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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
30/33

龍種の里の闘技場



 「おはよう御座います。昨夜は良く眠れましたか?」


 「あぁ、ククルかおはよう。まぁまぁ眠れたよ。」


 「朝食の用意が出来てますから早く顔を洗って来て下さいね。ア・ナ・タ。」


 これ以上無い位の幸せそうな笑顔で世話を焼いてくれるが、このまま甘んじているとなし崩し的に押し掛け女房になりかねん。


 何れは僕も結婚相手を探す訳だが、幾ら何でも早過ぎるし、王侯貴族でも無いのに複数人の嫁を娶る気も無い。


 「ククル勘違いの無い様に言って置くけど、僕はまだ君を娶るとは言ってないからね。そもそも…。」


 言ってから失敗したと気が付いた。もっと言葉を選ぶべきだった。


 「あ、あれ?大爺様の話し合いでは丸く収まったとか、え?我は受け入れて貰えた訳では無かったのですか?もしかして一晩経って気が変わったとか?我はてっきり……ヒック、我は…捨てら…れる…ヒック…この…まま…両親にも喜んでも…らえて、グシ…結婚なんて…夢のまた…夢って…大人は皆…グスッ…我は捨てられる?うっうわぁぁぁぁぁぁぁん!やだぁぁぁぁぁぁ!捨てないでー!何でもするからぁぁぁぁぁぁ!」


 幸せの絶頂から地獄のドン底まで突き落とされた様な顔で大泣きを始め走り出してしまった。


 「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 あのジジィィィィィィィィィ!どんな説明したんだぁぁぁぁぁぁぁ!


 ククルを追い掛けるも、スタートダッシュがワンテンポ遅れたお陰で既に屋敷の外まで出てしまっている。当然外には朝陽を浴びに出て来た年寄や、散歩を楽しんでいる老若男女の姿が散見される。


 泣きながら『うわぁぁぁぁん、捨てられたぁぁぁぁ!』と連呼しながら走り去るククルを追い掛ける僕を目撃した通行人は須らくヒソヒソと近くの人と噂話に入る。


 いや、内容は想像出来るけど、聞きたくは無い内容なのは明らかだ。兎に角ククルを止めて落ち着かせないと。まだ候補止まりだって言うのに……グスン。


 300メートル程の距離を走り抜けて漸くククルに抱き着いて止める事に成功した。


 300メートルか……12〜15人位の人とすれ違った気がする。こりゃ暫くは話題に事欠かないだろうな……ちくせう。





 泣きながら暴れるククルを引き摺って元の部屋まで戻って来たが、今度は家の使用人なのだろうか、数人の人が扉の向こうから顔を半分だけ覗かせている。


 頭痛がしてきたのを我慢しながら部屋の扉を閉めるが、一度逃げた使用人らしき人達は再び戻って来るタイミングを伺って居る様だ。


 先にククルに話をして置く方が建設的だろう。


 「ククル、泣くのも喚くのも逃げ出すのも我慢して話をしっかり聞いて欲しい。そして、質問にも答えて欲しい。出来るね?」


 意外と素直な物でコクリと頷いただけだが、覚悟を決めた様な面持ちで此方を見つめ返してくる。黒髪黒目で肌も綺麗な日本人顔、好みで言えばどストライクなのだが、流石に11歳で将来を決める気にはならないし、種族的な習慣の違いや常識的な齟齬もあるかも知れない。


 今はお互いにその辺を擦り合わせて修整する時期だろう。それにはやはり時間が必要と言う事だ。


 「先ずはククル、君はまだ花嫁候補だと認識して欲しい。申し訳無いけど、他にも求婚を申し込んで来ている人は何人か居る。最も何処まで本気なのかは図れていないけどね。」


 「で、では、我は完全に嫁失格なのでは無いのですね?」


 「それはこれからお互いに知るべき事を知って、やって行けると確信してから決める事だと思うよ。」


 「分かりました。不束者ですが此れから宜しくお願いします。悪い所は遠慮無く言って下さい。」


 「じゃあ、次に聞くけど大爺様から僕の家に来る事は何て聞いたの?」


 「いえ、ただ昨夜の話し合いは"ククルよ喜べ、全て丸く収まったぞ。"とだけ。」


 あまりの言葉の足りなさに頭を抱えたくなった。そもそも龍族は思念波みたいな物で遣り取り出来るんじゃなかったっけ?


