ミクリはペテン師 2
こうして魔法が使えないご令嬢にとって初めての魔法の特訓が始まりました。
時には近くにいた使用人を捕まえては特訓の成果を披露します。
でも……まだまだ成功とは程遠い状況です。
相変わらず鳩をとてとて追いかけるご令嬢。
当然、使用人達は色々思う所があるのですが……前もってミクリから事情を聞いたこともあり、優しい眼差しで見守ることにしました。
そして何より、可愛いご令嬢の姿が見れたら誰だって微笑ましくなってしまうのです。
◇ ◇ ◇
さて、平日のカレンは幼稚園に通っています。
あるお昼のフリータイム。
園児たちは覚えた魔法の見せ合い自慢をしていました。
それぞれ炎を出したり、氷を出したり、雷を出したりと……流石はエリート街道まっしぐらの子供達です。
それを傍から見ていたカレンでしたが、エリートの子供の一人が挑発してきました。
「あら、そちらにいらっしゃるのはカグラザカ家のご令嬢様ではありませんか? ご両親はとても偉大な魔法使いとお見受けしておりますけど、あなたは一体どんな魔法をお持ちで?」
因みにこれはカレンが魔法使いとしての実力が無いことを知った上での台詞なのです。
5才児にしてこの口達者具合……相当質が悪いですね。
更にそれを聞いて周囲の子供達も囃し立てます。
注目の的となり、思わず見せ物となってしまったカレン。
「カレンちゃん、相手にしない方が良いよ。あっちに行こう?」
お友達がそう促しますが、カレンにだって名家カグラザカの長女としてのプライドがあります。
カレンは覚えたての魔法を披露することにしました。
特訓の成果もあって、結構な様になっているようです。
しかし――。
「へ? それがあなたの魔法? ふ、ふふふ、あーははははは!!」
質の悪い子供達はお腹を抱えてカレンを笑いものにします。
「それは手品って言うんですのよ。ふふふ、まさかカグラザカ家のご令嬢がこんな茶番を披露してくれるだなんて……くくく、最高ですわ!」
「……じゃないもん」
呟くカレン。
「は? 何ですって? 聞こえませんわね」
「手品じゃないもん! これは魔法だもん! ミクリが教えてくれた魔法なんだもん!」
「ミクリ? ああ、あなたの家の使用人の事ですか。たかが使用人ごときに魔法を教わるだなんて……カグラザカも随分と落ちぶれましたわね」
「たかがって言うな! ミクリは凄い魔法使いだもん!」
「だから、それは手品でしょう」
更に横から他の子供が……。
「あ、オレ知ってるぜ! そういう奴の事をペテン師って言うんだってよ」
「おっしゃる通りですわ! カグラザカの使用人はペテン師ですわ!」
そして周囲から響き渡るペテン師コール。
カレンはお友達に尋ねます。
「ペテン師って何?」
「インチキの嘘つきってことだけど……」
それを聞いたカレン。
「このー! ミクリを馬鹿にするなああああ!!」
とうとう近くにあった椅子を振り回して暴れ狂うのでした。




