メイド達の出張業務 2
一本の箒に二人仲良く跨って、必死に魔獣から逃げ続けるミクリとアズサ。
「「うわあああああ!!」」
予定外の状況の為、形振り構ってなどいられません。
「ミクリ―! 追いつかれるー! もっとスピードを出せ!」
「これ以上は無理だってー!」
ミクリも相当頑張っているようですが、次第に双方の距離は縮んでいき……。
とうとう追いつかれてしまいます。
二人の頭上で大きく左の前足を振り下ろす魔獣。
「うわあああ! もうダメだー!」
このままだと叩き落される!
その恐怖で思わず目を瞑るアズサ。
しかしミクリは寸での所で箒の推進力を右方向へ働かせ、何とか攻撃を躱します。
そしてすぐに前進します。
「ふうー、危なかったー」
ミクリは額の冷や汗を腕で拭います。
しかし魔獣の猛攻は続きます。
「ミクリ―! 次が来る! 次は反対の前足が降って来るから左に行け!」
今度は左方向へスライドして再度、躱すことに成功しました。
すると今度は魔獣の口元が煌々と光り出します。
「まずい! あれ絶対ビームだ! ビーム光線を吐こうとしてるぞミクリー!」
「分かってる!」
箒の高度を下げるミクリ。
その瞬間、二人の頭上をビーム光線が走っていき……。
BOOOOOOON!!
凄まじい爆発音と共に、遠くに見えていた山が一つ消滅しました。
「…………」
「…………」
二人の目が点になります。
それでもなお魔獣の攻撃は続きます。
「次はまた右! 左! 右! 下! 上! 下上下上右右左!」
アズサの呼びかけに応じるミクリ。
もう擦れ擦れのギリギリといった状況です。
「ミクリ―! 早く何とかしろー! 格ゲーならさっきので必殺伎の一つくらい出てくるでしょうが!」
「そんな事言われても! 私が用意してる最大攻撃力が最初のランチャーだったんだけど!」
魔獣と違ってミクリは魔法に制限が掛かっています。
今しがた魔獣が放出したビームのような高エネルギーの一撃必殺伎は使えないようになっているのです。
「じゃあ、どうすんだよー!」
「私だって今考えてるって!」
「うわ、もうダメだ! 箒の動きにキレが無くなってる! 動きが鈍くなってる!」
後ろで喚くアズサ。
「…………」
対照的に黙り込んで集中するミクリ。
「ミクリ! またあいつの口元が光ってる! ビームだ! またあのビームが来るー! ああ~、もうダメだ~!」
その時。
「あっ、良いこと思いついた」
ミクリは何かを閃いたようです。
「本当か!?」
「うん、作戦変更! あの魔獣、捕獲しちゃおっか」




