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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
31/33

龍種の里の赤龍との闘い



 「うぅ、あれ、此処は?」


 クルルの弟分が目を覚ました様だ。


 「おぉ、漸く目を覚ましたか。今はお主を馬鹿にしていたクズ共に未来の旦那様兼師匠が腕試しを挑んでいる処よ。」


 「お姉ちゃん……何言ってるの?」


 ククルの口調が何か僕に対する物と違う気がする。


 「まぁ黙って見ているが良い。旦那様の凄さを奴等に目に物言わせてやるからの。そして誇れ、最初に相対したのは年端も行かない自分なのだと。」


 「何を言っているの?無理だよ奴等は龍種の矜持すら持ち合わせていないんだよ。必ず何か卑怯な手を使うに決まっている。」


 何でそんなに自信満々で居られるの?あれ?さっきから旦那様って……え?お姉ちゃんが結婚?それに旦那様って、この前力試しした人種の女の子?お姉ちゃん女の子同士は婚姻じゃなくて盟約だよ。




 「さぁ、どうしました?高々人種如きの挑戦を受ける勇気も持ち合わせて無いと?それならば大変失礼をしました。これでは弱い者虐めになってしまいますね。」


 ふぅやれやれとばかりに頭を振って逃げ道を用意してやる。勿論挑発行為の何物でも無いが、これで乗って来ないならば今後この里で大きな顔をする事は出来ないだろう。


 『赤いのどうする?此れだけ馬鹿にされたら引くに引けないぞ。』


 『人種の子供に負けたとは聞いていたが、まさか女の子とはな。情けないにも程があるってもんだ。』


 『おいおい赤のアニキも蒼のアニキも正気ですか?女の子だろうと子供だろうと見た目通りな訳無いでしょう。』


 『何だ緑の怖気づいたのか?情けない奴だ。中々カワイイ顔立ちじゃないか。俺等が勝ったらあの人種はペットにでもしようぜ。ぶっ壊れるまで可愛がってやる。』


 何やら念話で相談していたようだが、漸く纏まったらしい。此処は更に追い打ちで引けなくしてやろう。


 「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。あくまで腕試しですから生命までは取りません。何なら三人同時に相手をしますよ、どうです、これなら怖くないでしょう?」


 流石に此処まで馬鹿にされたら受けるだろうと思ったら、ニヤリと笑った龍種の一人が口を開く。


 「それは大した自信だ、ならばお言葉に甘えて三名でお相手しようじゃないか。」


 赤毛の龍種の男の台詞に見物に来ていた者達がざわめき出す。


 「自分から提案したんだ、今更無しとか言わないよな?」


 成程先程後ろでククルと話していた弟分が言っていた通り矜持も恥も持ち合わせては居ない様だ。だが、それこそ此方の思う壺である。


 「勿論です、二言は有りません。」


 赤毛の龍種は顔まで真っ赤にして此方を睨みつけるが全く以て威圧感が感じられない。


 「どうせなら賭けようぜ。お互い勝った方の命令を一つだけ聞くってのはどうだ?」


 ククク、勝ったら隷属魔法で奴隷にしてやる。隷属を受け入れさせれば此方の思うがままだ。あぁ、楽しみだ。


 「良いですよ。一応確認しますが、それはどんな事でも可能なんですか?」


 「問題ない、例え勝者が奴隷になれとか死を望んだとしても聞かなければならない。」


 予想通りだ、恐らくはククルを差し出せとか、若しくは僕に隷属しろとか言う積りだろう。古今東西小悪党の要求なんて似たような物だ。人種なら兎も角、龍種に取って金品等何の価値も無いからな。龍種がお宝を集めるのは只のコレクションに過ぎない。


 「解りました、僕もその条件で構いません。」


 「決まりだな。俺達は全員龍化して闘う、力試しは本来その条件で行うものだからな。怪我したくなければ今の内に降参しとくんだな。ククク。」


 「お気遣いどうも、此方も最初からその積りでしたので問題ありませんよ。」


 戸惑うでもなく、余裕綽々で応えるこの少女を今になって漸く不気味な物を感じる様になった。もしかして自分達はとんでも無い者に目を付けられたのでは無いだろうか?


