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エデンの総帥 エピローグ

 時は少し遡ります。


 カグラザカ邸内秘密のサーバールーム。


 マザーの挙動に違和感を覚えたカゲイはその原因究明に努めていました。


 開始から既に8時間以上経過しており、旦那様は後ろでパイプ椅子に座ったまま仮眠を取っています。


 カタカタとキーボードの音が鳴り響く中……。


「ああ~~!!」


 カゲイが発した突然の叫び声。


「おわ!!」


 旦那様は驚きのあまり椅子から転げ落ちると、すぐに立ち上がります。


「どうした!?」


「一冊だけ変な魔導書(マドゥーショ)があるんだぉ!」


「どういう事だ?」


「マザお気に入りの拠点があるって話はさっきしただろ?」


「我々が仮に拠点Aと呼んでいるサーバーの事ですね」


 ハセガワが補足するように口を挟む。


「そうだぉ。ほらここ」


 PCモニターに映し出されているプログラム言語の羅列。


 その中の一部に指を差すカゲイ。


「「…………」」


「もぉ仕方ないな~。つまり、Aでしか閲覧できないようプログラムが書き換えられているんだぉ」


「だったら始めからそう言えよ!」


 苛立ちを見せる旦那様。


 一方でハセガワは冷静に新たな疑問を口にします。


「だとしたら何故マザーは拠点Aを頻繁に訪れるのでしょうか?」


「馬鹿だな~。そんなの決まってるだろ常考(じょうこう)


「…………」


(こら)えろハセガワ。今は多様性の時代だ」


 二人の神経を逆なでしている事に気付かないままカゲイは話を続けます。


「マザはインモチが起動した魔法を把握しなきゃならない訳なのだよ。仮に誰かがこの(・・)魔法を使った時、マザが他鯖(たさば)にいたら把握できないだろ?」


「そうか! だから魔法を把握する為に戻るんですね? 唯一(ゆいいつ)マザーが閲覧を許される拠点Aに!」


「なるほど、理屈は分かった。因みにその小細工されたっていう魔導書は一体どれだ?」


「ああ~これだぉ」


 PCモニターに指を差す。


 その魔導書のタイトルは……



 "形状変更の魔法"



 そう、ミクリが最も多用している魔法です。



 先日、政府が管理しているいくつかの図書館が次々とテロ行為で放火された事がありました。


 その中にはマザー閲覧用の魔導書が収められた書庫もあったのですが……


 先手を取った旦那様は事前に書庫の中身をダミーとすり替え、本物をカグラザカ邸へ避難させました。


 その事を知っていたミクリはある目的(・・・・)の為に形状変更の魔法に細工をしていたのです。


 拠点Aのサーバーのみ「形状変更の魔法」を閲覧可能にすると……。



 おおまかにこれがアリアもしくはミクリの仕業だと察した旦那様はつい苛立ちを口にします。


「どうしてうちの使用人はこう回りくどい奴ばかりなんだ。アリアの奴め早く禁書制限を解除して欲しいんだったらちゃんと説明しろよ。説教してやる」


 携帯端末で通話を試みますが……。


「くそ、応答しねえじゃねえか」


「で? どうするんだぉ? もうマザは捕らえたも同然(ドゥーゼン)。5秒くらいなら誰にも気づかれずにやれると思うけど……ミク氏の禁書制限、解除するん?」


「できるのか?」


「もちろんなのだぜ!」


 親指を立てるカゲイ。


 すると旦那様は少し考えて。



「アリア!」



 天井に向かって叫びます。



「聞こえてんだろ?」



「だ、旦那様!? 一体何を!?」


「考えてみればあいつと話すのに携帯端末なんか不要だった。おい、アリア聞こえるか?」


 …………。


「応答は無いがお前の事だ、きっと俺の声を盗聴しているのだろう?」


 …………。


「マザーを捕らえた。今からお前の禁書制限を5秒間だけ解除する」


 …………。


「よし! やれ、カゲイ」


「オーキードーキー!」


 カゲイは拠点Aのサーバーをハッキングし、トラップを仕掛けました。



 すると――。


 拠点Aにやってきたマザーはトラップに反応し、サーバーAを破壊。


 カゲイに誘導されるようにダミーサーバーへ入り込む。


 マザーを5秒間だけシャットダウン。


 この瞬間、アリアの禁書制限が解除されたのです。



 ◇ ◇ ◇



 アリアの胸元に存在する刻印が消えました。



「こ、これは――!?」



 力が漲ってくる。


 ほとんど消滅してたアリアの身体が元に戻っていく……。



 ――――ッ!!



 それは一瞬の出来事。


「ば、馬鹿な!?」


 そう叫んだサクマの身体が八つ裂きになっている。


 首が地に落ちている。


 アリアは光の速さでサクマの首を刎ねたのです。


 さらに。


 11111111111111111111111111111――――。


 という痣が細切れにされた肉片を埋め尽くしている。


「存在否定」



 ――――。



 サクマはこの世からいなくなったのです。



 …………。



 既にカレンの暴走も止まっています。


 催眠魔法を施され、すやすやと眠ってしまいました。




 アリアはゆっくり深呼吸をする。




「さすが坊ちゃん、タイミングバッチリですね」



 アリアの胸元に再び刻印が現れる。



「後は任せますよミクリ」



 アリアは意識を失いその場に倒れ込むのでした。

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