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魔の森の大賢者  作者: 神内 焔
第一章  森の生活編
14/33

エルフの里から拠点へ 3

 一夜を明けた一同、まさかの満腹状態で多脚戦車に乗せられ拠点へ直走る。



 移動二日目。

 

 結局あまりにも揺れが酷過ぎる為、蜘蛛型多脚戦車での移動はほぼ全員の嘆願により取り止めになった。


 今後は蜘蛛型多脚戦車も乗り心地を追求する必要が出て来た。毎回乗る度に体調不良を訴えられたのでは仕様に耐えられない。


 此れで高機動戦闘などした日には死人が出かねん。慣性制御魔法陣を組めばその問題は容易く解決するが、あれは魔力をバカ食いする上に技術者として手抜き感が半端無い。


 記憶は無いが、多分前々世では得意になって使用してた気がする。逆に前世には自動車技術や航空技術には目を瞠る物があった。


 魔法陣や魔術理論が全く無い世界だった為に、重力に適した技術が確立されていた。


 ショックアブソーバやエアースプリングなどがそれに中る。多脚戦車に何処まで対応させられるかは分からないが、やって見る価値はあるだろう。


 まぁ、それはさて置きベルフェ王を始め兵士達も二時間も耐えたのだ、かなりな距離を進めたのだから健闘した方だろう。


 大体二時間で80km程だろうか?時速40kmで移動した計算になる。馬車で移動して大凡一日60kmの移動だとすれば、かなり時間を短縮出来たはず。


 残りは20kmあるか無いかくらいだろう。

 体調を回復させても多脚戦車は絶対に乗らないだろうし、徒歩で時速5kmで歩ければ夕方には到着出来る筈。


 状況次第だが、ベルフェ王達に提案してみよう。


 そもそも、乗る羽目になったのも彼等の自重しない食欲のせいでもあるのだ、反対はし辛いだろう。

 機会があれば、一度魔族の国の食料事情を聞いてみたいところだ。


 「ところでレン君、この乗り物はどういった理由で作ったんだい?

 君の事は信用しているが、まさか何処かに攻め入る目的で作った訳ではないよね?」


 「作った理由ですか?……強いて言うならロマンですね。」


 「ロマン?」


 そう、ロマンだ。前世ではアニメやゲームと言ったメディアが異常な程発達した世界だった。


 今世ではどの程度文化が発達しているかは皆目見当も付かないが、ベルフェ王も見た事が無い物だと言うのだから、前世程の文化の発達は無いのだろう。


 最も魔法にせよ、科学にせよ、突き詰めて発展して行けば、恐らく到達する終点は同じなのでは無いだろうか?


 要はエネルギーとなる物が、電気主体なのか魔力主体なのかの違いでしか無いのだろう。


 「ロマンとは解らないが、要は趣味で作ったと言う事かな?」


 「紛れも無くその通りですよ。」


 如何に残念なベルフェ王でも気になっていたのだろう………が、流石に趣味で魔道兵器を作ったと言われれば困惑を隠せないらしい。


 「それは兎も角として、あと20km程の距離まで来ています。昼食を取ったら出発しませんか?」


 「正直今日はこのまま休んでしまいたい気分だが、彼女を何時までも危険な森の中に留まらせるよりは、確実に安全な場所に連れて行く方が安心か。」


 如何に簡易結界を使ったロッジがあるとは言え、全ての魔物を寄せ付けない程万能ではない。


 以前、はぐれドラゴンが現れた時に一度結界を破られた事がある。


 その時は昼間で独り暮しだった事もあり、即座に外に出て対応したからロッジには被害は出なかったが、夜中に襲われたら被害を出さずに対応仕切れる自信は無い。


 ならば、万全の結界がある拠点に早く到着するのがベストと言うものだろう。


 「そうですね。時折はぐれドラゴンも出る事もありますから、出来る限り早めに到着して置きたい所です。」


 「まて、ドラゴンが出るのか?それなら直ぐにでも移動した方が良いんじゃないかね?