 人種の子供の逃げ道を塞ぐ積もりが自ら罠に嵌りに行った様な居心地の悪さを感じ始めたのだ。それは残る二人も感じている様で、今更ながらに深い後悔が押し寄せてくる。


 『狼狽えるな、脆弱な人種風情が龍種を三体も相手にして勝てる訳が無い。恐らくあの小僧があまりにも不甲斐ない闘いをした為に本当の龍種の恐ろしさを勘違いしているのだろう。』


 『な、成程それならば納得出来るってもんですねアニキ。』


 『赤いの、俺はそんなに簡単な話には思えんかな。』


 『腹を括れ、何方にせよもうやるしか無いんだ。』


 『・・・分かった。』


 「待たせたな!俺達三体を相手に喧嘩を売った事後悔させてやるぜ。」


 「それは楽しみです。少し強めに行くので間違っても死なない様に頑張って下さいね。」


 そこ迄言い終えて漸く抑え付けていた全身の魔力を開放した。


 「「「な!」」」


 少女の様な見た目にそぐわぬ魔力量が闘技場を襲う。急激に膨れ上がる魔力に龍種の三人が腰を抜かす。


 「な、何だよその魔力は!お前人種じゃないのか!?」


 「化け物だ!」


 「・・・成程な、三体同時でも余裕な訳だ。」


 腰を抜かしたまま其々が思い思いの台詞を吐くが、蒼髪の龍種の男だけが冷静に状況を計算している様に見える。


 「騙したな!最初から俺達をどうにかする目的で呼び出したんだろ!」


 この赤髪はいきなり何を言っているのやら。


 「こんな賭けは無効だ!俺達を騙して賭けに持ち込んだに違いねぇ!」


 「人聞きの悪い事言わないで下さい。最初に賭けを持ち掛けたのは貴方の方ですよ。そもそも僕は話があって呼び出したに過ぎません。」


 「な、何で俺達が呼び出されなきゃいけないんだよ。」


 「おや?心当たりが無いと?」


 赤髪を睨みつけてからチラリと弟分の方を見ると、此方の意図を察したのかバツが悪そうにモゴモゴと押し黙ってしまった。


 「あの子の闘いの相手もろくに知らずに良くも馬鹿にして虐め倒せるものですね。話を聞いた時は耳を疑いましたよ。

 更に姉貴分であるククルが仇を打ちに僕の前に現れたのも頷ける理由でした。それもこれも貴方方の心無い誹謗中傷が原因、ならば貴方方が馬鹿にした僕の実力を徹底的に解らせれば二度とあの子を蔑む事も出来なくなるでしょう?」


 「そんな事で俺達を呼び出したのか?お前には関わりの無い話だろうがよ!」


 「直接関わりが無ければ首を突っ込んでは行けませんか?」


 「そうだよ!其処の根性無しと俺達の問題だ!部外者が首を突っ込むんじゃねぇ!」


 「僕はこの度麓の洞窟に採取に来た最に此方の黒龍であるククルに勝負を挑まれ言われました。「お前に負けた事を馬鹿にされて弟分が引き籠もりになった。」と、これ直接貴方方に会っては居ませんが、既に関係ありますよね?」


 「そ、それは…。」


 「そして勝負には僕が勝ちククルと名付け一緒に僕の家に来る事になりました。」


 「なにぃ!さっきから言ってたククルって黒龍の事だったのかよ!」


 「え、今迄気付いて無かったんですか?」


 「分かるかよ!そうか黒龍にすら勝利してる奴だ、俺達が勝てねぇのも納得だ。」


 「赤いの、お前と一緒にするな。気付いて無かったのはお前だけだ。」


 赤髪が"え!"って顔で後ろの二人を見る。


 「アニキ、普通分かりますよ。あの小僧が弟分って言ってるのは黒龍だけですよ。」


 「あ…あ、あー!確かにそうだ!」


 流石に傍観を決めていたククルも呆れを通り越したのか前に出て来て憐れむ様な顔で言った。


 「赤龍よおヌシは相も変わらず低脳よのう、以前から何かに付けて我の仲間にも嫌がらせをするし、そんな真似するもんじゃから我も何度も争ったが、正直言うと関わりを持ちとうなくて仕方なかった。しかし、此度は色々と方々に迷惑をかけ過ぎたからな。この際だから聞かせてくれんかの?おヌシは一体何がしたいのだ?」


 ククルも辛辣だな、頭の出来ならククルも褒められた物じゃ無いけど、ここで混ぜっ返すと収拾が付かなくなる。


 そんな気遣いも無駄になった様で、赤髪の男はこの世の終わりみたいな顔で呆けていた。


 「な。」


 「な?」


 「何でそんな事言うんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 突然怒りの形相を……いや、泣きながら?怒るのか泣くのかどっちかにしろよと言いたくなるくらいに複雑な顔をして叫び出した。


 「其処の小娘が強いのは理解した。大方盟約を結んでこの里を出て行くって事だろう?けど、俺もお前より強くなって必ず迎えに行くからな!」


 僕もククルもキョトンとした顔で一瞬何を言われたのか理解出来なかった。いやいや、ドサクサに紛れて告白しやがったぞ。でも、大凡読めた。


 「ククル、迎えに来るって。これもしかしなくてもプロポーズだよね何か言ってあげたら?」


 ククルも漸く思考が動き出した様で、申し訳無さそうに居心地悪い顔でトドメを刺した。


 「気持ちは嬉しい……くはないけど、我が結んだのは盟約では無く婚約なのだ。まぁ、今はまだ我の成長と教育次第でどうとでも転ぶ微妙な立ち位置なのだがな。」


 「ハッハッハ、何を言っているのやら同性で結べるのは盟約だ。黒龍も中々俺の事を非難出来ないオツムのようだ。」


 ククルも一瞬ムッとした顔になるが、溜息をついて言葉を続ける。


 「信じられないかも知れないが、此方の御仁であるレン様は見た目麗しい少女に見えるが実は男性でな、本当に女の身からしても嫉妬に狂いそうになる位美少女なこの方と婚約関係なのは本当なのだ。」


