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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
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神竜の盟約と恋物語



 「大爺様、一体どう言う事か説明して頂けますね?」


 大爺様は居心地の悪そうな面持ちでソワソワして落ち着きがない。それはそうだろう、孫の為にちょっと一芝居打ったと言えば孫思いの爺ですむが、相手側にして見れば嵌められた以外の何物でも無い。


 人が知らないのを良い事に、シキタリだか求婚の習わしだかを吹き込んで無理矢理婚姻させよう等と許される事では無いだろう。


 「何とか言ったらどうですか?」


 「なん……」


 「文字通り"何とか"等と言ったらブチ切れますからね。里の半分程が焦土になる位の覚悟を決めてから言って下さい。」


 そこ迄釘を刺されたら巫山戯た事を言う訳にも行かない。今の言葉からも相当御立腹なのは言うまでもない。


 「いや、すまんかった。ワシも孫可愛さにちっとやり過ぎたかなぁとは思っておった。」


 「ならば……。」


 「しかし、騙し討みたいな遣り方だろうと、ワシ等の一存で無かった事にも出来ん。」


 神妙な顔をして大爺様が告げる内容に嘘は無さそうだ。しかし、只の因習ならば取り返しが付く事態の筈。


 「何が原因でそこ迄頑なに守ろうとするんです?」


 「これは只の因習ではなく、神竜様が取り決めた絶対の掟なのじゃ。此れを護らねば孫は名付けられたにも関わらず番にも配下にもなれなかった惰龍として断罪される。」


 「そんな。」


 流石にそこ迄厳しい掟だとは考えもしなかった。あまりにも末路が酷過ぎる。


 「お主が怒るのも無理も無い話じゃが、せめて住処の片隅でも構わんから傍に置いてはやってくれんかの?強き者を知った今なら勝気だった性格もまた矯正されよう。」


 ククルはもう既に乱暴な物言いすらも矯正されってか、元々は大人しい性格だったのではないかと思える程お淑やかな物腰になっている。


 多分だが、元々面倒見が良く頼られる内に小山の大将みたいな性格に成らざるを得なかったのでは無かろうか?


 そう考えると少なからず気の毒な気もするが、此れと其れとは話が別だ。しかし、断罪までされるとなれば捨て置く事も出来ない。


 全くこの爺ぃは困った事をしてくれる。


 「一応聞きますが、その神竜様は今何処に?」


 「ウム、今は眠っておられる。」


 「なら名付けの件も知らないのでは?」


 「この掟はワシ等や神竜様が断罪するのでは無くてな、一種の呪い見たいな物なんじゃよ。」


 「呪いって……そんな。」


 「呪いは言い過ぎかも知れんが、名付けは誓約の儀式でもあって、裏切り、放置、約定の反故は断罪の対象となるのじゃ。」


 「大爺様は孫をそんな死地に送る様な真似をしたと言う事ですか?」


 流石に頭を抱えたくなる位の事情に顔を顰める。


 「昨日も話したと思うが、あ奴は子分を護る為とはいえ男勝りに成長してしまって嫁に貰う者も居なくなってしもうた。」


 「まぁ、僕も龍族の龍化状態の性別までは見抜けませんしね。最初は男だと思ってたくらいだし。」


 「無理も無いのう。時にレン坊や、ワシ等の姿が龍化と人化どっちが本来の姿と思う?」


 気にした事は無いが、確かに二つの姿を使い分ける種族など龍族しか知らない。


 「気にした事はありませんが、龍化の姿だと普通は思いますね。」


 「じゃろうなぁ。じゃが実は人化の方が本来の姿なんじゃよ。」


 知らなかった。それなら人化出来る龍なのでは無く、龍に化ける事が出来る人種と言う事になる。


 少し昔話をしようかの、此れはワシ等龍種のルーツに纏わる話じゃ。




 「昔むかし、それはもう気の遠くなるほど昔の神話の時代。創造神がこの星を創り海を創り陸を創り空を創った後、眷属たる人種、ドワーフ種、エルフ、ハーフリンク、魔族、その他アラウネやリザード種の神々が其々の姿に似せて生命を創り出した。


