メイド長への手紙 8
突然の乱入者に驚く少女(今の中身はサクマ)。
でもすぐに冷静さを取り戻します。
「おや? ねずみが紛れ込んでいたようですね? 一体どうやってここに入ったのですか?」
今彼女たちがいるこの場はサクマが作った幻であり……。
さらに部外者が入れないよう結界の役割を果たしていました。
ミクリは少女を睨みつけると。
「結界は解除した」
ズドンッ!
間髪入れずに発砲します。
「なっ!? スケール変更!」
少女の身体が少し縮んで銃弾を避けました。
銃弾の速さに対応したという事は、彼女がウィザードを使用している証拠です。
「ちっ、焦らせてくれますね……。いきなり撃ってくるとは!?」
少女は冷や汗を手の甲で拭います。
ミクリは手元に出現させた発煙弾を投げました。
「貴様は即刻始末する!」
充満する煙幕。
「ちっ、舐めた真似をしてくれる! ウィンド!」
風の魔法で煙が晴れると……。
!?
いつの間にか少女の周囲……四方八方に数多のミクリが存在し――。
一斉に拳銃を向けました。
それを動じることなく見渡す少女。
呪文を放ちます。
「ウエイト変更」
「何!?」
ミクリの拳銃の重さが増します。
そのあまりの重さに引っ張られるように肩ごと身体を下に持っていかれるミクリ。
一人だけが違う動きを見せました。
「本物はそこだ! ツイスト!!」
――ッ!!
ミクリは身を翻すと同時に呪文を唱える。
「オブジェクト変更!」
ズドドドドドドドドド!!
分解された拳銃の部品がミクリの手元を離れて落下。
同時に青白いビームが首のすぐ傍を走っていきます。
部品は全て床にめり込んでいました。
その間、ミクリの分身達は何事も無かったかのように少女へ向かって発砲します。
しかし……。
所詮は幻影。
銃弾は全て少女の身体をすり抜けていきました。
「この私に幻を使うとは……。ふ、ふふふ、ふはははは、貴方、最高ですね。傑作だ!」
本来、サクマは幻影魔法を得意としています。
今は少女の身体を遠隔操作している都合上、十二分に能力を発揮することは出来ません。
それでもミクリの小細工は全てお見通しなのです。
「でやああああ!!」
既にミクリは間合いを詰めて、急所に拳を放ちます。
「ちっ! 冗談が通じない人ですね!」
少女は咄嗟に受け流し、肉弾戦に移ります――。
攻防の末、隙を突いて足払いを繰り出すミクリ。
「うわあ、やられたー」
少女は体勢を崩します。
が……。
「なんてね! スケール変更!」
「しまった!」
ミクリの身体がみるみる縮んで放った拳が相手に届きません。
「HC/エィツ#1:ラPVOp=vリqスニJムbキoヘX――」
すぐに解除呪文で元の姿に戻りますが……。
「ウエイト変更!」
今度はミクリの頭が鉛のように重たくなります。
思わず視線がやや下を向いたその瞬間。
「――ッ!?」
ミクリの頭に激痛が走ります。
「がはああああ!!」
前に転倒したミクリは顔面を床に強打!
少女が繰り出した踵落としが直撃したのです。
…………。
倒れ伏すミクリ。
屈んだ少女はミクリへ問います。
「この私に喧嘩を売ろうなんて大した度胸ですね。貴方、一体何者なんです?」
「…………」
「貴方の気力がまだ残っているのは分かっていますよ。もう一度聞きます。貴方、何者ですか?」
「…………」
未だ俯せたままのミクリは沈黙を貫きます。
少女は額の血管を浮きだたせると大きく息を吸って……。
「こっちは質問してやってんだぞ! さっさと答えやがれええええええ!!」
ミクリの髪を掴んで頭を引っ張り上げました。
その顔は静かに両目を閉じていて……。
!?
口に何かを咥えています!
それは一発の銃弾!
ミクリの両目が見開いて、口角がニヤリと吊り上がります。
「なッ! 貴方まさか!?」
「ぷっ!」
――ッ!?
発射された銃弾が音の速さで少女の額に風穴を開けました――。




