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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
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採取の旅路  出発 〜ゲイズサイド〜



 「おはよう御座います。いよいよ採取に赴くのですが、目的地の最終確認をして置きます。

 門を出て真北に向えばアンブロシアの自生している山に到着出来ます。道中魔物にも遭遇すると思いますので気を付けて下さい。」


 ゲイズ、カイル、サリシャには以前に渡した揃いのブルーリザードの防具がある。手に負えない魔物が現れても、同行するアリスが居れば逃げるくらいは出来るだろう。


 「なーに、ちょこっと行って集めて来るから安心してろって。」


 「寧ろ旦那様の方が危険が一杯、霊峰には古龍の巣があると聞いている。充分に気を付けて欲しい。」


 気軽そうに振る舞うゲイズの気遣いを他所に、サリシャは心底心配と言う心境を身体一杯に表現する。


 「パトリシアさん、他の皆さんもアルリシアさんの介護を宜しくお願いします。」


 「本来なら立場が逆なのでは?物凄く複雑な気持ちですが、了解しました。」


 言われてみると確かに依頼者が安全な所で朗報を待ち、兵士さん達の様な戦闘職の人が採取に向かうのが普通の在り方なのだろう。


 依頼内容が留守の間のアルリシアの介護なのだから間違ってはいないのたが、やはり心境としては複雑なのかも知れない。


 レンも苦笑いを浮かべつつも"お願いしますね"と頼んで早々に離れた。


 何か言いたそうなアルリシアの方を横目で見て出かけようと振り向いたら。


 「ちゃ、ちゃんと帰って来なさいよね、私の傷を治す為にあんたが死んじゃったら寝覚めも悪いし。」


 「大丈夫ですよ、ちゃんと帰って来ます。治った暁にはまたご馳走を作りますから楽しみにしてて下さい。」


 安心させる様にニッコリと微笑んでベルフェ王と共に空へと飛び立って行った。


 「なんでよ……何で何で何であんなに可愛いのに男前な事を言うのよぉぉぉぉぉぉぉ!」


 将来は絶対に女誑しになるに違いないと見えなくなった空を睨みつけて叫んだ。










 「飛んで行けるって羨ましいね。」


 レンとベルフェ王が揃って飛び去った方向を見上げてカイルが呟く。


 「仕方無いだろう、俺達はえっちらおっちら歩いて行くしか無い。それで無くてもこっちの方が近いんだ、これで文句何か言えた義理じゃ無いだろう。」


 「ゲイズが手伝うとか言わなければこの森を歩く事も無かった。」


 さも不満ですと言う様にサリシャがボソっと呟くが、しっかりと聴こえてたゲイズがサリシャを嗜める。


 「するってぇと何か?サリシャは坊主に無駄飯喰らいの役立たずと思われたいと?

 危ない所を助けられ、装備を新調して貰って長々とタダ飯食わせて貰って恩の一つも返さない積りだったのか?」


 自分の失言にバツを悪くするサリシャ。


 「それに、今回の手伝いを見事にやり通せたらレンの坊主もサリシャを見直すんじゃねぇか?」


 ゲイズの話を聞いたサリシャの頭の中では到底あり得なさそうな妄想が膨らんでいた。


 〔此れは見事なアンブロシアの根株、サリシャさんが見つけてくれたんですって?

 凄いです!是非お嫁さんに来て下さい。大丈夫です、此処に住めば食べる事には事欠きませんし、水晶鹿の角や近くの山で採れる宝石類もプレゼントしますので。〕


 見事な迄に自分に都合の良い妄想なのだが、ゲイズもそこ迄は言ってない。

 あくまで妄想なので、口に出さない限り他人が訂正してやる事も出来ないだろう。


 「サリシャ、流石にレン君が結婚を申し込む事は無いと思うよ。」


 「カイル、いつの間に心を除き見る魔法を覚えたの?」


 「んな訳あるか!全部口に出してたぞ。」


 サリシャの妄想はしっかり口に出してた様だ。


 「今更だが、良くもまぁそこ迄都合の良い妄想を膨らませられるな。」


 「ゲイズ、乙女の夢を笑うから女にモテない。」


 「へぇへぇ、悪うございましたよ。まぁ無理もねぇか、漸くサリシャの御眼鏡に叶う相手が現れたんだからな。惜しむらくは子供だったって事か。」


 Bランク冒険者だけあってサリシャもそこそこには強い。

 流石に宮廷魔導師になれる程の器用さは無いが、そこいらのチンピラ風情が太刀打ち出来る様な相手では無い。

 レンの強さを見ている者には然程強そうには見えないだろうけど。


 ゲイズ達も忘れそうになっているが、殿を務めるアリスがその様子を笑顔で見つめながら周囲の警戒にあたっている。


 いや、主より賜ったヴァルキリーシリーズの装備を時々撫で回したりしているので、多分会話に混ざらず悦に入っているのかも知れない。






 ゲイズ様、11時の方向より接近する反応が有ります。


 「姉ちゃん凄えな、警戒しろ。イービル・ボアだ!」


 飛び出して来たイービル・ボアの突進をバックラーで受け止めようとしたら、バックラーが突然縦長に変形してタワーシールドになって地面に突き刺さりイービル・ボアの突進力を完全に吸収仕切った。


 「オイオイ、何だこの盾凄え何てもんじゃねぇぞ。」


 驚くゲイズの横からイービル・ボアの横へと飛び出して首筋に鋭く剣を突き出したのはカイル、ボア系統の魔物は毛が長く丈夫なので、斬るよりも突き刺す攻撃の方が通り易い為だ。


 暴れるボアからゲイズとカイルが飛ぶ様に後退すると、サリシャのファイアボールがイービル・ボアの顔面に炸裂する。


 首からの出血と顔面を焼かれて酸欠になったボアも力尽きて倒れた。


 イービル・ボアの死亡を確認したカイルが盾の性能に驚いていたゲイズに駆け寄り興奮した様に捲し立てる。


 「こっちの剣も凄い切れ味だったよ。多分斬り掛かっても致命傷だったんじゃないかな?」


 「私の杖も魔力の通りが段違い、大きさは一緒だけど、熱量は格段に違うはず。」


 レンから貰った装備の性能に驚愕する三人。


 「皆さん素晴らしい連携でした。」


 パチパチと手を叩きながら称賛の言葉を浴びせるアリス。


 「有り難うよ。けど、坊主から貰ったこの装備あってこそだ。

 以前の装備だったらこうは行かなかっただろうな。」


 「主様は良い装備は良い遣い手に渡ってこそ真価を発揮すると仰ってました。

 その装備も皆さんだからこそ活きるのでしょう。」


 柄にもなく照れるが、褒められて悪い気がする訳もなく三人共照れ笑いで応えるしか無かった。


 「此れの収納頼めるか?時間を掛けても構わないとは言われているが、今日中に麓の近く迄は行って置きたいからな。」


 「焦りは禁物ですが、確かにあまりゆっくりしても危険が増すだけてすからね。焦らず急がず迅速に行きましょう。」


 「これなら行ける!自信が付いた所でさっさと行くか。こりゃ坊主には感謝しかねえな。」


 「あはは、確かにもう足を向けて寝れないね。」


 ただサリシャだけがアリスを見詰めて話さない。


 「アリスさんは旦那様の事をどう思っているの?」


 サリシャがアリスに対する素朴な疑問だった。





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