 人種の神は力を持たぬ代わりにその知恵を駆使して知性ある生命を生み出した。だが、魔力は乏しく力も脆弱だった為に比較的安全な平地に住む事を推奨した。


 ドワーフの神は力もあったが、その姿に似合わぬ器用さで知性ある生命を生み出した。力も有り金属物に興味を示した為山に住む事を推奨された。


 エルフの神は生命の樹を中心に据える事で知性と長大な寿命と精霊の加護を獲得させる事に成功した。故に生命の樹を護る役目を与えて森に住む事を推奨された。


 魔族は大きな魔力とドワーフ程てはないが、強い力、エルフ程ではないが長い寿命を得る事に成功したため過酷な環境である荒野に住む事を強制された。


 ハーフリンクは力も人種並、魔力も少なく身長すら人種に及ばなかった為に誰も知らない場所に隠れ住む事を義務付けられた。


 そして、龍の神は致命的に不器用で遂には知性ある者を創り出す事は出来なかった。随分と頑張って色々な龍種を創り出したが知性と言う物は全く芽生えなかった。


 諦めた龍の神は一人の人種の美しい娘に恋をした。猛烈なアプローチの末、条件付きで受け入れて貰えた。


 一つ、自分が生きている限り人の姿で暮らす事。


 二つ、お互いを伴侶とする者に名付けをし、けして裏切らない事。


 三つ、同性の場合は盟約を結び破棄されるまでお互いを護る事。


 四つ、此れをお互いの信用の証とし、子々孫々に伝える事で友好を結ぶ事とする。


 それから龍の神は娘を伴侶とし、息子二人と娘一人に恵まれ国を興した。


 龍の神はそれはもう働いた、人種の為にも豊かな国造りに邁進し、50年以上の歳月を経て遂に伴侶になった娘が他界した。


 其れを期に第一王子に跡目を譲り悲しみを癒やす為に龍の神は人も辿り着けぬ山頂へと姿を隠し長い眠りに着いた。


 それから千年以上経って盟約の内容すら人種の記憶から消え去った頃、人種が龍種を追い出しに掛かった。


 龍種は国を興した一族故に王族、貴族に広く広まったが、長大な寿命な為か、その数も100人を少し超えた程度しか居らなんだ。


 人種の上に龍種が君臨する事に我慢が出来なくなった人種は反旗を翻し龍種を完全に追い出して国を人種だけの国にしてしもゔたのじゃ。


 龍種は人種に関わる事を辞め、龍の神の眠る山に里を造りひっそりと暮らす事にした。じゃが、人種の国の方は長くは続かなかった。龍種と言う魔物からの護りを失い数年であっさりと滅亡してしもうた。


 僅かに生き残った者たちがどうなったかは分からん。他の人種の国に帰属出来たのか、果ては野垂れ死んだのかは神のみぞ知る事となったのじゃ。」



 昔話どころか、創世記の話じゃないか。龍種はそんな昔から生きているのか。

 いやしかし、クルルの名付けに纏わる話も聴けた。成程神との盟約の中に一族を縛る文面が有ったとは。


 龍の神も後々こんな呪いめいた事になるとは思わなかったんだろうな。


 「話は分かりました。ククルは連れて帰ります。」


 「おぉそれでは!」


 「但し、ククルが怠惰を極め、依存するだけの穀潰しに成り下がった暁には熨斗を付けてお繰り返します。」


 「流石にその様な事になった場合は仕方あるまい。」


 「あと、確認なのですが、近くに居れば婚姻の有無は何時でも良いのでしょう?」


 「まぁ、そうじゃな。仮にレン坊が20年程待たせても問題は無いはずじゃ。要は子を成せば盟約は護られる。」


 「そこ迄待たせる気は無いですが、今後のククルの姿勢を見て決める事にします。」


 「今はそれで良い、有り難う。」


 「では、待たせてる人も居るので帰る事とします。」


 大爺様は立ち上がると窓から外を眺め待ったを掛ける。


 「レン坊や、今日はもう遅い、明日の朝出立すると良いのではないか?」


 窓から外を見ると、とっぷりと宵闇が広がっていた。


 「そうですね、ではスイマセンが今夜はお世話になります。」


 「ならば、急いで夕食を用意させよう。」


 勢い勇んで駆け出そうとする大爺様に釘を刺すのも忘れない。


 「無駄に豪華にして披露宴だなんて言ったら全てを灰にして帰りますからね。」


 ピタリと動きが止まる大爺様。やっぱり外堀埋める気で居たのかこのジジバカは。


 まぁ、この世界に祖父なんて居たらこんな感じになるのかな?困り者だが退屈はしない。





作者の父もジジバカでした。

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