ミクリの危険な闇バイト 2
相手は若手イケイケ集団のイケーズ。
対してこちらは老眼や五十肩を抱えるおじさん集団。
それでも監督兼GMのトウコには勝算が見えているようですが……。
ミクリやおじさん達には見当もつきません。
未だにざわつく会議室内で、トウコは卓上をバンッと叩きます。
「はい、みんな静粛に!」
瞬間、今までのざわつきが嘘のようにシーンと静まり返ります。
「私達が負けるって一体どこの誰が言ったの?」
「そんな事言ったってなあ?」
「勝てる見込みが無いのも事実だろう」
「そうだそうだ」
またもやざわつきそうな気配。
トウコは再び卓上を思いっきり叩きます。
「でも勝負はやってみなくちゃ分からない! そうでしょう? それにさっきの対戦相手見た?」
「…………」
「眼鏡をかけてる奴がいたでしょう」
「それがどうしたんです?」
ミクリが尋ねます。
「つまり、彼は近眼なのよ! 確かにあなたちは老眼が始まってるかもしれない……。が、しかし! 相手だって近眼なの! 目が悪いという条件は同じなのよ!」
!?
驚愕するおじさん達。
「いや、ちょっとまって! そんなに驚くことじゃないよね。それにどちらかと言えば老眼の方が不利だと思うんだけど」
ミクリが横槍を入れるも、それを躱すようにトウコの演説は続きます。
「それから、太ってる奴がいたでしょう。そう……彼は肥満症なだけのただのデブに違いないわ!」
「そうか! 確かに俺達は老化で動きが鈍くなっている。だが、動きが鈍いのは相手も一緒なんだ!」
なぜか超ポジティブなおじさん達。
「太ってる人って一人しかいなかったじゃん。それにあの人が実は筋肉マッチョっていう可能性もあるよね?」
と、ミクリがツッコミを入れるもトウコの演説にまたもやスルーされます。
「それから、五十肩の人、手を挙げてちょうだい」
チームメンバー全員が手を挙げます。(五十肩なので水平までしか上がりません)
「まさかの10割! そして水平!」
驚くミクリ。
「はい、降ろして……。でも臆することはないわ。なぜなら……」
「なぜなら?」
「相手だって、二十肩かもしれないでしょうが!!」
!?
またしても驚愕するおじさん達。
「ねえ、二十肩って何? 聞いたこと無いんだけどそんなの!」
「うおおおお! 勝てる! 勝てるぞ!」
「相手だって俺達と条件は同じじゃねーか!」
「ああ、そうだ! よし、みんな! そうと分かれば今から練習だ! いくぞ!」
「「「おおー!!」」」
おじさん達は事務所を飛び出していきます。
その場に取り残されたミクリ、そしてトウコ。
トウコはパンっと手を合わせると。
「それじゃあミクリ、これから大人の話をしようじゃないか」
ミクリの肩に手を回します。
「大人の話? ま、まさかそれってエッチなことですか!? うら若き乙女をNTR要員にしようと――」
「違えよ馬鹿! こっち!」
トウコは親指と人差し指で輪っかを作ります。
どうやらビジネスの話をしたいようです。
「なんだー、そっちか」
胸を撫で下ろすミクリ。
「だいたいお前にハニトラなんてやれるスキルないだろ? 色気のイの字も無いんだから」
「もしかして私をバカにしてます?」
「いつも元気いっぱいで可愛いっていう意味だよ。言わせんな恥ずかしい! それに、お前にそんな事やらせたら私がサーヤから大目玉だ。お前はサーヤのお気に入りだからな」
因みにトウコはメイド長と同期組です。
「ええ!? 私がメイド長のお気に入り? それは絶対に無い。トウコさんの目は節穴なんじゃないの?」
「いやいや、お前が鈍感なんだよ。あーあ、サーヤ可哀そう。まあ、いいや……。話を戻そうか」




