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ミクリの本質 プロローグ

 【あらすじ】


 魔法を使うと魔法税を徴収されます。


 どうやらミクリは魔法を無駄使いしているらしく……。

 今回の冒頭はお説教タイムから始まります。


「あなたを呼んだのは他でもありません。これを見なさい」


 メイド長が見せたのは多額の徴収書でした。


 合計金額の桁を数えるミクリ。


「一、十、百、千、万、十万…………よ、4千8百万円!?」


「正確には48,341,626円です」


「ひえー、何ですかこれ?」


「何ですか? じゃありません! これはあなたが魔法を使ったせいで飛んできたものなんですよ!」




 この国で魔法税が施行しこうされたのは彼是かれこれもう5年も前の話です。


 魔法使いを国の機関で管理し、使用した魔法のパワーに応じて税を課すという制度です。


 古来より魔法は才であり、人種格差の象徴とされてきました。きっと今でもそうかもしれません。


 その解消に乗り出すべく、当時ある(・・)官僚が法案を押し通したのです。


 その官僚とは……。




「それからこれを見なさい」


 次にメイド長が見せたのは人の名前が箇条書きされたリストでした。


「高額納税者番付?」


「その9位を御覧なさい」


 なんとそこには我らが当主の名前が載っているではありませんか。


「わお! さすが旦那様カッコイー!」


「はあ……ミクリ、まさかあなたがここまで愚かだったとは……」


 今までにミクリが使った魔法に課された税は、全て必要経費として当主の懐から支払われてきました。


 それが積もりに積もった結果、ついに当主は高額納税者の仲間入りを果たしたのです。


「ちょっと、待って下さいよメイド長。これってとても名誉な事じゃないですか。まあ、私のせいかもしれませんけど……」


「確かに……これが一般の貴族ならそうでしょうとも。しかし旦那様の立場をよく考えなさい! このリストのせいで旦那様が世間で何て言われてるかご存じですか?」


「さ、さあ……」


自虐じぎゃく官僚かんりょうですよ!」


 そう……魔法税施行の立役者、その官僚こそが当主その人だったのです。



 ◇ ◇ ◇



 ようやく話を理解したのか、ミクリは驚愕します。


「じ、じがくきゃんりょう!?」


「違います。自虐官僚です」


 そう、これは言葉通りの意味。


 まさに自分の法案で自分の懐を痛める構図が出来上がってしまった訳で……つまり墓穴を掘ったという事です。


 因みに今この場でメイド長が危惧きぐしているのはあくまで世間体の話です。


 なにせ金銭的には痛くも痒くも無いのですから。


「じがくきゃんりょう!?」


「違います。じがくきゃん…………と、とにかく! あなたの身勝手な振舞のせいで旦那様が世間の笑い物にされたのですよ。分かっていますか? この不始末を!! ああ……そしてこれが旦那様の耳に入らないように私とハセガワがどれだけ気を使っているか……」


 因みにハセガワとは当主に仕えている側近のことです。


「そんな事言われても……。あ、そう言えば一昨日おととい出た女性誌で『自虐官僚』ってワードがありましたけど……あれって旦那様のことだったんですね」


 ミクリの何気ない言葉。


 するとメイド長は……。


「何ですって!?」


 眉間にしわを寄せて携帯電話を取り出します。


「あ、もしもし。ハセガワ、一昨日発売の週刊誌です。ええ、そうです。全て即座に回収して灰になさい! 編集者には私から話を付けます」


 ちょっとやり過ぎなんじゃ……と少々引き気味のミクリ。


「た、大変そうですね」


「あなたが言う事じゃないでしょうが!! もうあなたは今後一切、魔法を使うの禁止です!」


「ええええ!! 今後一切っていつまでですか!?」


 魔法しか取り柄が無いミクリにとってはまさに死活問題。


 自身の顔をグワッとメイド長へ近づけます。


「ちょっと、近い近い! 離れなさい!」


 メイド長は部下を軽く払いのけて話を続けます。


「と・に・か・く、世間のほとぼりが冷めるまで絶対禁止です!」


「もし使ったら?」


「次月の給料を5割カットします」


「うわああああん! 横暴だあああ! メイド長のバカ―!!」


 わめきながら走り去るミクリ。


「こらー! 上司に向かってバカとは何だー!!」


 売り言葉に買い言葉とはこのことです。

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