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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
16/33

魔王の提案、ゲイズの申し出


 自らが主と仰ぐ者から咎められるのはやはり効き目があるのか、あれ程騒いでいた女性兵士達がピタリと動きを止めたかと思えば整列して敬礼を取った。


 ベルフェ王の一括とドラゴン肉のバーベキューの魅力で取り敢えずは彼女達の婚活を回避出来た………よね?


 正直眼を血走らせて鼻息荒く詰め寄られるのがこれ程恐怖を感じる物とは考えもしなかった。


 ベルフェ王が止めてくれなければ正直どうなっていたか分からないだろう。


 「全く、子供に求婚するなんて恥ずかしいとは思わんのか?」


 「で、ですが……これ程の高物件は。」


 「何かね?」


 「寿命は魔族の方が長いですし……後数年すれば。」


 まさか口答えされるとは思ってなかったベルフェ王もこめかみに青筋を浮かべ始める。


 「すると何かね?君達は如何に優秀な人物か分かれば、相手が成人もしていない子供であっても勢いで丸め込み嫁の座に転がり込むのも厭わないと?」


 「「「「うっ!」」」」


 自分達が如何に残念な婚活をしていたか再確認させられ言葉に詰まる女性兵士達。


 「兎に角、レン君に対する結婚云々の申込みは彼が成人する迄禁止とする。

 但し、レン君本人が是非にと言うのであれば婚約迄は許そう。」


 おおい、ベルフェ王!

