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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
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採取の旅路  出発 〜ベルフェ王サイド〜



 レンとベルフェ王は霊峰へと一直線に飛び続けている。


 「ベルフェ王、霊峰までは最速で飛んで行っても丸1日は掛かりますから焦らず休み休み行きましょう。」


 「そうしてくれると助かるね。正直レン君程の速度で飛び続けるのは少々しんどい。」


 時速にして100km程だが、こっちの基準では充分に速いのだろう。


 時速100kmでならその日の内に着くと初めて向った時は思ってました。

 

 とんでもない勘違いだと気付いたのは霊峰へ一日飛んでも着いたのが次の日の朝だった時だった。


 その時は日の出から日暮れまで飛んでろくに休まず飛んだが、疲れて速度が落ちている事も考慮しても相当な距離になる筈だ。


 計算すると、100km✕24時間=2400km となる。

 当時はどれだけこの森は広いんだよと嘆いたものだが、今居る拠点も元の草原から200kmは離れている筈で、盆地な上に歩いて一時間の距離に入江があるのは僥倖だった。


 さて、二時間毎に休みを設けて、昼食や夕食等の時間を設け、夜は休むとなると、一日に移動出来る距離は800km程となり、速くて三日目の夕刻、遅ければ四日目の午前中になるだろう。


 「レン君、ドラゴンが居るよ。御土産に狩って行くかい?」


 「はぐれですかね?霊峰に近いなら兎も角、この短期間に三体も彷徨いているのはおかしいんですけど。」


 普段ドラゴンは霊峰の麓や中腹付近に生息している筈で、獲物を追っているにせよ此処まで移動してくるのは明らかに変だ。


 取り敢えず狩れる時に狩って置くか。

 上空から一気に降下して不意打ちで首を切り裂く。恐らくドラゴンも痛みも無く視界がブラックアウトして事切れた事だろう。


 「相変わらず見事な手並みだねぇ。出来ればその一体は私に売ってくれないかね?」


 「いえ、何ならプレゼントしますよ。」


 「レン君、気持ちは嬉しいけどそれはいけない。君には簡単に狩れる獲物かも知れないが、世間一般的には滅多に出回らない貴重な素材だ。対価はキチンと受け取るべきだよ。」


 「そんなものですか、なら買い取って下さい。」


 「ウンウン、素直なのは美徳だけど、人は選んで使い分ける様にね。」


 「ベルフェ王危ない!」


 ベルフェ王が浮いていた場所に突然火球が飛んで来た。間一髪回避に成功したようだが、無理な姿勢制御だったのかベルフェ王は森の中へと墜落してしまった。


 火球の飛んで来た方を見ると、低い唸りを上げながら此方を睨みつけてる五つの首が木々の間から覗いていた。


 「ヒュドラが何でこんな場所に……。」


 ヒュドラは湿地帯に生息する魔物で、動きこそ早くはないが非常に再生力が高く、また、複数の首を持ち其々の首は属性の異なるプレスを放つ事が出来る厄介なドラゴン族だ。


 地竜同様知性こそ無いが、レン一人で討伐するには手数が足りなく、魔法も其々の得意とする属性の首が防御に廻るので非常に当て難い。


 「こんな事なら首を潰し易い大剣でも用意しとくべきだったな。」


 苦々しく呟くが、無いもの強請りしても仕方が無い。だが、実際レンの小太刀では長さが足りなく一撃で首を落とさなければ直ぐに再生しまう為に延々とイタチごっこをする事になるのは分かりきっていた。


 魔法攻撃ならば同属性に当たっても力押しで倒す事は出来るだろうが、同時にベルフェ王も巻き込む恐れがある。


 索敵魔法でベルフェ王の位置を確認すると、どうやら別の個体と戦っているらしい。


 無事なのを確認出来てほっとするが、益々此処まで色々な魔物が密集しているのは何者かの作為を感じる。


 戦いながらもこの状況を打破する手を考える。ベルフェ王を巻き込む可能性があるなら、巻き込まない所まで離れる事が肝要。


 ヒュドラを始めあらゆる魔物が耐えられない、又は、持ち合わせていない属性の攻撃が必要。


 先ずは、付近の魔物を集める必要がある。


 集魔魔法『アトラクティング・ボイス!』レンが唱えたオリジナル魔法の後から、乙女な見た目からはけして聞きたくない重低音な叫び声が鳴り響く。


 今までその辺を闊歩していた魔物が何かに呼ばれる様にレンを目指して集まり始める。


 半径1kmからベルフェ王が外れた辺りで上空へと飛び上がり、魔物が集まっているのを確認して次の魔法を地面に向けて解き放つ。


 重力魔法『ギガ・グラビティ!』


 きっかり半径一キロの円形に重力異常を起こし魔物も木々も関係なく重力で全てを押し潰す。

 この魔法の恐ろしい所は、時間と共に重力が倍々に増えて行く事。


 どんなに屈強な魔物であろうと、如何に再生力が高かろうと身体の全ての血流までもが重力によって機能不全を起こせば生きてはいられないだろう。


 魔法の効果が終わり辺り一キロ四方が円形に地均しされた様に潰れた魔物で埋め尽くされている。


 ベルフェ王も疲れただろうし、今日は此処に簡易拠点を設えて休むとしようか。


 先ずは魔物の死体を片付けてからだな。辺り一体に潰れた肉が散乱している光景とはかなりシュールだと思った。多分前世のテレビ等で放送されれば画面一杯のモザイクが映る事だろう。


