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透明人間になったお嬢様 エピローグ

 ご令嬢の失踪騒動があった次の日――。


 ミクリはメイド長から呼び出しを受けました。


「呼ばれた理由は分かっていますか?」


「逆に多すぎて何のことだか……」


「はあ……まったくよりによって何故あなたが選ばれたのかしら」


 メイド長はため息交じりで意味深長にぼやき始めます。


 てっきり開口一番で怒鳴り散らされると思っていたミクリは、両耳を塞ごうとしていた手を一旦降ろします。


「あの、話が見えないんですけど……」


「実は旦那様から辞令を預かっています」


『辞令 使用人ミクリは本日付で長女カレンの専属世話係 兼 魔法学講師に任命する。』


「!?」


「カレンお嬢様本人から強いご希望があったそうです。もっと優秀な使用人はたくさんいるって言うのに……」


「と、いうことは……これってもしかして昇――」


「違います! 断じて昇格などではありません! 良いですか、今回はたまたま良い方向に結果が転びましたけど普段からあなたは全っ然まったくこれっぽちっも使用人としての振る舞いがなっていません! そもそも――」


「あ、メイド長質問!」


「何ですか? 話はまだ終わってませんよ」


「魔法学講師も兼任ってなっていましたけど、あのスパルタ講師はもう来ないんですか?」


「来ません。彼は旦那様がクビにしました……カレンお嬢様を無能呼ばわりしたのですから当然です。近々制裁も下る事でしょう」


「うわ、怖っ!」


 そしてメイド長はふと時計を見て驚きます。


「あら、もうこんな時間! ミクリ、異動後の初仕事です。すぐにレッスン室へ向かいなさい。きっとお嬢様が待っていますよ」


「了解!」


 ミクリは凛々しく振舞うと、威勢よく部屋を飛び出していきます。


 するとメイド長はそんな部下に向かって……。


「こら! 扉くらい閉めて行け! まったく…………これはあくまで私個人の意見ですが、昨日の出来事はお嬢様にとって価値のあることだと思っています。ミクリ……良い判断でしたよ」


 そう言い終えた頃には、既に部下は立ち去った後。


「本当、あの子はしょうがないんだから」


 メイド長はため息を吐きながら開けっ放しの扉を閉めました。













 しかしすぐさま扉が勢いよく開いて、戻って来るミクリ。


「うわあああああん! メ゛イ゛ド長゛~! 大゛好゛ぎでず~!!」


 感激のあまり鼻水を垂らしながら号泣します。


 誉め言葉はしっかり部下へ伝わっていたようですね。


「ああ! もう! いいから早く行きなさい! 戻って来るな!」


 メイド長は呆れながらも部下を送り出すのでした。



 ◇ ◇ ◇



 レッスン室の中では、待ちくたびれた様子のカレンがいました。


「もう! ミクリ遅い!」


 頬を膨らませるご令嬢。


「ごめんなさい。メイド長ったら話が長くって……」


「ま、良いけど。お父様から聞いたの……ミクリは魔法が得意なんだって。だからミクリから魔法を教えてもらうことにしたの」


 なんだか嬉しそうに話すカレン。


 ミクリは思わず揶揄からかってみます。


「お嬢様、今日はなんだかご機嫌ですね。魔法学は嫌いだったはずでは?」


「嫌い。でも……ミクリのことは大好き」


 どうやら相思相愛のようです。

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