偽りの家族 4
ミレンの術中にはまり、再び記憶を書き換えられたサーヤ。
どういう訳か無理やり別の人間にあてがわれた状態になっています。
因みに今のサーヤは母子家庭の母親という存在……。
つい先程、高校生の不良息子の身柄を警察から引き取りました。
帰りの道中、息子はふて腐れた様子で足早に歩いていきます。
公務執行妨害で補導されたと聞きましたが、どうにか本人からも事情を聞きたいところです。
サーヤは遠ざかっていく息子の背中をじーっと見つめると。
「フリーズ」
息子を硬直させます。
スタスタと距離を詰めていき……。
「えい!」
息子の腕に手を回しました。
「んな!? ババアてめえ何しやがる!」
「べつに~。ただのスキンシップ」
にたりと笑みを浮かべるサーヤ。
硬直の魔法が解け、息子は必死にこちらの腕を振りほどこうとしますが。
「やめろ!」
「やめない」
がっしりと掴んで離しません。
言いたい事、聞きたい事は山ほどありますが、この場は下手に叱責したり追求はしない。
あえて優しく接した方が効果があるかもしれない……。
何となくそう感じ取ったのですが、どうやら的を射ていたようです。
なにせ思春期の男の子が一番嫌がることは母親にいちゃつかれる事ですから。
◇ ◇ ◇
次の日。
1限目が始まっているであろう時間に自宅を出た息子。
それを玄関で見送るふりをして、サーヤは息子の後を付けました。
果たしてちゃんと学校に行くのだろうか……?
もしも悪いお友達と連んでいるのなら……。
「私が何とかしなくっちゃ」
電柱の影に隠れながらファイトのポーズをとるサーヤ。
気合十分です。
尾行を続けると、息子は河川敷のところで高架下へ降りていきました。
「まさかあそこに悪いお友達が……!?」
高架橋の柱に隠れながら近寄ります。
不良=河川敷で大乱闘。
サーヤにとってはそんなイメージが強くこの場所はまさに河川敷。
彼女をますます不安にさせます。
もし辺りを見渡す余裕があれば、ここは暇を持て余した老人たちが釣りに思いをはせているだけの場所。
乱闘とは縁遠い平和な場所だと分かります。
息子の声が聞こえました。
やはり誰かと会っているようです。
「おっす、待ったか?」
「あ! タケル兄ちゃん!」
相手は子供……?
覗き込むと、息子の面会相手はバットを持った野球少年でした。
因みにタケルというのは息子の名前です。