 止めに入った筈のベルフェ王が、提示した妥協案に今度はレンが冷たい視線を送る事となった。


 「あ〜レン君が迷惑する様な露骨なアピールをした者は今後婚約すらも許す事は無いと思って貰おう。」


 あぁ、そう言えばつい最近にも似たような事があった様な気がする。


 「では、バーベキューの準備が整う迄は、先に着ているお客様と顔合わせをしたいのでお付き合い頂けますか?」


 「ほう、先客が居たのかい?それは是非とも挨拶して置かなければ失礼に当たるね。」






 「ゲイズさん紹介します、アケーディア国からエルフの里に救援に来てくれたベルフェ・G・アケーディア王とその配下の兵士さん達です。」


 「宜しく、今後とも見知ってくれたまえ。」


 片手を上げてにこやかな顔でフレンドリーな挨拶をしたベルフェ王以下5名を見たゲイズさんは、弾かれた様に椅子から立ち上がり僕の方へと非難の声を上げた。


 「何で突然魔族が現れるんだよ!」


 優雅に紅茶を啜りながらノンビリしている。どうでも良いと考えているのか、単純にレンに対する信用から落ち着いているのか判断は付かない。


 「ゲイズ、落ち着いて。ベルフェ王様なら大丈夫。

 人種と交流が僅かながらでもあるエルフを通じて国交を開こうとしている数少ない魔族の王だから。」


 成程、落ち着いているのはベルフェ王を知っていたからか。


 「サリシャ、何時もながら何処からそんな情報仕入れてくるんだよ!」


 「いやぁ、一応国家機密とまでは言わないけど、秘密裏に進めている計画なんだけどねぇ。」


 「ふっふっふ、蛇の道は蛇とも言う。」


 苦笑いで褒めるベルフェ王に表情の乏しい得意顔で応えるサリシャ。


 「しかし、エルフの里が襲われたとなれば、その計画も見送らなければならないだろうね。」


 怒りを噛み殺しながら言い放つベルフェ王を見てゲイズ達にも緊張が走る。


 「エルフの里が襲われたって?はっ数日前のあの黒煙は里が襲われて……。」


 「すいません。確かな事も分からないし、エルフの里に不用意に人種を連れて行く訳にも行かないので置いて行く事になりました。」


 「うん、まぁそう言う事情なら仕方ないね。」


 心の底から言っているのだろうカイルの言葉にゲイズ、サリシャも首を縦に振って同意する。


 「ですが、お陰で助ける事が出来た命もありました。アルリシアさん。」


 キュルキュルと音を立てながら多脚車椅子を操り部屋に入って来たのは、満身創痍と言うのも生温い程の酷い怪我の痕が伺える。

 左腕が二の腕辺りから無く、右足も膝の少し上にから喪失している。左目も包帯で解らないが、包帯の端から覗いている剣傷痕から刺されたか、斬られたのだろう。


 「何処のクソ野郎だ、酷え事しやがる。」


 「乙女になんて仕打ち……。」


 「レン君、僕の傷を治してくれたように、彼女の傷も治せないのかい?」


 其々に彼女に対する仕打ちに憤り心配し治せないかと心配する。良い人達だ、色々と世話を焼いたのは間違いでは無かったと確認出来る。


 「彼女を元の姿に戻す為に秘薬を作る積りです。ですが、材料が少し足りないので採取に行くつもりです。」


 「君の魔法では治らないの?」


 「僕は滅多に怪我をしないので、回復魔法の練度が全然足りないんですよ。部位欠損を治せるのは最上級回復魔法"リザレクション"のみです。

 ヒールしか使えない僕じゃまだまだ無理ですね。」


 「あれが只のヒール……。教会の神官のハイヒール並みなのに。」


 「回復魔法も要はイメージ力と魔力の高さで決まりますからね。」


 「イメージ?治る様に祈るんじゃないの?」


 「いいえ、傷がどの様に治って行くかをイメージするんです。これには人体の構造を熟知している必要が有ります。」


 「レン君は人体解剖実施者?」


 「いいえ、過去に人体の構造を追求した人が居ただけの話です。僕はその文献で勉強したに過ぎません。」


 質問攻めにしていたカイルも理解したが、納得していないと言う風に質問を続ける。


 「そこ迄人体に詳しいのなら、ヒールでも手足を治すことは出来るんじゃ?」


 「いいえ、ヒールで出来るのは言わば"修復"迄なんです。無くなってしまった欠損の"復元"は出来ないんですよ。

 もし、仮に無理矢理手足の復元をヒールやポーションで行えば、体中の細胞や栄養素を枯渇させ死に至るでしょう。」


 流石のカイルも得られた回答に空恐ろしい物を感じたのか、黙り込んでしまった。


 「では旦那様、その秘薬の効能とは?」


 「結婚してないのに旦那様はやめて下さい。でも、いい質問です。

 僕が造ろうとしてるのは、"アムリタ"と言う秘薬で、欠損に必要な栄養素を充分に含み、細胞の活性を促して欠損部位を復元させる物です。」


 「その細胞って何?」


 この世界には魔法があるからそこ迄医学が発展していないのか?確かに魔法で病気も怪我も治せるならば、人体の構造も目に見える範囲しか把握出来ないのかも知れないな。


 「細胞とは、生物の身体を構成している物で、生き物の最小単位とも言うべき生物ですね。」


 「オイオイオイオイ!すると何か?俺たちの身体の中には別の生物が沢山居るって事か?」


 ビックリしたのか、ゲイズが声を荒げる。


 「ゲイズ煩い黙って!」


 珍しくサリシャが厳しい口調でゲイズを嗜める。此処まで真剣に聞いてくれると教え甲斐がある。


 「仮に再生が始まったとして、本当の手足として使える様になるとは信じがたい。」


 「サリシャさんは本当に着眼点が良いですね。そうです、そのままでは単純に触手の様に肉の棒が生えただけで終わります。

 ですが、実は瓶の方に仕掛けが有りまして、使用する者の遺伝子を読み取りその遺伝子に添った再生をする様にコントロールする魔法陣と付与魔法が掛けられてます。」


 サリシャはまたも難解にぶち当たった様な顔で質問を続ける。


 「遺伝子って何?ダーリンの言葉は難しくて難解。でも、其処がステキ。」


 「ダーリンも禁止です。」


 「いけず…。」


 「まあ、教える側としては、サリシャさんは非常に教え甲斐がある生徒ですよ。では、遺伝子とは……。」


 「レン様、バーベキューの用意が整いました。授業はその位にして、お食事にしませんか?」


 「もうそんなに時間が経っていたのか、仕方ないね続きはまた今度にしましょう。」


 「ハニーの授業は面白い、是非また聞かせて欲しい。何なら寝物語でもいい。」


 「本当にサリシャさんはブレませんね。ハニーも禁止です、寝物語もしませんよ。」


 「私の事はサリシャと呼び捨てにして欲しい。」


 イヤイヤをしながらサリシャを他所に、他のメンバーは疲れた様な顔で着いてくる。


 授業に夢中で全く見てなかったけど、何かあったのかな?






