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凍結の魔法陣 エピローグ

 妻と娘が死んだ――。


 信じられなかった。


 ある日突然姿を消して……一月(ひとつき)も探したんだ。


 ようやく見つかったその姿は変わり果てていた。


 全身をズタズタに引き裂かれ遺棄されていたそうだ。


 その姿を目の当たりにした私は泣き崩れた。


 気付けば海へ身を投げていた。


 意識を取り戻した時、病室のベッドの上だった。


 その後も私は何度も自殺を図った。




 また……死に損なった……。




 さらに死のうとした。


 何度も……何度も……何度も何度も何度も何度も……。




 まただ……。また死に損なった……。




 どうして……?


 私はただ、妻と娘にもう一度会いたいだけだというのに……。



 ◇ ◇ ◇



 不敵の笑みを浮かべるザイゼン。


「若造……私と共に……地獄へと参ろうじゃないか!」


「うわぁあああああああ!!」


 クズモトは酷く取り乱し、叫びながら走り出します。


 自身を不死身にしてくれた魔法はもう使えません。


 それを承知で中指を立てますが、その魔法陣は反応しません。


 さらに恐怖のあまり理性を失い、凍結の魔法を誤発。


 足を滑らせ転倒したまさにその時……。




「――ッ!?」




 巨大なコンクリートの塊はクズモトの身体を容赦なく押しつぶし……。


 凄まじい地響きを立て着地したのです――。






 ……。


 …………。


 ……………………。




 ザイゼンが目を覚ますと。


「あ! パパ!!」


 ユイが顔を覗かせていました。


 さらに隣にはミクリの姿。


 茶化すように言います。


「おじさん、悪運強すぎ」


 どうやら、ザイゼンはテトラポットが積み重なった隙間にすっぽり収まっていたようなのです。


 それをミクリ達が救出。


 すぐに蘇生弾を浴びせ現在に至ります。


 因みにここは走行中のワゴン車内です。


 運転手はザイゼンの仲間の一人、黒スーツの男。


「…………」


 口を開くことなく表情も崩さず運転操作を続けます。


 ザイゼンは掌の生命線を見つめて。


「そうか……。私は生き延びたのか……」


 そう呟くと、気になっていたことを尋ねます。


「あ、そうだ! キミ達は一体どうやって助かった?」


 するとユイがカバンから小さな箱を取り出します。


「これだよ!」


 それは何でも入る魔法の収納ボックス。


 取り出すときは欲しい物を思い浮かべて「フォールン」と口にするだけ。


 ザイゼンが発明したガラクタの一つです。


 なんと二人は咄嗟にその身を収納させたというのです。


「まさか避難シェルターとして使える代物だったとは……」


 どうやら発明者自身が思いがけない使い方だったようです。




 さて、ミクリ達を乗せた車は目的地へ向かって進みます。


 連れ去られた令嬢を救い出すため――。


 宿敵との決着をつけるため――。




 ふと、ザイゼンは呟きます。


 それはただの独り言。


 車のエンジン音にかき消されることを願って――。




 救世主か……。私には程遠い言葉だ……。

 ~カレンの学習手帳~


 【魔法と科学技術の定義】

 そもそも魔法とは魔力の変換行為を指す。

 科学技術とは再現性が高いことである。

 人が使う魔法は再現性が不安定だ。

 道具によって誰でも使う事が出来る魔法は魔法科学と呼ばれる。

 だとすると魔法科学すら使いこなせない私って一体……?

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