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透明人間になったお嬢様 2

 そんなある日のこと――。


 廊下の電球が切れていることに気付いたミクリ。


 脚立と新しい電球を取りに納戸なんどへ向かいます。


 入室して照明を付けると、目に前には体育座りをしてうつむくご令嬢の姿がありました。


「うわ! びっくりした! ってカレンお嬢様!? なぜこんな所に……」


「しー! しー!」


 こちらを直視して、唇に人差し指を当てながら必死に懇願する五才児のご令嬢。


 ここに隠れていることを黙っていて欲しいという事でしょうか。


 じきに例のスパルタ講師が屋敷を訪問する時間だというのに困ったものです。


 ミクリは少し考えましたが……ここは黙って頷くことにしました。


 何事もなかったかのような素振そぶりで脚立と電球を手に取って照明を消します。


 そのまま部屋を後にしようとすると、今度は後ろからすそを引っ張られました。


 ミクリが再び照明を付けて振り返ると、カレンが何か言いたげな表情でこちらを見つめています。


 とりあえずミクリは五才児と目線が合う位置まで屈むと……。


「どうしたんですか?」


「……行かないで」


 何だか寂しそうに呟きます。


「そんなこと言われても、私まだお仕事が残っていますしお寿司」


「…………」


「あ、ほら、今すぐ電球を取替えに戻らないとメイド長に怒られちゃうので……ね?」


「いつも怒られてるじゃん」


 と、五才児の強烈な一言。


「サーイェッサー! カレンお嬢様、何なりとお申し付けくださいませ!」



 ◇ ◇ ◇



 そしてミクリは今しがた絶対服従を誓った相手に尋ねます。


「で、お嬢様はここで何をやっていたんですか? ……まあ、大体想像は付いてますけど」


「お父様もお母様も先生もいつも怒ってばっかり」


「あら、どこかで聞いたようなセリフ。いつも怒られてる私と同類ですね」


「一緒じゃないもん! ミクリは怒らせるようなことばっかりするからいけないんだもん!」


 そこは全力で否定する五才児。


 彼女なりに何か譲れない物があるのでしょう。


 ミクリはガックリ項垂うなだれます。


「ぐうの音も出ません」


 しばらく沈黙が続いて、カレンの方が口を開きました。


「きっとみんな出来が悪いわたしのことが嫌いなの。いなくなっても良いと思ってるんだもん」


「そんなことありませんって。私はカレンお嬢様のことが大好きなんですから」


「でも……」


「うーん……。あ、そうだ! じゃあ……本当にいなくなっちゃいましょうか」

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