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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
19/33

採取の旅路  前夜 



 翌朝早速散髪を始めたアリス。


 「主様、散髪に必要な道具がこのナイフ一本ですか?」


 「はい、スミマセン……。」


 「主様に入力して下さったデータベースには散髪用の様々な道具も入っていますが、何故お作りにならないので?」


 アリスは怒っていると言うより呆れていると言う方が勝っているのだろう。

 

 「いや、以前は盗賊から奪取した剣や斧を鋳潰して一通り揃えたのですが、何故か一年も経たない内に錆びだらけで切れ味も悲惨な事になるので、その内ナイフ一本で良いやと……。」


 「フゥ…そう言う所だけは男の子なんですねぇ。」


 「チョット待って、それ以外は女の子って言われてる様に感じるのは気の所為?」


 ニタっと嫌らしい笑みを浮かべるアリス。


 「あらぁ?見た目は"美少女"で"お料理"も上手で"屋敷の中は何時も綺麗"にしてて"裁縫"も出来て、尚且皆さんにはとても優しい主様は男の子らしいと?」


 うぐっ!そう言われると男の子よりも女の子寄りな気がしないでもないが、認めるとトコトン女の子扱いされそうなので認める訳には行かない。


 それに、屋敷が綺麗なのは浄化の魔法陣のお陰であって、逐一掃除をしている訳では無い。


 「でもまぁ理由は分かりましたので、道具は鉄では無くミスリルで造って下さいますか?主様なら物の数分で造り上げる事が出来ましょう?」


 「分かったよ、かなり贅沢な道具になるけど、それしか無いしね。」




 〜十分後〜


 「取り敢えずはトリミング鋏と櫛、後は剃刀だけ作ったよ。」


 「十分です。では、散髪を始めますので其処にお座りになって下さい。」


 シャキシャキと心地良いリズミカルな音が室内を支配する。


 「はい、では髪を洗いますので此方に横になって下さいね。」


 言われるがままに隣に用意されていた寝台(日本に居た時に見た診療台の様な物)に仰向けに身体を横たえる。


 「はい顔に蒸しタオルを乗せますね。熱かったら言って下さい。」


 データベースの中にあっのだろうか、非常に手際が良く気持ちが良い。

 蒸しタオルも丁度良い熱さで顔中の毛穴を大開放する様な心地良さ。


 頭皮を洗い始めると、強過ぎず弱過ぎず巧みな力加減で眠気を誘う様な、まるで前世の女性が通い詰めていたエステサロンもこんな感じだったのだろうか?


