呪いの傀儡 3
服従魔法を食らって、未だ腰を抜かしているミクリ。
四つん這いでアキの方へ寄っていきます。
「だ、大丈夫ですか……?」
「ええ、なんとかね」
アキは荒くなった呼吸を整えるように深く息を吸います。
しかし安心したのも束の間――。
ブシャッッッ!!
「――ッ!?」
アキの右足脹脛から勢いよく血液が噴き出したのです。
激痛が走り、脚の感覚を失ったアキは崩れ落ちるように転倒します。
「奥様!?」
「や、やられた……」
さらに――。
ブシュッッッ!!
「がはぁ!!」
今度は右肩から激しい出血。
気を失うアキ。
「奥様! 奥様!!」
ミクリが揺さぶっても返事がありません。
既に回復魔法を何度もかけているのですが、すぐに傷口が開いてしまって回復が間に合わないのです。
さらにわき腹からも出血。
「一体何が起こっているの!? く……!!」
ズドドドドドドドドド!!
やむを得ないと感じたミクリ。
アキに対して有りっ丈の蘇生弾を浴びせます――。
「ふう……」
なんとか出血が治まり一先ず安堵すると、今度はアキの身体を調べます。
彼女は何らかの攻撃を受けていると考えて間違いないでしょう。
今は幸いにも細胞再生が働き続け、謎のダメージと拮抗していることで……命を繫ぎ止めている状態です。
しかし細胞再生にも時間の限りがあります。
悠長に構えている暇は無いのです。
「な!? これは……!?」
それはアキの首筋。
そこには――。
◇ ◇ ◇
廃工場敷地内のどこか――。
「ぎゃああああ! 助けてくれー! 死にたくねーよー!」
先程の男。
作業着に身を包んだその男が床をのたうち回ります。
「るせーなぁ。いつまで騒いでんだよぉハラダぁ」
積み重ねた漫画雑誌に座り、持っている最新号のページに目をやるスキンヘッドの男。
名はカナモリ。
気だるそうな口調で舎弟のハラダに説教をします。
「あ、兄貴! いつの間に!」
「ったくよぉ、手間ぁとらせんじゃあねーよぉ。たかが女ぁ二匹によぉ」
ハラダの身体にまとわりついていた黒い霧はいつの間にか消えています。
「すまねえ。でもオイラやることはやったんだぜ?」
ハラダの体内を巡るウィザードの効力が作用して、彼はすっかり回復しきっていました。
足元に転がっているのは一体のフランス人形。
右肩と右足の脹脛、それから脇腹に釘が打ち付けられています。
その名は共有傀儡。
呪術に用いるマジックアイテムの一つで……。
対象者の毛髪を結びつけることで魔法が発動します。
そして今まさに対象者となったアキはこのフランス人形と痛覚を共有しているのです。




