エデンの総帥 2
ミクリはすぐに次を発砲!
しかしサクマは身を翻して銃弾を避けると。
「舐めるなよ! 視覚――」
"代わりなさいミクリ!"
俯瞰していたアリアが表に出る。
魔法で作った水をサクマの肺へ流し込む。
「ガハッ! ガハッ! ゴホオオオ――!!」
窒息し咳込むサクマ。
その頭部にアリアの鋭い回し蹴りが直撃……
「――ッ!?」
手応えが無い……。
サクマの姿が消えているのです。
すぐに辺りを見渡す。
すぐに姿を捉えますがいつの間にか距離を取っています。
「クゥーーーー!! これは……なかなか堪えますねえ!!」
サクマの胸部から大量の血液が噴き出しています。
そして片手には血まみれのナイフ。
なんとサクマは肺に流し込まれた水を排除する為、自らの胸にナイフを突き刺していたのです。
やがて出血は自然に止まる。
損傷していた肺がみるみる再生していきます。
「ウィザードの再生能力ですか……」
思わず呟くアリア。
「ええ。この薬は最高ですよ。少々、妄想の時間が増えてしまうのが玉に瑕ですが……そう、こんな風にね!」
――――。
いつの間にかアリアの身体中に無数の蛇が巻き付いている。
しかし見た目に反して締め付けられている感覚は無い。
そう……これはサクマの妄想が作り出した幻覚魔法。
平常心さえ――
「保っていればなんて事はない……。貴方はそう思っている」
サクマの声。
さらに。
「うぐッ!!」
カレンのうめき声。
蛇がカレンの首を強く締め付けています。
「何!?」
動揺した途端にアリアの身体も締め付けられる。
喉に食い込んでいく。
すぐに水魔法を相手の肺へ――。
「虚言癖」
サクマは呪文を唱える……が。
「ガハッ! ガハッ! ゴホオオオ――!!」
やはり窒息し咳込む。
しかし。
「……なんてね」
!?
別の方向からサクマの声。
それだけではない。
いつの間にか無数のサクマに取り囲まれているのです。
その内の一人がいつの間にかアリアの目前に現れる。
それは口角をニヤリと上げると。
「私がこの世で最も好きな事を教えてあげましょう」
サクマの手に拳銃が出現します。
それは間違いなくミクリが愛用している拳銃。
いつも膝に隠し持っている物をいつの間にか抜き取られていたのです。
「――ッッッ!!」
それに気付きつつもアリアはどうする事も出来ない状態。
サクマは銃口をアリアの額に突き付ける。
「私にはポリシーがあるのですよ。それはね、トドメは相手の得物で刺すという事だ。どうですか? 自分が愛用する銃で撃たれる気分は? さぞかし悔しいでしょうねぇ、悔しいですよね、悔しいに……決まってるよなあああ!!」
ズドン!!
その瞬間。
プツン!!
気付けば互いが無傷の状態に戻っています。
舌打ちをするサクマ。
「チッ! やはりオブリビオンを放っておくのは得策ではありませんね」
姿を消すと、すぐにアリアの背後に現れ呪文を唱える。
「身体障害」
!?
全身麻痺と強い眩暈がアリアを襲う。
さらにサクマの手はカレンの頭頂部に触れている。
「聴覚障害」
不気味な幻聴がカレンの脳内を駆け巡る。
全てを壊せ――。
全てを殺せ――。
全てを消し去れ――。
消し去れ……消し去れ……消し去れ……消し去れ……。
消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ消し去れ――。
この時……。
カレンの心の中で何かがプツンと千切れてしまいました。