 幾ら精強な兵士達でも、ドラゴンには対応出来ないよ。」


 「あぁいや、古龍では無く下級ドラゴンなので、そこ迄大変な事態ではないですよ。

 ただ、ロッジを壊される可能性があるので、夜中に襲撃されたら困るなって程度です。」


 「古龍なんて出たら全滅確実じゃないか!下級ドラゴンだって被害無しでは済まないんだよ。」


 どうも此方の認識とベルフェ王の認識には齟齬がある様に聞こえる。


 「ベルフェ王、落ち着いて下さい。下級ドラゴンとは、地竜の事です。知性を持たず、翼も無い野生生物の竜です。

 古龍と地竜を同一視する事は、人間種とイエローモンキーを同一視するのと同じだと教わりました。」


 「レン君、一体誰に教わったんだい?龍族の生体は長年謎とされて来た命題のはず。調査するだけでも危険を伴うし、関わればまず生きて帰れないんだ。

 分かっているのは、あの霊峰に住んでいると言う事と、途轍もない生命力と攻撃力を有しているってだけだ。」


 「誰って古龍本人からですよ。」


 まさか!とでも言わんばかりに驚愕した顔をするベルフェ王。


 「古龍は知性の無い地竜と違って行き成り襲いかかる様な種族じゃないですよ。寧ろ力比べや知恵比べが好きな穏やかな種族ですから。」


 「ち、力比べの時点で充分驚異だからね。」


 「勝てば一族の序列に名を連ねる事を許されて、自由に古龍の街へ出入り出来る様になります。」


 冷や汗ダラダラなベルフェ王の様子にも気付かずに、ドラゴンの名前だけで近寄って来た女性兵士達が食欲満載な発言をして来た。


 「何なに?お昼ごはんはドラゴン肉っすか?豪勢っすねぇ。20数年前にグーラ国で大規模な掃討戦の時に振る舞われたって聞いた事があるっす。」


 あれだけ吐いては魘されてたのに元気だな。どうやら彼女達の辞書には反省の文字は存在しないらしい。

 まあ、話に出た事だしお昼はドラゴン肉を使ったハンバーガーにでもしようか。






 お昼ごはんを食べてからアルリシアがずっと元気が無い。何やら考え込んでいる様でニヤけたと思えば、行き成り泣きそうな顔をしたり、百面相も格や心ここにあらずと言った感じだろうか?


 彼女の心のケアは同じ女性陣に丸投げするのが良いだろう。女性同士でなければ相談出来ない事もあるだろうし。


 その女性兵士達も慣れたもので、最早イービル・ボアやビッグパイソン程度の魔物では取り乱さなくなった。しかし、それ以上の魔物が出ないとも限らないので、もう少し周囲に気を配って欲しい物だ。