 い、イカン!このままでは本当に眠ってし……ま……グゥ……。


 「痒い所は御座いませんか?…主様?……あら?」








 「あぁアリスさん、おや、レン君は寝てしまったのですか?」


 レンを抱き抱えたまま微笑んで人差し指を器用に口元で静かにする様にジェスチャーすると、レンの自室のベッドに寝かせてから静かに扉を閉めた。


 「すいませんベルフェ王、何かご用事でしたか?」


 「いや、何。明日は霊峰へと一緒に向かうので防寒着になる様な物が無いか聞きたかったんだよ。」


 「それでしたら私めが御用意させて頂きますわ。」


 「それは助かる。是非お願いしたい。」


 「それにしても、レン君の散髪をしたのかね?美人度が益々上がってしまったねぇ。」


 沁沁と溜め息混じりに溢すベルフェ王にアリスが得意気に胸を張って誇らしげに語る。


 「主様の前世では男子は子供の内は女の子の格好をさせて育てると、逞しく健康に育つと言う文献があるのです。」


 「ほう、それは興味深いね。」


 「どう言った根拠があるのかは不明ですが、大人になるまでは実践して見守ろうと思います。」


 100%故事付けで自分の趣味の為にやっている事なのだが、文献に載っているのは本当なので責められる事は無いだろう。


 「では、お昼ごはんの前に用意してしまいますので、マントとコート何方が良いでしょうか?」


 「出来ればコートでお願いしますよ。」


 「分かりました、では失礼しますね。」


 やれやれ、彼女の趣味も随分と意地が悪い。とはいえ、レン君の魅力を最大限に引き出したいと思っての事は理解出来るので諌める事も出来ない。

 況してやお邪魔してるだけの客人の立場では言い難いからなぁ。





 〜食堂〜



 「あっアリスさん、レン君は何処に居るか分かりますか?」


 「朝一番で散髪したのですが、気持ちが良かったのか眠ってしまいました。御用でしたら私が代わりに伺いますが?」


 「でしたら明日は登山になるのでザイルや登山用の靴等を貸して貰えないかと。」


 「靴は今履いているので間に合いますよ。それは地形に適した形態を取りますので、一々履き替える事が無い代物です。

 明日は私も同行しますので、必要な物は私のバッグに詰めて置きますね。」


 優しく微笑んで昼食の下拵えにキッチンに向かう後ろ姿に見惚れるカイルだったが、ゲイズとサリシャに今の内容を伝えに部屋へと戻る事にした。


 「アリスさんいいなぁ。」


 多分叶わぬ恋だろうが、想うだけなら自由である。







 あれ?何で寝てるのかな。うーん、何かアリスに散髪をされてた様な気がするけど、ベッドに居るって事は夢?だったのかな。


 カーテンを開いて外を覗いてみると、太陽は既に天辺へと辿り着きそうになっている。

 うわぁもうお昼じゃないか、早めにアリスの装備を準備してやらないと。


 「アリス居る?寝坊してゴメン、そろそろ装備の合わせをしようかと……。」


 「キャーーーー!!!」


 何事かと思って眼を見張ると、叫び声を上げたのは女性達で何故か皆が皆此方を見ている。


 はっと思い、服装に変な所が無いか確認、顔中ペタペタ触っておかしな所も確認出来なかった。


 唯一アルリシアが微妙そうな顔で此方を見ているので聞いて見るか。


 「アルリシアさん皆何で僕を見て叫んだか分かりますか?」


 「鏡を見れば解るんじゃない?」


 「すいません、此処には鏡は無いんですよ。」


 「えーあんたなら鏡くらい簡単に作れるんじゃないの?」


 「何度か採掘に行っているんですけど、純度の良い銀が採れなくて独り暮らしだったし、まぁいいかと作って無いんですよね。」


 「盗賊から奪取した銀貨は使えないの?」


 アルリシアからの思わぬ提案に"その手があったか!"とポンと手を叩く。


 「貴方凄いんだけど、時々凄い抜けてるわよね。」


 しみじみ可哀想な子を見る目をしないで下さい。


 「主様、もうお昼なので手を洗って席に着いて下さいね。」


 どうやら昼食の準備が出来た様だ。


 「時間が無いので、全てが落ち着いてからですね。」


 「貴方がそれで良いなら良いんじゃない?」


 アルリシアの引っ掛かる言い方も気になるけれども、明日からは採取に行かなければならない。


 昼食を摂ったらアリスの装備を換装して、工場に赴いて小型の拠点型テントをつくらなければならないので、やる事はてんこ盛りなのだ。


 ロッジは人数の多いアリスに持たせようかとも思ったが、取り出す場所が山の斜面では、転がり落ちる可能性の方が高い。

 運良く安定しても傾いたままでは落ち着かないだろう。


 なので、以前から緊急用に造り掛けの空間拡張型のテントを完成させれば問題は無くなる。








 「アリス、ヴァルキリーシリーズ装備なんだけど、何処か緩かったりキツかったりしない?」


 腕を回してみたり、身体を捻って見たり動きに不具合が無いか入念に確認している。


 「大丈夫見たいです、動きが全く阻害されません。それに、軽くて装着感があまり無いのも良いですね。」


 「今回はあまり時間が無かったから、アリス専用装備はナックルガードと脛当て部分の強化だけで我慢して欲しい。」


 「いいえ、此れだけでも充分です。あら、強く握り込むとガードが拳の前に倒れるんですね。」


 手をグー、パーしながら具合を確かめている。


 「腕輪は手甲の上からでも装着出来るから、それはアイテムボックスになっていて薬や逃走用の煙玉等が入ってるから活用して欲しい。」


 「過保護ですねぇ。でも、御心配下さり有り難う御座います。」


 心底嬉しそうに微笑む彼女はとても産まれたばかりの人工生命体とは思えない。


 「アリスはもう僕の家族だ、家族を心配するのは当然だろう?」


 自分で言ってて少し照れるが、心配する気持ちに嘘は無い。


 「あら、それは将来の伴侶として見てくれていると言う事でしょうか?」


 アリスが腕を回しながら背後から抱き着いて来る。


 「アリス、手甲とブレストガードでとても痛いから止めてね。」


 「あら、それは失礼しました。では、一糸纏わぬ姿でもう一度。」


 「せんでいい!」


 堪らず腕を振り解いて腕から逃げる。


 「日が暮れる迄には拠点型テントも完成させて置くから、後で取りに来るように。」


 「畏まりました主様。」


 全く……あれでは普通の女性と変わらないな。

 自分で生み出した生命体が人と変わらぬ反応をするのが嬉しさ半分困るのが半分と言った所だろうか。


 前々世でも彼処まで完成度の高い人工生命体を造れていたのか疑問だが、心の底から誇らしい気分になれるのは彼女の成長のお陰だ。


 ならば存分に過保護になろうではないか。大事に大事に育て、いつの日か巣立つのを心待ちにするのも良いだろう。


 見た目は全くの逆なのが悔しいけど。


 さぁ、明日の準備も手早く片付けますか。





床屋で使っている鋏って正式名称分かりません。

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