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【完結】王女と変態騎士と暗殺者  作者: 瓊紗(旧夕凪.com)
推しとの出会い編

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2/21

転生した王女


私は幼い頃から不思議なことを言う子どもだったらしい。お父さまもお母さまも優しいひとだったから、そんな空想のような話を聞いて想像力が豊かな子どもだと褒めてくれた。


けれど一方で1歳年上の兄はマジでムカついた。私の不思議な話をいつもバカにしてきたし、そこまでして両親や周囲の気を引きたいのかとめちゃくちゃに言ってきた。


もう、マジでムカつく。何コイツ。私は兄に“バカ王子”“断罪、断罪”“尻軽”と叫びまくり、さすがにこれに関しては両親に叱られてしまった。


物心がつき始めた頃、私は不意に自分の置かれた状況を理解したのだ。私はソアレス王国第1王女・イェリンとして産まれた。そしてこのイェリン・ソアレスと言う人物、そしてこの髪と瞳の色、間違いない。あとムカつくバカ王子お兄さまことリアム・ソアレス。


これは転生物でよくある乙女ゲームによく似た世界に転生してしまったと言う状況であった。その乙女ゲームは第1シーズンと第2シーズンがある。タイトルは確か『聖なる乙女と綴る恋物語』。私はそのゲームに出てくる隠しキャラ・ジオさまが大好きだったのだ。


そして同時に、その他の前世で地球と言う星の日本で育った記憶からして、このパターンにはざまぁが待ち受けているのではないかと思われる。なんせお兄さまには既に婚約者がいるのだ。公爵令嬢だ。―――にもかかわらず、王立学園に通ってヒロインちゃんと出会っていちゃこらさっさするのである。完全に浮気である。よくある断罪モノの恋愛小説の定説から言えば、婚約者の公爵令嬢を断罪して勝手に王命の婚約を破棄し、お父さまにブチギレられて王位継承権剥奪の上、城から追い出されると言うパターン。


だからこそ、物心つく前の私は現実と前世の記憶の区別がおぼつかなかったので、お兄さまに対して“バカ王子”“断罪”“尻軽”などと告げていたのだろう。まぁ、お兄さまが私に意地悪を言わなければ私だってこんなことは言わなかった。ほんっとムカつくわぁ、我がお兄さまだけに。


そしてここからが重要だ。薄々気が付いているとは思うがお兄さまはこの国の第1王子。王太子である。つまりはゲームのメイン攻略キャラである。

私はもちろんヒロインちゃんではない。


私はゲームにおける、―――ラスボスである。


第1シーズンにおける私は、攻略対象のひとりである近衛騎士団長の息子・レオス・スォードの婚約者で、ヒロインちゃんがレオスを攻略するとざまぁされて婚約破棄の末、捨てられる。

レオスルートではゲームの中ではレオスが大好きなので、レオスに近づくヒロインちゃんに嫉妬して嫌がらせをしてお兄さまにブチギレられて他国のえらく年上の王さまに嫁がされる。

その他のルートではヒロインちゃんに対抗意識を回し、嫌われ者になり王位継承権剥奪の上に修道院送りになる。

更に隠しキャラルートだと、―――殺される。


更に第2シーズンでも私は活躍する。何と世界を混沌の渦に巻き込もうと闇の巫女として復活して第2シーズンのヒロインちゃんたちと愉快な攻略対象たちによって倒され、最後に第1シーズンで第1シーズンのヒロインちゃんの子飼いになっているジオさまに殺されるのだ。


なにこれ!私が何したよ!レオスと婚約させられ浮気されて捨てられたり、レオスにブチギレられたり、殺されたり!?しかも第1シーズンでも第2シーズンでも私を隠すはずのキャラは私の推し―――っ!


せっかく転生したのだ。シナリオ通りに行かせるものかあああぁぁぁっっ!第1の試練であるレオスは完膚なきまでに拒否ったし、ゲームでは敬愛していたお兄さまに対しては私は既に負の感情しか抱いていない。


今更お兄さま大好きっ♡ヒロインちゃん憎し!となることはあり得ない。つまり、ここら辺はとっくにフラグを叩き折っているのだ。


しかし、私はどうしてもジオさまにだけは会いたかった。他のヒロインちゃんとか攻略対象なんてどうだっていい。


「あぁっ!ジオさまぁ~~~っ!!」

「クッ、ウケる。またやってんですか?姫さま」

さすがに女神信仰が一般的なこの国で、ジオさまを神棚や祭壇に祀ることはできなかったため、私はジオさまを憧れの対象として祀っている。

心の底では崇め奉っているものの、女神さまに敵対するつもりはないのだ。あくまでも。


そして私のそのジオさま崇拝を鼻で笑ったのが、私がこの間選んだ護衛騎士のルシウスである。


「何よ、いいじゃない。それとも信じないの?私のジオさまを!」

「いえいえ、姫さまが信じるなら信じますよ~。ぶぷっ」

マジで笑ってやがる護衛騎士のくせに。


「でも、レオスよりはましね」

「姫さまって何で団長の息子のことそんなに嫌ってんですかね?」

「え、だって当然よ!あんな尻軽浮気性の悪魔なんて滅びればいいのよ!」


「じゃぁ、第1王子殿下はどうです?」

「あんな尻軽浮気性の悪魔なんて滅びればいいのよ!」


「でも、第2王子殿下は」

「セシルのこと?」

私には弟がいる。第2王子である。彼は第2シ-ズンの攻略対象でもあるのだが、お兄さまとは天と地の違いがある。


「セシルは尊い!あんな天使な美少年、他にいないわ!」

「やはり姫さまとは、気が合いますね!」

そう言って跪いたルシウスは、私の手を両手でぎゅっと握った。


「―――いや、下心満載の顔して何を言うよ」

そしてこのルシウスと言う男は、ショタっ子好きなショタコンであった。完全に頬がにやけてやがる。私もジオさまを崇める時はにやけてしまうけど。因みにこの男はゲームの世界には何ら関係ない。


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