 今回の騒動は全てあのジジィが元凶何じゃないか。


 「ククル因みに聞くけど、最初に喧嘩を吹っ掛けた時は何を聞いて売りに来たの?」


 「あ、はい、"お主の子分を倒した者がいずれここに来る、けして敵対しない様に心掛けよ。良いか、借りてきた猫の様に静かに静観を決めるのじゃ。さもなくばこの里の明日は無いかも知れん。"と。」


 大爺様、どんだけビビッてたんだよ。そんな言い方されたら力に絶対の自信のある者は逆上して喧嘩も吹っ掛ける訳だ。


 「流石に我も人種如きにそこ迄弱気になるのは龍種の沽券に関わると、地竜を霊峰の周りに配置して侵入を阻むつもりでした。」


 え?あのあり得ない程の地竜の群れはククルの仕業だったの?道理で集まり方が不自然だと思ったよ。


 「あぁ、逆に皆の食料になったけどね。」


 「あの時は配置した地竜をアッサリと突破するどころか、纏めて始末されてるとは思ってませんでした。抑々考えてみると我はとんでも無い方に喧嘩を売っていたのだと今更ながらに震えが来ます。」


 「まぁ取り敢えず大爺様と昨夜話したのは、ククルは連れ帰り様子見で問題無いなら僕の成人を待って婚姻、けど、怠惰で我儘放題なら放逐って決まったから。後は掟の由来が神竜様にある事って話をした位かな。」


 「あれ?大爺様その話したのですか?」


 「うん、何か問題?」


 「いえ、話すのは問題無いのですが、大爺様はあれで三千歳を超えてますからかなりボケがキテるので、適当に話してないか不安で。」


 ちょっと待て、確か神竜の話って千年程前って言ってなかったか?一気に大爺様の話が胡散臭くなって来た。


 「ククル、その神竜様の話って大体どのくらい前の話なのかな?」


 「正確な年代は分かってませんが、少なくとも一万年以上前である事は確かかと。」


 どうやらボケ過ぎている事は確かなようだ。しかし、それだと不可解な事が多過ぎる。


 「神竜の話は追々聞くとして、ボケた大爺様に何時までも長を任せるのは問題かと思うんだけど?」


 「三百年程前に既に父が跡目を継いでますので、大爺様に実権は有りません。」


 「じゃあ、僕が貰った龍族の証は?」


 「それは有効だと思います。けど、立ち会ったのが大爺様なので、勝負を挑んだ龍種の証言も必要になりますが。」


 「じゃあ以前立ち会った龍種が惚けたら?」


 「それは大丈夫かと。我も負けてますし、嘘の証言がバレたら里には居られなくなりますから。」


 「厳しいな!」


 「いえ、大抵は勝負を挑んで負けたにも関わらず負けを認めぬ卑怯者の誹りを受け、親類一同からも里の仲間からも爪弾きになりますから居られなくなるだけです。」


 「想像以上に陰湿だった!」


 「我の子分も負けを認めたモノの、相手が人種の子供と聞いて馬鹿にされたから引き篭もっただけで、負けたと言う事実以外は何も分からないから色々な憶測が飛び交い、それならば我が事実確認をして来ると言う運びに……スイマセン。」


 「なら何で地竜をあんなに配置してたの?」


 「はい、いつ来るか分からない者を待ち続ける暇は無いので、地竜を配置して置けばどれかに倒されるだろうと。一応人種を倒したら知らせを送る様に躾けて置きましたので、その内知らせが来るかなぁと……スイマセン。」


