指輪の力 2
ペンライトを口に咥えながらユイを背負って走り続けるミクリ。
多くの人が寝静まる時間、指輪の力に導かれて飛ばされてきた場所は何処かの路地裏でした。
現状分かっている事はそれだけで、とにかく今はザイゼンの後について行く他ありません。
「あおうあああおあんあお!?」
(あいつら一体何なの!?)
先程からザイゼンは謎の集団に追われており、ミクリも便乗させられている状況。
試しに蘇生弾をぶち込んでみましたが、びくともせず追いかけてくるのです。
ミクリの体力にも限界が近づいてきた時、ようやくザイゼンが口を開きました。
「次で仕掛ける! 一瞬だけでいい、足止めを頼む!」
「え!? おうあおあえええ!!」
(え!? そんなこと言われたってえええ!!)
でもやるしかありません。
力強く踏み込むと、高く飛び上がって空中回転蹴りを繰り出します。
その動きは凄まじい威力の突風を生み出し、確実に追っ手の足を止めました。
すぐに追っ手の頭上に杖の先を向けるザイゼン。
「でかした! オクタ・フォールン!!」
ドドドドドドドド!!
「「「うわあああああ!!」」」
「なんだこれは!?」
「と、取れねえじゃねーか!!」
追っ手達は突如頭上から降って来た巨大なとりもちを大量に浴びて身動きが取れない状態となりました。
これで逃げきれそうです。
◇ ◇ ◇
ミクリ達はビジネスホテルの一室に潜伏することにしました。
最初に口を開いたのはザイゼンでした。
「あー、話したいことがありすぎて何から話せばいいやら……」
「だったらこの子が先。急に倒れたの。早く診てあげて」
ユイをベッドの上にそっと置くミクリ。
「ああ、そうだな。やはり彼女達をキミの所に送ってよかった。ところでアイの方は無事か?」
ユイの双子の妹、アイは以前カグラザカの屋敷でカビの騒動があった時から行方不明になっています。
ミクリは救おうとしたのですが、結局それは叶いませんでした。
「そうか……。気に病む事は無いさ。彼女達は魔動人形だからね。心臓部さえ残っていればどうにでもなる」
ザイゼンはユイの身体をうつ伏せにすると、うなじを杖で軽く叩きます。
するとハッチのようなものが開いて、空の小瓶が飛び出しました。
「え!? なにそれ! この子、ゴーレムだったの!? うわぁ、気づかなかった」
どうやらミクリはユイとアイを本物の人間だと信じ込んでいたようです。
「そう言ってくれると作った甲斐があるってもんだ。これでよし」
ザイゼンはカバンから液体の入った小瓶を取り出すと、それをユイのうなじの中に収めてハッチを閉じます。
「ねえ、その液体って……」
「ああ、キミもご存じのウィザードだ」
ザイゼンはユイの身体を仰向けに変えて毛布をかけます。
「やっぱり。ねえ、貴方はウィザードを集めているんでしょう? その目的は? そもそもウィザードって何なの?」
「なるほど、ではまずウィザードがどこから生まれたのかを話そうか」
ザイゼンは椅子に腰かけると、思い出すように語り始めるのでした。




