呪いの傀儡 2
アキが放った服従の魔法を受けて、男は身動きが取れないようです。
額と両掌、それから腹をピタリと床に張り付けて。
まるでゴキブ●ホイホイに引っかかった虫のような状態です。
二人は男に近寄ると。
アキが冷たい声で質問します。
「己の立場は理解しているな?」
「…………」
沈黙する男。
「一度だけ聞く。貴様の目的は何だ?」
その隣でミクリが銃口を男へ向けます。
「…………」
沈黙を貫く男。
「そうか。ミクリ、安いので構わない」
「了解」
ズドン! ドシュッ!!
容赦なく発砲し、銃弾が男の右足脹脛にぶち込まれます。
「ぎゃあああああ!」
悲鳴を上げる男。
勢いよく血液が噴き出します。
身体は動かず悲鳴を上げる事しかできません。
因みにアキが言う安いのとは通常の鉛弾のことです。
「ぎゃあああ! 助けてくれー! 死にたくねーよー! ぎゃああ――!!」
未だ悲鳴を上げ喚き続ける男。
アキは蔑むような眼差しで男を見下ろすと。
「耳障りな音。無意味な感想に興味は無いのだけれど……。ミクリ、次」
「了解」
ズドン!
今度は男の右肩に向かって放たれる銃弾。
しかし次の瞬間――。
パンッッッ!!
「「!?」」
驚く二人。
なんとミクリの放った銃弾が、男の身体へ到達する前に切断されたのです。
それは男の身体を避けるように二手に分かれて、床に二つの穴を空けました。
さらにアキは背後に何かの気配を感じて振り向きます。
「――ッ!?」
驚愕するアキ。
すぐそこに迫っているのです。
凄まじい速さの日本刀が――。
横薙ぎの鋭い一線がミクリの首へ目掛けて迫ってきているのです――。
アキは咄嗟に唱えます。
「ミクリー! おすわり!!」
「ぷぎゃあ!」
服従魔法を食らって強制的に伏せの態勢になるミクリ。
アキは既に懐から取り出していた鉄扇を自身の胸にかざす。
ガキーン!
間一髪で刃を受け止めました。
日本刀は黒い霧状のモヤモヤに操られていて、すぐさま次の斬撃を仕掛けてきます。
アキは辛うじてそれを受け流すと、続けざまに畳みかけてくる猛襲を次々と受け流していきます。
やや押され気味のアキ。
受け流すのに必死で魔法を放つ余裕がありません。
「ミクリ!!」
辛うじて叫ぶと。
「え? あ! オブジェクト変更!」
状況を悟ったミクリが魔法を放つ。
鍔の上下が分離して刃だけが明後日の方向へ飛んでいきます。
得物を無くした黒い霧。
動作が止まった隙をついてアキは鉄扇を叩き込む。
ブオン!!
しかし手応えがありません。
空を切った鉄扇。
謎の黒い霧には実態が無いようです。
霧はすぐさま作業着の男の方へ飛んでいくと、男を包み込んで姿を消しました。
同時に男の姿も消えました。




