんせん城も広いので、全てを把握できるはずもない。
お茶会の会場からは随分と離れてしまったみたいだし。
あっ!
もしかして私、ひとり?
「る、ルシウス?つ、着いて来てる?」
のかな?
でも、いつもの距離にルシウスがいなくて、急に心細くなってしまう。
どうしよう。ここは、どこ?
きょろきょろとあたりを見回し、振り返ろうとしたその時だった。
首筋に何かひんやりとしたものが当てられた。
―――え?まさか、刃物?
「あ、あのっ」
「声を出すな」
「ひっ」
男の子の声だった。何で?私なんでこんな目に遭ってるの!?いや、王女なのだから危険な目にも遭うでしょうよ。そのための護衛だもの!しかしそんな護衛も近くにはいないようだ。
―――これってピンチじゃねっ!?ゲーム始まる前に、推しに出会う前にゲームオーバーだなんてあんまりだぁっ!!
「何故、俺の名を知っている」
へ?
あなたの、名前?
そう言えばさっき、私は名前を呼んだのだ。
「じ、ジオさま?」
「答えろ。何故俺の名を知っている」
「えと、そ、それは」
どうしよう。恐い。すぐ後ろにいるのは、大好きなジオさまのはずなのに、どうして?
―――私が、ラスボス王女で悪役だから?
―――私が、ジオさまに殺される運命だから?
―――やっぱり運命からは逃れられないの?
「うわ゛っ!」
その時、ジオさまの声と共に、カランと金属が地面に落ちる音がした。
「ご無事ですか、姫さま」
その声に、私は思わず振り返った。
「ルシウス!」
いつの間に!ついて来てたの!?
―――しかし。
「ちょ、ちょっとルシウス!何やってるのジオさまに!」
ルシウスはジオさまの腕を捻り上げ、そして地面に押し付け抑えつけていたのだ。
あぁでも、その顔立ちも、14歳だからか少しあどけない赤い瞳もっ!
「じ、ジオさまっ!!」
私は、思わずジオさまの前で祈りのポーズを取った。
「姫さま状況わかってます?」
「ぐはっ」
ルシウスの言葉で我に返った。
「その、何か事情があるかもだし」
「王族である姫さまにナイフを突きつけた以上、子どもだとは言え許されることではありません」
そ、それは正論だけど。
「でも、ジオさまだもん!」
「はぁ?」
「ジオさまは、私の全てなの!ジオさまがいない世界なんて、私には耐えられない!だから、だからっ!」
「―――わかりました。じゃぁ、取り敢えずこの下手人のことは」
「ジオさまよ!」
「え~と、ジオさまのことは俺にお任せください」
「何するつもりよ」
「姫さまが崇めても問題ないように躾けます」
「躾けるって、酷いことするつもりじゃないでしょうね」
「俺は騎士ですよ。騎士道精神に反することは致しません。その代わり、このジオさま(笑)は罪に問われぬようこちらで取り計らいます」
「わ、わかった。頼んだわ」
でも、何でジオさまの名前に(笑)つけてんのよ。
ジオさま(尊)でしょうがっ!!
当のジオさまはと言うと、何故か私をひどく驚いたような表情で見上げていた。




