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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
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ククルと大爺様と龍種の都市



 「本当にあったよ……しかも、こんなに。」


 ククルの案内で洞窟の奥まで暗闇茸の採取に来ていた。子供の頃から遊び場にしていたと言うだけあってククルは中の地理には詳しく、丸一日以上を覚悟していた工程を僅か半日程度で暗闇茸の群生地まで連れて来てくれた。


 普通なら暗闇茸は洞窟の光も届かない場所にこぶし大の物が一個か二個あれば上々なのだが、洞窟の最奥まで来ると環境が良いのか広間一面に群生していた。


 ベルフェ王には先に説明していた通り、光が当たると途端に効能を無くしてしまうので、ベルフェ王の暗視の魔法で確認している。


 ベルフェ王が自信を持って掛けてくれた様に、猫の暗視みたいに目が光るのでは無く、明暗反転の魔法だそうだ。


 つまり、光の当たる所では暗闇にしか見えないそうだ。何とも不思議な光景だったが、そのお陰で安全に暗闇茸を採取出来た。


 専用の容器の中にある効能を抽出する薬液の中に浸せば約三日程度でアムリタの成分に必要な薬剤が出来上がるだろう。


 ストレージに入れると時間が止まってしまうので、今は容器を二本ずつ入れられるリュックに入れて各自が背負っている。計六本此れだけあればアムリタを作ってもその数倍のエリクサー等も作る事が出来るだろう。


 「此処は遊び疲れた時にやって来てオヤツ代わりに茸を焼いて食べてたのです。体力も回復するし、多少の怪我も治るし腹も満たされるので人気のスポットでした。」


 「オヤツ代わり……成程。」


 物凄く勿体ない感がしないでも無いが、そこは種族で価値感が違うと言う事で納得するしか無いだろう。


 「伝説を超えた秘薬の材料がオヤツ代わりとは龍族は凄いねぇ。」


 其れを聞いたククルは突然オロオロしだす。


 「あ、あの、我は何か物凄くとんでも無い事をしてたのでしょうか?」


 「いや、気にしないで良いよ。君達のオヤツ代わりがとても有用な物だと発覚しただけだし、多分此処まで採取に来れるのは僕だけだろうしね。」


 喧嘩を売ってきた時の威勢はすっかり鳴りを潜めククルはシュンとした面持ちで泣きそうな顔をしている。


 「だから気にしなくて良いんだよ。こうして無事に採取も出来ているし、何も問題は無かったんだから。」


 ククルの頭をポンポンと撫でてやって慰める。背はククルの方が大きいので全く格好が付かないが。


 「いやぁごめんね。何か余計な事を言っちゃったみたいで。」


 「良いんですよ。文化の違いみたいな物ですから、今後は食べ尽くさない様にしてくれると嬉しいかな?」


 ククルも泣きそうな顔から笑顔に変わり嬉しそうにしている。


 「何てお優しい、益々好きになりました。そうですか、取り返せる過ちなら笑って許せる心を持てと言う事なのですね。」


 間違ってはいないのだか、別にククルやその仲間が過ちを犯した訳でも無いので少しだけ訂正して置く。


 「別にククルが過ちを犯した訳では無いんだよ。ただ有用だから大事にしてねってお願いだから。」


 「分かりました!我は着いて行くので護る事は出来ませんが、弟分や子分達に言い付けて置きます。」


 ククルの気性を考えると子分も反発心旺盛な気もするから不安になるけど、まぁ無くなったら無くなったでその時考えよう。


 「じゃあ出ようか、大爺様も待っているだろうし。」


 「はい、アナタ。」


 アナタは止めてほしいけど、大爺様を問い質すまでは我慢だ。そりゃククルは年の頃は18歳程の超が付く程の黒髪黒目の美少女だけれども、前世が日本人だったのも手伝ってかなり親近感が湧く。


 だから"アナタ"呼ばわりを許してる訳じゃ無いけど…無いと思いたい。モジモジしながら服の端を摘む様に引っ張るのも可愛さ倍増なんだけど、初遭遇がアレだったから今一違和感が半端無い。


 あれか!?強気な女の子を屈服させると惚れられて途端に可愛くなると言う前世でも伝説的な恋愛漫画的な。


 何はともあれ大爺様に彼女の変化の切っ掛けだけでも聞き出さないと。考えられるのは……。


 一、名付けをするとで婚姻の申込みとみなされる。

 ニ、力で屈服させると問答無用で嫁入りする。

 三、単に惚れたからなし崩し的に押し掛け女房になろうとしてる。


 何方にせよ前途多難には違い無い。


 「いやぁ私なんか二人の睦まじさに空気な状態だねぇ。イヤイヤレン君も隅に置けない。」


 空気になるんじゃ無く、空気読めよ……イカンイカン、思考が好戦的になってる。此処は心を落ち着けて冷静にならねば。


 「嫌だなぁベルフェ王、あまり誂わないで下さいよ。」


 「レン君、笑顔がぎこちないよ何処か悪いんじゃないかい?」


 「大丈夫、大丈夫、ちょっと今の状況に慣れて無いだけですよ。」


 「そうかい?なら良いんだけど、早く慣れると良いよ。」


 「「ハッハッハッハッハッハ。」」


 「我は何か致命的に逆鱗に触れそうで触れない感じがします。」


 ククルはどことなく怖い物を見る目で後退る。

 その認識は正しい、ベルフェ王は切れそうで切れない限界を見極めて誂っているのだから。


 ってか、打ち解けたのは良いのだろうけど、ベルフェ王も中々良い性格をしている。今迄のは外交用の顔だったのだろう。


 「もぅ、いい加減用事も終わったし、出ましょうか。」


 「そうですね。」


 ベルフェ王にそっと近付き小声で話し掛ける。


 「サリシャさんといい、兵士の方々といい、そしてククルといい何か変じゃ無いですか?」


 「変とは?」


 「仮に幾ら見た目が良かったとして、食べるのに困らなかったとして強くても子供に求婚するのは大人としてオカシイとは思いませんか?一人二人なら兎も角、出会ったほぼ全員がですよ。」


