未来からの侵略者 プロローグ
少し未来の話をしましょう。
大きく変わった事は主に2つ。
一つは国内で主流となるエネルギーは原子力発電へと変わりました。
魔法を使う者はもういないのです。
そしてもう一つは……。
◇ ◇ ◇
月明かりに照らされ少女は走る。
「はあ……。はあ……」
左手に抱えるのは分厚い本。
呼吸は荒く、路地裏を無作為に走って走って走り続ける。
ただひたすらに――。
そう、何者かに追いかけれているのです。
そこへ。
「逃げたって無駄だあああ!」
ズドン!!
男の声と銃声が鳴り響く。
「――ッ!?」
少女は転倒。
「足が!?」
少女の靴の片方が石膏と化しています。
そこに被弾したのです。
ゆっくりと近づいてくる男。
右の頬には高潔を意味する華の刺青が目立ちます。
「さあ、その本を渡しな!」
しかし少女は本を庇う。
「そうかよ……。だったら力づくで奪うまでよ!」
男が拳銃を構えたその時。
「「テトラ・フォールン!!」」
男の頭上高く現れたのは4つのダンベル。
「何!?」
すぐに銃で撃ち飛ばす。
それらもやはり石膏と化しています。
間も無く視線を戻すと。
「チッ! 逃げられたか……」
残されたのは石膏と化した片方の靴のみ。
少女の姿はありませんでした。
◇ ◇ ◇
少女を先導するのは2人の人物。
どちらも見た目は17歳くらいの少女で、その見た目は瓜二つ。
「急いでレイカ!」
「もう時間がないんだよ!」
「「本はちゃんと持ってる?」」
二人の台詞が綺麗にハモりました。
レイカはふふっと笑み浮かべながら。
「うん、持ってるよ。ありがとうユイ、アイ」
「笑ってる暇があったら走る!」
「そうそう。走る走る!」
「うん。ごめんね」
目的の場所へ到着しました。
ユイとアイは何もない所を掴む。
パントマイムのように見えないシートを剥がすと……
現れたのは1台のバイク。
「これが例の?」
「「そう! タイムマシン!!」」
「パパの最高傑作!」
「ここまで持ってくるのは本当に苦労したんだよ~」
ユイとアイに促されバイクにまたがるレイカ。
「二人共、本当にありがとう」
「貴方ならきっと未来を変えられる!」
「過去の私達によろしくね」
「うん!」
レイカはフルスロットルで走り出す――。
不思議な光に包まれ彼女は何処かへと消えました。
ユイとアイは虚空へと手を振り呟きます。
「「いってらっしゃい……」」
この国はあるテロ組織に支配されました。
その名は高潔のレジスタンス。
彼らは魔法を嫌い容赦のない殺戮を繰り返す――。
そして今……。
少女は過去へと飛び立ちました。
彼らに抗うため……。
失った未来を取り戻すために……。
◇ ◇ ◇
現在。
呆れた様子を見せるサーヤ。
「最近姿を見せないと思ったらまさかこんな所にいたなんて……」
「ごめんなさい……」
レイカは分厚いアクリル越しに俯きます。
ここは留置場の面会室。
なんとレイカは殺人の容疑で送検されてしまっていたのです。