 ククル何時婚約したと突っ込みたい。それに何故そんなに美少女とか見た目麗しいとか何度も言う?この状況でも外堀埋めるつもりか!此処で反論したらまた振り出しに戻ってしまう。


 ぐぬぬと音が鳴りそうな程の心境を抑えて笑顔で対応する。せざるを得ない。ちくせう。


 「僕はれっきとした男性ですよ。別に騙した訳でも趣味で女装してる訳でも有りません。」


 信じられないと言った顔だが、次第に怒りの形相に変わり始める。


 「良くわかった!ならば其奴を殺せば盟約も切れるし、黒龍をも超えた事になるな?」


 「何故そうなる!おヌシに"旦那様"は倒せんし、生命を奪うなんて事は夢のまた夢だぞ!それに、"夫"の生命を狙う輩に我が心許すとでも思うたか!」


 ククルそれ説得じゃない、無茶苦茶煽ってるから。しかも、婚約者から新婚を経て熟年夫婦みたいになってるし。


 「うるさいウルサイ五月蝿い!」


 もぅ何も見えてないな。嫉妬に狂って無茶苦茶に突撃して来た。


 「クルルやり過ぎ、大人しくさせるから下がってて。あと、後でお説教ね。」


 「それは殺生です。謝りますから何卒御容赦を!」


 最後の"お説教ね"が効いたのか嘆願するが、時間が無いので睨みを効かせるとすごすごと後ろに下がって行った。


 やれやれ、単純に実力差を見せ付けて弟分は勇敢に闘ったと分からせるだけの筈が、どうしてこうなるのかな?


 闇雲に体当たりを仕掛けて来た赤髪をスルリと躱し、がら空きの腹部に下からの回し蹴りを見舞う。まともに喰らって上空高くに舞い上げられる。


 龍化していればそこ迄飛ぶ事も無かっただろうに、我を忘れて龍化も出来ないとはククルも幸せ者じゃないか。


 まぁ、好かれて幸せか迷惑かは本人次第だろうけど。でも、どんなに嫌いな相手でも好いてくれる相手が居るだけ幸せだろう。


 だからどうしようもなく、もぅそれが八つ当たりだとしても暴れるしか選択肢が無くなった赤髪には誠心誠意応えてやろう。


 気持ちに蹴りが着くように、暴れて少しでもスッキリする様に全力で叩き潰してやろう。


 落ちて来た赤髪を迎え撃つ。蒼髪も三下感半端無い緑髪も手を出す気は無いらしい。いい仲間じゃないか、どんなに間違っても致命的な事をしない限り付き合ってくれる。いや、致命的な事をしない様に付き合ってるのかな?


 今度は真横に蹴り付け仲間二人の前に落とす。


 「龍化はしないんですか?このままじゃ味気無いですよ。」


 「舐めんじゃねぇ!御期待通り龍化してやるよ!」


 ダメージもあるだろうに、龍化を始めた赤髪はククルが言っていた様に赤龍だった。


 紅い体表炎をそのまま形にした様な真紅のドラゴンだった。龍化した途端に体表自体に熱を持っているのか、結構な熱気が闘技場に充満する。


 「成程、自信を持つだけはありますね、通常の人種ならば絶対に太刀打ち出来ないでしょう。」


 軽口を叩いてはいるが、どんなにレベルが上がっても単純な熱や冷気には耐性があっても無効化はしない。完全に無効化出来たらそれはもう人とは言えないだろう。


 けど、人には知恵がある。熱いなら冷やせば良いのだ。両の手に冷気で作った氷の手甲を作り出す。序に鎧と具足も作った。


 具現化している間は常に魔力を消費するが、作り出す冷気は熱気程度では溶けない。最後に頭部と顔を覆う兜を作り臨戦態勢が完了する。


 「……何て美しい。」


 氷で創り出した鎧を観た観客達がそこかしこから溜息混じりの称賛が囁かれる。さしづめ冷氷の騎士と言った所だろうか。


 剣こそ持っていないが、身体を覆う氷は美しい銀の甲冑が身体を覆っている。


 赤龍も臨戦態勢の筈だが、呆けた様に動かない。


 「お互いに準備が出来た様ですね。行きますよ!」


 「あぁ、相手にとって不足なし!」


 弾けた様に我に返った赤龍が唸り声を挙げて襲い掛かる。赤龍との最後の力試しが始まった。




2021年08月02日:投稿と同時に大量に修整しました。

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