 「確かに異常な事態かも知れないが、全てが揃っていると納得もしてしまうんたよね。」


 「僕は何か作為的な物を感じてしまうんですよね。勿論彼女達の気持ちは嬉しいし疑う事も有りませんが、何かによってそう思わせる程の何かがあるのかも知れないとも思ってしまうんです。」


 溜息を吐きながらベルフェ王はこうも恋愛に対して頑なに敬遠するのは何故だろうと考える。普通のこの年頃の男の子は年上に恋しがちだし、喜んで自惚れるものだが。やはり前世では結構な年齢まで歳を重ねた経験なのだろうか?自分も50年程と魔族の中では年若いが、未だに年若い女性から求愛されれば口元が綻んでしまうのを隠せない。


 流石に妻子ある身で、しかも国王であれば早々簡単に想いに応える事は出来ないが、相手次第では側室に迎える事も出来よう。


 しかし、レンは王侯貴族ではないし、例え嫁候補が年上の女性だろうと何人居ようと迎え入れるだけの財産と器量も持ち合わせている筈だ。


 だが、言われて見て初めて此れが異常な事態だと認識出来た。確かに女性であろうと子供に求婚する等尊厳もかなぐり捨てた異常行動と言えなくも無い。


 ひょっとすると何か神がかった力か呪いの類いを疑って見ても考え過ぎとは思わない。


 「レン君、一度魔族の国でも人種の国でも構わないから教会を訪れる事をお勧めするよ。もしかしたら何か手掛かりがあるかも知れない。」


 「教会へ?僕は信心深い方では無いのですが、何かあるのですか?」


 「自分のステータスはある程度見る事は出来るのだろう?教会にはあるアーティファクトを用いて隠されたステータスが無いか確認出来る物があるんだ。小さい教会じゃ無理だが、大きな教会が存在している都市なら必ずある筈だよ。」


 「隠されたステータス何てあるんですか?」


 「例を上げると、隠蔽された呪いや加護が偶にあるし、人のステータスでも全ての能力や細かい部分は普通じゃ分からない。大部分は統合されて表示されているからね。」


 「成程……。」


 言いたい事は何となく解る。例えば運が良いと言っても金運が良いのか勝負運が良いのか分からないし、異性運かも知れない、運の要素一つ取ってもその可能性は多岐に渡る。


 幾ら金運が良くても、街から街への移動の最中にあっさり魔物に殺されて終わる事もエルフの里では話題になっていた事もある。


 逆に中々陽の目を見ない商人が信じられない位九死に一生を得る事態に何度も遭遇する話もあった。多分そう言う事なのだろう。


 況してやこの身体は女神が用意した物、何らかの異常なステータスが隠されて居ても不思議じゃない。此れは教会に赴いて確認して見るのも良いかも知れない。


 隠れたスキルで魅了などあったら彼女達が正気に戻った時に傷付くだろう。


 皆の安寧の為にも僕の平穏の為にも確認作業は必要だろう。てか、最近やる事も問題もてんこ盛りだなぁ。









 「おお帰ったか、どうじゃった?」


 龍族の長である大爺様がさも嬉しそうに街の入口で出迎えてくれた。どうやら街では人型形態で居る様だが、入口で門番をしている二人からは一種の敵愾心めいた視線を感じる。


 ククルが前に出て片膝を点き大爺様に報告をする。


 「お祖父様…いえ、大爺様。私ククルの案内に置いてレン様のご用事を完遂致して参りました。」


 「おぉ、オヌシ名を……レン殿か?」


 「はい、レン様に名付けを賜りました。」


 「そうか、そうか、すっかり立派になって、あの奔放で若い衆の頭をしていた様にはとても見えん。」


 「止めて頂けますか大爺様、レン様が聞いています。」


 頬を紅く染めてモジモジしながら嘆願するククルはとても話に聞いていた暴れん坊なイメージとは掛け離れた深層の令嬢もかくやと言う程の可愛らしくも女性としての色気に溢れていた。


 何やら門の中にも聞き耳を立てていた者が多数感じられる事から大爺様は外堀から埋めていく方針の様だ。


 ククルに並び大爺様に進言する。


 「大爺様、後で二人で話があります、お時間を少々頂けますね?」


 流石に年の功なのか、"あ、これヤバいかも"と言った顔をして断ろうとする。


 「い、いや、ワシもこの後色々と用事が……あ〜。」


 「よ・ろ・し・い・で・す・ね!」


 「う、ウム。」


 少しだけ怒気を孕んだ声で再度尋ねると大爺様も観念したのか項垂れる様に承諾した。全く何を考えているのやら、いや、大凡検討は着いているが、遣り方が気に入らん。


 しかし、この時はまだククルを巡る波乱が待ち受けているとはまだ誰も知らなかった。



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