 特にアルリシアは考え事を許してやるには、この場は危険過ぎる。拠点に着けば設置型の結界があるので、簡易結界など比較にならない程の安全性が見込めるのだ。


 此処は少し我慢して貰って注意して置くべきだろう。


 「アルリシアさん必ず護るとは言いましたが、もう少し周囲を警戒して貰えませんか。

 不測の事態が起きてもおかしくない地域です。いざと言う時に退避出来無ければ余計な被害を出しかねません。」


 「分かってるわよ。でも……いや、気を付けるわごめんなさい。」


 意外だ、てっきり"護るって約束したんだから、しっかり護りなさいよね!"くらいは言われると思ってた。

 彼女に何かの心境の変化でもあったのだろうか。


 「ちょっと質問いいかしら?」


 「どうぞ。」


 「貴方、そんな女のコ見たいな形してるけど、男の子なのよね?別に男の子が好きって訳でもなく、女性志願者って訳でも無いのよね?」


 「面と向かってそう言われると傷つきますが、普通に男の子ですし、恋愛対象として女性が好きですよ。最も、まだ10歳なので恋愛に関しては門外漢ですけどね。」


 「そう……でも、時間の問題よね。エルフーーって十年なんてーーーう間。もし、本当に身体が戻ったら……ゴニョゴニョ……だって……。」


 納得はしたようだけど、後半が小声過ぎて全然聞き取れなかった。

 周りを固めている女性兵士達がニヤニヤしているので、あまり関わり合いにならないのが身の為だろうか。


 常時展開していた索敵魔法に反応がでた。今度の魔物はかなりな大型だ!全員に退避を。


 「一時の方向から敵性反応あり!全員八時の方向に退避、防御結界を張って攻撃に備えて下さい!」


 ベルフェ王と兵士達は流石に即座に言われた通りに動こうとしたが、考え事をしていたアルリシアが何を言われたか分からず呆然としていた。


 「管理者No.3243DEF回避行動に移れ!」


 《自動防御モード起動。回避行動に移ります。》


 多脚車椅子の後に畳まれていたハッチが閉まり、搭乗者であるアルリシアを完全に隠す。

 内部ではパニックを起こしたアルリシアが、ガンガンとハッチを叩いているが、オリハルコンとクリスタルメタルでコーティングしたハッチはビクともしない。


 内部モニターが点いたのだろう。ハッチを叩く音が止むと、内蔵マイクからアルリシアの非難する声が聴こえてきた。


 「何よこれ!こんなの聞いてないわ!早く出してよ!」


 可哀想だが、相手をしている暇は無い。今度の魔物はお昼ごはんに食べたドラゴンだ。流石に瞬殺とは行かない相手なので暫くはそのままで居てもらおう。


 強さ的には問題無い相手たけども、腐ってもドラゴン物理攻撃では硬い鱗があるし、僕のメイン武器は小太刀だ。

 傷を付ける事は出来るが、長さが圧倒的に足りない。

 何よりも無闇にブレスなど吐かれたら避けるだけで自分以外の者がやられかねん。


 先ずは挨拶がてら、ドラゴンの火線を皆から逸らす為に一宛て斬り付けてドラゴンの横へ飛ぶ。

 怒り出したドラゴンのヘイトを此方に誘導する事に成功。


 流石はクリスタルメタルの小太刀、硬い上に切れ味も些かも衰えてない。尚且振り回している間は視認し難く魔力の流れも最高だ。


 何度かドラゴンの首筋に斬り付けて出血も増えて来た。業を煮やしたドラゴンが大きく息を吸い込む。


 「ブレスか!」


 次の瞬間眩い程の火線が吐き出され、導線上の木々を炭化させて行く。

 以前相対した時もブレスを吐いたが、今回のドラゴンの方が威力が高い様な気がする。


 右に避けてブレスをやり過ごすと一足飛びにドラゴンの懐に飛び込む。ドラゴンはブレスを吐いた瞬間が最大の隙になる。


 間髪入れずに首筋に刃を滑らせる様に斬り付けると、一瞬にして小太刀の刀身が倍程に伸び、あっさりとドラゴンの首を泣き別れにしてしまった。


 役目を終えた小太刀は、また元の長さへと戻っていた。今迄この様な変化をした事が無いのに、一体何が起きているのか。


 そもそも作った理由が"視えない刀とか格好良くない?"と考えただけだったし、前世は元より恐らく前々世でも無かった素材の筈だ。


 この様な変化をする素材だとは新たな発見に喜びを隠せない。

 そんな事に思いを馳せていると、静かになったからか木の影から皆が顔を出して来た。


 「終わったのかい?」


 「あぁ、すいません。終わりました。」


 ベルフェ王はまじまじと首を失ったドラゴンを見て感嘆の声を上げる。


 「ドラゴンを単独撃破するなんて、君は何処まで凄いんだ。しかも、この短時間でほぼ首筋だけを斬り付けて倒すなんて人間技じゃ無いよ。」


 「所詮知能の無い獣ですからね、行動パターンは大体同じなんですよ。

 斬れる武器と身のこなしが出来れば可能な範囲です。」


 「いやいや、陰からコッソリ観てたけど、レン君の動きは全然目で追えなかったよ。

 ブレスを吐いた時も"ヤバい!"って飛び出し掛けたけど、次の瞬間ドラゴンの懐で首を斬り付けていたからね。」


 そんなにか?普段自分のレベルも見てないからな、自分のステータスなど最初の一年くらいしか見てなかった気がする。


 ゾロゾロ出て来た兵士の皆さんとアルリシアが眼をキラキラさせて顔を朱に染めている。

 食事の時のギラギラとは違って新鮮な感じではあるが、対応に困るので解らない振りをして置こう。


 では、皆さんドラゴンを片付けたら行きましょうか。

 中々良いドラゴンだったので、今夜はドラゴンバーベキューにしましょう。


 それを聞いた全員が諸手を挙げて喜びの声を上げるのだった。




 ドラゴン肉って食べてみたいですよね。

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