パズル好きの妖精 2
ユイの先導で二人はどんどん隠れ場所を変えていきます。
「たぶんこっちにはいない」
「じゃあ、少し休憩」
ミクリは腰を下ろすとパズルの山に寄り掛かります。
「それは良いんだけど、まさかずっと逃げ続ける訳じゃないよね?」
どうやらパズル好きの妖精達はウィザードの気配を身体に纏っているらしく、ユイはそれを察知しているのです。
その気配、ざっと50人はいるとのこと。
「うーん……。どうしようかなあ? 一人叩くだけでも精いっぱいだし……。これもどんな魔法なのかイマイチよく分かんないし……」
ジグソーパズルと化した自身の右腕をまじまじと見つめるミクリ。
そんな彼女にユイは指を差します。
「ところで、良いの? さっきからパズルに触ってるよ」
「へ?」
指摘されたことでミクリは初めて気づきました。
無意識にパズルの山に寄り掛かっていた事に。
「うわああああ! もう終わりだー! だー、だー……」
かなり狼狽えているようですが。
「…………あれ?」
ミクリの全身がパズルになる事はありません。
思わずケラケラと笑うユイ。
でもミクリは気にすることなく何かを考え始めました。
じーっとパズルの山を見つめると、間も無く右手でパズルの山に触ります。
何も起こりません。
次に山の中から何かを探り始めたかと思うと……。
「こ、これは――!?」
◇ ◇ ◇
未だにあちらこちらで多くの悲鳴が上がっています。
建物や通りすがりの人、それから道路を行き交っていた自動車も次々とパズルに変えられ……残っているのは街灯と路面くらいです。
「よーし、まだまだパズルを増やしていくぞー!」
「「「おー!!」」」
ああ、もちろん彼らも健在です。
そんな妖精の一人の背中にバシッと何かがぶつかりました。
「ん?」
続けざまにもう一つ。
次の瞬間。
ピキピキピキピキピキ――!!
!?
「ぎゃあああああ!!」
悲鳴をあげるその妖精。
なんとパズルと化し崩れ始めたのです。
「ポ、ポンキー! 待ってて、今助けて――」
バシバシッ!
ピキピキピキピキピキ――!!
「うわああああ!!」
バシバシッ!
ピキピキピキピキピキ――!!
「一体何が起きて――」
バシバシッ!
ピキピキピキピキピキ――!!
次から次へとパズルと化し崩れていく妖精達。
ようやく一人が気付きます。
「あっ! 見つけたよ! チミが犯人だ!」
指差す先にはミクリの姿。
暗闇に紛れながら指で何かを弾き飛ばしてきました。
それはパズルの1ピース。
それがそっぽを向いていた妖精にぶつかると、続けざまにもう一つ。
「ま、まさか!?」
なんと身体に触れたピースとピースはその場でピタリと組み合わさって――。
ピキピキピキピキピキ――!!
「ぎゃああああ!!」
そう、ミクリが見つけたパズル化の特性……。
それは隣通しのパズルを正しく組むと再びパズル化の伝染が始まるという事。
そしてただ一人残った妖精へミクリは指を構えます。
「さあ、パズルになりたくなかったらみんなを元に戻しなさい!」