 「いやぁレン君、先程の授業は素晴らしかったね。一体何処であんな知識を身に着けたんだい?」


 「教えても良いですが、絶対に口外しないと約束して貰いますよ。」


 「ふむ、知識は教えてもその出処は秘密と言う訳か。」


 「秘密と言う程ではありませんが、大々的に宣伝されると僕の平穏が脅かされる可能性がありますので。」


 「成程成程、では、大体察しは付いたけど、答え合わせは二人っきりの時にでもしようか。」


「そうしてくれると助かります。」


 聡いにも程があるだろう……いや、魔族とはいえ王族だ。もしかしたら転生者や転移者の記録等もあったりするのかも知れない。


 ベルフェ王に限っては大丈夫だとは思うが、いくら残念でも王族だ何かしらの利益になるなら情報の漏洩も……いや、無いな。


 「レン君、何か失礼な事考えてないかい?」


 「いえいえ、何も考えてませんよ。」


 本当に勘だけは鋭いな。

 ジト目で見つめるベルフェ王だが、明言してない事まで責め立てる事も出来ないだろう。


 代わりにベルフェ王の口から出た言葉は協力の提案だった。


 「我々にも素材の採取に協力出来る事は無いだろうか?」


 突然の提案に怪訝な顔の反応を見てベルフェ王は尚も続けた。


 「いやね、このままでは此方の報酬と依頼内容が釣り合わないと思ってね。

 兵士の貸し出しとはいえ、此処は安全性が脅かされる事も無く、本当にあの子の身の回りの世話だけで終わってしまう。

 況してや、ドラゴンバーベキューなる物の提供や今後此処に留まる兵士達の食事も本国では比較にならない程の贅沢な物になるだろう。」


 「しかし、超過分はベルフェ王の国に訪れた時に困り事が有れば頼らせて貰うと言う事で話は付いている筈。」


 「けど、君は頼る事は無いのだろう?」


 そこ迄見透かされていたか。確かに国に訪れる事も無いだろうし、訪れたとしても頼らなければならない事態等起こりようも無いだろう。


 「分かりました、お手伝いを頼みます。」


 「話は聞いた、そう言う事なら俺達も手伝わせてくれないか?」


 ゲイズが横から話に割り込んで来た。どうやら結構前から聞き耳を立ててたのは話に割り込むタイミングを測っていたのだろう。


 「俺達もベルフェ王の旦那と同じ気持ちだ。命の恩人だけで無く、凄え装備を無償で提供してくれて、尚且毎日の食事に風呂、寝床まで貸してくれてる。

 恩義を返すなら今しか無いと思ったまでよ。まぁ、それでチャラになるとは思って無いけどな。」


 あまりの事に口をパクパクさせて言葉に詰まっていると、ゲイズの後でサムズアップしているカイルとサリシャがニッコリと笑って此方を見ていた。


 「それによ、俺達は坊主の事が気に入っちまったんだよ。こんな所で世捨て人している癖に、底抜けにお人好しで他人の為に伝説以上の秘薬まで造ろうとしてるんだ。

 それに、俺達に渡した装備。あれ最低限じゃ無く、俺達がギリギリのラインで扱える高ランク装備なんだろ?」


 言葉にならない感情に戸惑っていたら、気が付くと頬を温かい液体が流れていた。


 あぁ、この世界の人達はこんなにも温かいんだ。


 気が付くと、彼らの申し出に無意識に頷いていた。





 この世界で当たり前の知識が異世界では革新的な知識だったって事はよく聞く話ですよね。

 魔法技術と科学技術と魔法陣技術が合わさると何処まで凄い事が出来る様になるか作者にも分かりません。


 多分御都合主義的な事も過不足無く説明出来る様になるのかな?


 5月26日:カイルの名がガイルになっていたのを修正しました。

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