 「ん?地竜はククルの言う事を聞くの?」


 「はい、何頭か地竜を飼っていますので簡単な命令は聞きますし、何か珍しい物を狩れば見せに来ますから。これでもドラゴンブリーダーの称号も持っているんですよ。」


 前世ならドッグブリーダーってのは聞くけど、ドラゴンブリーダーとは……龍族にとってドラゴンは犬みたいな立ち位置なのかな。


 「色々な事が起こり過ぎて一気に聞くと頭が追い付かないかも知れない。続きは家に着いてからノンビリゆっくり聞いていくとしようか。」


 「はいでも、引き籠ってしまった弟分だけは何とかして行ってやりたいのです。」


 沈痛な表情で弟分の心配をするククル。あぁ、クルルの良い所をまた一つ発見した、本来のクルルはこんなに面倒見が良く優しいのだろう。


 「それについては僕に考えがあるから。」


 「考えですか?」


 首を傾げるクルルも可愛いけど、ヤバい大分絆されてるな。


 「昨日の内にベルフェ王に頼んでイジメっ子を集める様に頼んで置いた。姿が見えないのはそのせいだよ。」


 「……そう言えば居ませんでしたね。」


 「気付いて無かったのかい。」


 良くも悪くも一直線なんだなぁ。そろそろ大人なんだから落ち着きが欲しいところか、まぁそれも追々だな。







 朝食を終えた僕らが来たのは里の外れに設営されている闘技場。しかしながら山頂とは思えない程だだっ広いな一体何ヘクタールあるんだ?


 色々と歩き回って確信したが、街並みの建築様式自体は前世で言う所の古代ギリシャその物に酷似している。


 別にギリシャに旅行に行った訳ではないが、写真やテレビ等で観たからに過ぎない。多分専門家が見れば細やかな違いは分かるのだろう。


 「うわぁ流石に龍種の闘技場だけあって凄く広いな。」


 「我も初めて入りますが、この闘技場は龍形態、人化形態でも闘える様に広く作られているそうですよ。」


 「なるほどね、ところで呼んで来てくれたかな?例の彼。」


 「はい、何時までもウジウジしてたので、少々強引ではありますが、縄で縛って連れて来ました。」


 後ろを見ると文字通り縄で簀巻きにされた少年がグッタリしたまま転がされていた。


 「流石にやり過ぎじゃないかな?」


 「大丈夫です、我の周りでは此れが日常的でしたから。」


 つまり他所では普通じゃ無いって事なのだろう。いや、確かに龍種は丈夫だからこの程度なら問題にならないのかも知れないけど、何か時間と共に矯正項目が増えて行く様な気がするのは何故だろうか?


 ククルから聞いていた弟分を馬鹿にしていたにグループは予めベルフェ王に頼んでメッセンジャーをして貰っていた。流石に一国の王に使いっ走りをさせるのは躊躇ったのだが、本人がさも楽しそうに引き受けてくれたので任せる事にした。


 「そこの人種!お前が俺達をこんな所まで引っ張り出した張本人か?!」


 生意気そうな龍種の若者の一人が怒鳴り散らす。どうやら集団のリーダーの様だ。


 「あヤツは以前から我の子分を虐めては我に近付かない様に脅していたのです。今度会ったら叩き潰してやろうと思ってました。」


 ククルが忌々しそうに舌打ちでもしそうな顔で毒づく。ククルさんやあまり美少女がしちゃイケない顔で毒を吐くものではありませんよ。目覚めたらどうするんですか。


 「良くぞ参られた、そなた等がそこに転がっている者を馬鹿に出来る程の実力者と聞いて是非とも手合わせ願いたいと御招待させて頂いた。」


 さぁ楽しい楽しいお時間の始まりだ。






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