推しに会いたい王女の欲望
「姫さま、何を描いているんですか?」
「何って、ジオさまの顔よ」
「あぁ、姫さまが崇め奉っているって言う、例の彼?」
「そうよ、ほら見なさい!カッコいいジオさまの姿を!」
私は色鉛筆で色付きで仕上げたジオさまの肖像画を護衛騎士のルシウスに披露した。
「―――宇宙人?」
「いや、宇宙人なわけないでしょうが!どうやったらそう見えるのよ!アンタに審美眼はないの?ルシウス」
「では、麗しの第2王子殿下を描いてしんぜましょう」
「え、セシルを?」
私の天使の如き弟を?
そしてさらさらとセシルを描いていくルシウス。
「はい、どうぞ」
「こっ、これはぁっ!」
金色のさらさらヘアー、お父さま譲りのオーシャンブルーの瞳は、お父さまの切れ長な瞳とは打って変わって丸くぱっちりしている。肌は抜けるように白く、そして愛らしい顔立ち。みずみずしく麗しい桃色の唇ぅっ!!
色鉛筆で完璧に仕上げやがった!我が麗しの天使・セシルの肖像画をおおおぉぉぉっっ!!!
「これは額縁に入れて、丁重に飾っておいて」
「え、えぇ、はい」
そう言って私からセシルの神絵を受け取った茶髪にダークブラウンの瞳を持つ侍女のマリアは、怪訝な目をショタコンに向けつつも、私のためだと応じてくれた。
「さぁ、ルシウス。私にジオさまのモンタージュを描いて頂戴」
「えぇ~?因みに、年齢はどのくらいですか?」
「えぇっと、私よりも2歳年上だから、今は14歳かな」
「14歳、ですか」
何故かう~むと顎に指を添えて悩むルシウス。
「どうしたの?」
「ショタっ子度は、どれくらいありますか」
「―――そこかよ」
「そこは重要ですよ、姫さま」
「まさかあなた、ショタっ子以外は描けないとか言わないわよね」
「逆にショタっ子以外どうやって描けばいいんですか?」
真顔で言いやがったぞこのショタコン。
「そ、それじゃぁ、私渾身のイメージで、ショタっ子時代のジオさまを、想像するわ」
これでもファンだもの。推しの子ども時代くらいは、想像して見せる!
「それじゃぁ、特徴をお願いしますね」
「えぇ、もちろんよ」
こうして、不本意ながらも私はルシウスにジオさまの肖像画(ショタっ子バージョン)を描かせることにしたのだ。
「えぇと、顔の輪郭は、子どもの頃はきっとセシルと同じような感じよ。髪の色はダークブラウンね。えっと、ちょっとくせっ毛かな。髪の長さはセシルと同じくらいね」
「なるほど~」
ほぼセシル基準なのもどうかとは思うけども。身近なショタっ子がセシルなので仕方がない。
「瞳はダークブラウンで、吊り目がち。成長すると切れ長になるはずだから、お父さまの子どもの頃みたいな感じ」
「陛下の子どもの頃の肖像画ですか?団長と一緒に見たことがありますが、めちゃくちゃ目つきわるかったですね」
うおおぉぉいっ、それマジですかお父さま!
「えっと、多分ジオさまはかわいいはず!」
「ふぅん」
「それで、口元はふんわりと笑んでいて、あぁ、でも幼い頃から暗殺家業に関わっていたし、笑ってはいないかもしれないわね」
「へぇ、じゃぁそんな感じの口元で。その暗殺者ってのマジなんですか?姫さま」
「マジよ。多分暗殺者よ。そうだ!暗殺ギルドって本当にあるのかしら!私、暗殺ギルドに行ってみたい!それでね、ジオがいるかどうか確認してみるの!いいと思わない?」
「興味本位で近づくような輩は、暗殺ギルドに二度と近づくなとの脅迫を込めて身をよじるほどの恐怖を与えられますよ?」
「え、何それ恐いんだけど。でも、ルシウスも付いてくるでしょ?なら安心じゃない?」
「俺は姫さまの勉強のために一歩下がったところで見守っておきます」
「のおおおぉぉぉっっ!裏切り者おおおおぉぉぉっっ!!!」
「あ、描けました。どうぞ」
「おぉっ!これが、ジオさま(※ショタっ子バージョン)!ショタっ子バージョンながら、いい出来だわ!これも飾りましょう」
「その代わり、暗殺ギルドに行くのはナシで」
「うぐぐぐぐっ」
しょ、しょうがない。だって、推しのためだもの!多分この世で唯一の推しの肖像画(※ショタっ子バージョン)!
「推しのレアグッズのためならば、我慢するわ」
「いい子ですね、姫さま」
そして、マリアが再びルシウスに怪訝な眼差しを向けつつも、ジオさま画も飾ってくれた。




