静寂のカグラザカ邸 1
先の連続殺人を解決したミクリ。
感電によるダメージを負ったため、大事を取って入院していました。
特に身体の異常が見られなかったこともあり、昼下がりには無事退院することができました。
カグラザカの屋敷へ戻ってくると。
…………。
出迎える者は誰もいません。
廊下を歩いてもすれ違う者すらいません。
「あれ? みんなどこ行っちゃったんだろう?」
ミクリのお腹がぐぅ~となりました。
メイド長に会ったらあれやこれや雑用を押し付けられそうだ。
先に厨房に行っておくか……。
「マナカさんにお願いしたらパン1個くらいは出てくるかも」
そんな事を考えながら食堂……。
そして厨房へと足を運びます。
しかし。
…………。
やはり誰もいません。
食堂を飛び出します!
廊下を走り、次々扉を開いては屋敷中を見渡していきます!
でも誰もいません。
誰一人として屋敷内にいないのです。
その時、ミクリの背中にポスッと何かがぶつかりました。
振り返ると、足元に落ちているのクマのぬいぐるみ。
それを片てで拾いあげます。
「あ! さてはお嬢様のいたずらですね。カレンお嬢様ー!」
すぐそこは廊下の角。
きっとカレンが身を隠しながらぬいぐるみをこちらへ投げた。
ミクリはそう思っているようです。
廊下の角を曲がると……。
誰もいません。
「お嬢様ー! サプライズにしては趣味が悪いですよー!」
ふと、ぬいぐるみの事が気になりました。
「そう言えば、お嬢様ってこんなぬいぐるみ持ってたっけ……?」
それにこのぬいぐるみ。
なんだか見覚えがあります。
「そうだ! このぬいぐるみ。さっきの部屋にあったのと同じ!」
その部屋だけではありません。
食堂に厨房、エントランスホールに応接室、様々な場所に同じぬいぐるみが落ちていました。
「どういう事? お嬢様のサプライズではないの? 一体何が起こって……」
思わずぬいぐるみをじーっと見つめます。
よく見るとぬいぐるみは片目しかありません。
糸がほつれてどこかへ落ちてしまったのでしょうか?
残っている片目は漆黒の石を使って見立てられているようで……。
その目と視線が合いました。
正確には合っているような気がしたのです。
「片方しか目が無いなんて可哀想に……」
でもこの目、なんだか不思議。
まるで吸い込まれそうな…………ん?
ミクリの顔面に向かってゆっくり近づいてくるぬいぐるみ。
それはミクリの額に触れると――。
――ッ!?
「うぁぁああ! 何だこれぇぇええ!!」
なんと本当にミクリの顔面をギュイーンと吸い込み始めたのです。




