小さな科学者 1
男の子の名はガンマ。
5才にして天才的な頭脳を持つ。
彼の心を突き動かすものはたった一つの探求心。
それは……。
「遺伝子交換」
ガンマから2度目の呪文が放たれる。
!?
ザイゼンの両腕、それから残りの片足もそれぞれガラクタへと姿を変える。
代わりにガンマが座っているビール箱の一部に両腕片足がそれぞれ加わる。
「パパ―!!」
すぐに駆け寄るユイ。
その小さなゼンマイ人形はまるで人間であるかのように複雑な動きを見せる。
ガンマの目にはそれがとても新鮮に映った。
すぐに杖をユイの方へ向ける。
「遺伝子崩壊――」
バチン!!
「んな!?」
ミクリの放った銃弾がヒットし、杖が地べたに叩きつけられる。
と、同時に杖から放たられた光がたっくんの頬のすぐ側を通って樹木に当たった。
――ッ!?
樹木だったそれは一瞬でグズグズに腐り果てた。
「うわああああ!! うがああああぁあああ!!」
その様子に白旗バンザイで狼狽えまくるたっくん。
「チッ!」
ガンマはミクリの方を見ると握っていた何かを放り投げる。
空中で爆竹のように弾けると、白い粉と黒い粉が宙を舞う。
粉は風に舞って建屋の外壁に付着する。
次の瞬間。
ボコボコボコボコボコ――!!
外壁から生えたカビが波打つようにミクリの方へと向かっていく。
すぐに箒に跨り外へと飛び出したミクリ。
その時。
「ミクリ―!!」
!?
聞き覚えのある声。
ずっとずっと。
ずっとずっとずっと――。
ずっと聞きたかったその声。
「お嬢様!!」
振り返ったその先、部屋の中にいるのは……。
カレンです。
すぐに引き返す。
箒を投げ捨て、カレンの身体を強く抱きしめた。
「嗚呼……嗚呼、お嬢様、ずっと……会いたかった!」
「うわあああん!! ミクリー!!」
二人は涙をボロボロと流して再開の喜びを分かち合う。
「ミクリ―! 私もね……私も、会いたかったんだよ」
お前をこうやって殺す為になあ――。
ザシュ!!
「うぐッ!!」
ミクリの腹部から血液が噴き出す。
カレン(?)は引き抜いたナイフを放り投げると思いっきりミクリの額に蹴りを入れた。
「きゃははははは!! お前は本当に馬鹿だなあ! これで何度目だよ! 何度騙されたら気が済むんだ! ああ? 馬鹿の間抜けが!!」
ミクリが薄れゆく意識の中、大好きな声で大嫌いな言葉が部屋中に鳴り響いた。