 「おーい、レン君!」


 見晴らしが良くなった円形広場を飛びながら近付いて来るベルフェ王。


 「無事で何よりです、ベルフェ王。」


 「凄まじい威力の魔法だね。成程、以前辺りへの被害が尋常じゃないと言うのは本当だったんだね。

 実際に目の当たりにするとその凄まじさが良く解る。」


 「最近はレベルアップも緩やかだっんですが、今回ので一気に15も上がりましたよ。」


 「そりゃ大小合わせて此れだけのドラゴンを倒せばねぇ。」


 「潰れたドラゴンの処理も考えて、今日はこれで夕飯を作って見ましょうか。」


 ベルフェ王も一瞬嫌な顔をするが、仕方無いと言う顔で了承してくれる。


 「寧ろこの方が血抜きは楽に出来そうですよ。」


 粗方片付けた肉の中から血抜きし易そうなドラゴンを選んで吊し上げ、首元を切り落とす。


 ドバドバと物凄い勢いで抜けて行く血液に流石のレンを鼻を摘まざるを得なかった。


 「流石に臭いが何時もよりキツイですね。肉も潰されてるし……おぉ柔らかい……これはあれと……。」


 此れからあれを食べるのか、と溜め息を吐きながらベルフェ王は用意されたロッジに引っ込む事にした。





 予想に反して夕飯のメニューは絶品だった。


 「ドラゴン肉のハンバーグに、ドラゴンの骨で出汁を取ったスープ、ドラゴンソーセージ、付け合せの野菜とフルーツです。」


 会心の出来とばかりに嬉しそうに微笑むレン、見た目だけなら稚妻が得意の料理を披露してる様に見えるだろう。


 【男の子なんだよなぁ…これが。】内心で残念に思いながらもレンの料理に舌鼓を打つ。


 誰にも言ってないが、ベルフェ王も既に妻子が居り年の頃もレンと同じ位の娘が居る。

 何故紹介しないのか?と疑問もあるだろうが、ベルフェ王にも複雑な心境もあるのだろう。


 「ところでレン君、ドラゴンを一掃した魔法は見た事も無い魔法の様だけど、どんな魔法だったんだい?」


 聞かれたレンが"え?"って顔で驚いている。


 「何って四元素魔法上位の重力魔法ですよ。若干改良を加えてはいますが。」


 それを聞いたベルフェ王はまたも頭を抱えてしまった。


 さもあらん、普通の重力魔法は精々半径1.5m程度から広くて2m位だ。効果も二倍程の重力増加で本来は足止め用の魔法である筈。


 それが何処の世界に半径一キロもの広範囲に渡りドラゴンを押し潰す程の重力魔法を行使出来る化け物が居ると言うのだ。


 いや、目の前に居るが……。


 「ドラゴンは兎も角、木々はバキバキに折れてしまって木材としては使えませんね。冬迄に乾燥させて薪にしてしまいましょう。」


 そんな事は心配していないのだが、薪にするならアケーディア国で買い取らせて貰おう。

 国内は荒れ地が多く、必要な穀物すら中々育たない。


 当然の様に暖に使える薪など高級品で、各家庭等は魔導コンロなる物を国が半分資金を出して持たせている。


 動力の魔石も魔族のハンターギルドから国が買い取りなるべく安く復旧させているのが現状だ。


 いっそレンに相談して国家事業に巻き込んでしまおうか悩むが、このお人好しで静かな生活をこよなく愛する子供をそんな事に引き込むのは躊躇せざるを得ない。


 「因みにレン君、家の敷地にある畑はどれ位の野菜が採れるんだい?」


 「あ、気に入って貰えたなら譲りますよ。毎年数十トン単位で余らせてるので、ストレージの肥やしになってるんですよ。」


 カラカラと笑って話すレンを他所にベルフェ王は【ある所にはあるんだなあ。】と悲しくなった。


 ベルフェ王も覚悟を決めた様な顔になり、レンに話しかける。


 「恥を承知でお願いしたい、我が国の食料事情を救ってはくれないか。勿論報酬は出来る限り用意させて貰うが、小国故満足頂けるか分からない。

 だが、国民を飢えさせる事が無くなるなら私に出来る限りの事はさせて貰おう。」


 目をパチクリさせて理解が追い付いてないレンの様子に不安になるが、やがてレンの笑顔と共に了承を得る事が出来た。


 少しだけ肩の荷が降りた面持ちでベルフェ王はその日久々に気持ちの良い眠りを貪る事が出来たのだった。







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