エルフの里から拠点へ 2
趣味人レンの隠しアイテムは彼等を驚愕させた(笑)
「レン君はイービル・ボアは結構食べるのかい?」
夜営の準備を始めるや否やベルフェ王がそんな質問をして来た。
まぁ準備とは言っても拓けた場所にロッジを出すだけなのだが。
「そうですね、毎日ではありませんが、よく食べてはいます。」
「それなら、食事にも期待は出来そうだね。」
単純に料理が気になっていただけのようだ。
「期待に添えるかは判りませんが、精一杯腕を奮わせて頂きますよ。」
「ウンウン、期待してるよ。」
何でそんなに期待しているのだろうか。森の魔物など王族からすれば、有り触れた食材だと思うのだが。
「兵士のお姉さん、ちょっといいですか?イービル・ボアなんですけど。」
「イレーヌとお呼びください。で、何でしょうか?まさかイービル・ボアはやっぱり止めとか言いませんよね?あ、お金ですか!?すいません、あまり高いと難しいですが、後でコッソリか、身体で支払っても………いた!。」
「イレーヌ、情けないから子供にみっともないマネしないで。」
「そう言うリーダーだって内心ションボリしてるんじゃ無いですか?見てくださいよあっちで見張りに立ってる三人も赤等様に肩を落としてるじゃないですか。」
「二人共お肉はちゃんと出しますから、落ち着いて下さい。聞きたかったのはイービル・ボアが王族がそんなに楽しみにする程良い物なのかって事です。」
あ、歩哨の三人も元気になった。
ポカンとした顔で二人が言葉を失っている。
「何言ってるんですか!イービル・ボアっすよ、イービル・ボア!大事な事なので2回言うっす。」
何やら興奮し過ぎて言葉遣いも変わってしまってるぞ。
「まてイレーヌ、彼女…じゃなく彼は魔の森の中で暮らしてるんだ、価値観が解らなくても致し方ない。
コホン、イービル・ボアは素早い上に突進力もずば抜けていて、その牙と角で抉られたら一発で致命傷は免れない事から討伐難易度が高く滅多に市場に出回らない高級食材なのです。
しかし、聞いた話ではその肉質は柔らかくジューシーな食感は言葉に出来ない程だそうです。恐らくは王族でも中々食べられないのでは無いかと。」
何やら熱く語られた気がするが、要は日本で言う所の黒毛和牛的な扱いなのだろう。それも、スーパーで並ぶ安い部位では無く、高級レストランや焼肉屋にある様な。
なら彼女達の興奮のしようも分かるよ。けど、エルフの村にも結構お裾分けしてたんだけどな……だから友好的だったとか?
まぁ、過ぎた事は良いか、こっちも色々な果物や調味料を融通して貰ってたし。
「成程、理由は分かりました。期待に添える様に頑張ります。」
さぁ、ストレージからロッジを取り出し調理開始だ。
「「「「「美味しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」」」
「本当に美味しいねぇ。此れは何て料理だい?」
「これは生姜焼きです。こっちがしゃぶしゃぶ、タレに浸してから食べて下さい。そして、これが角煮、ポークソテー、豚しゃぶサラダ、内蔵も美味しいので、洗浄して焼き肉にしました。」
「や、やるじゃない。アンタの所に行けば毎日こんな料理が食べられるの?」
「流石に毎日この量の規模だと肥満化待ったなしだから、量は減らしてもう少し質素になりますよ。」
なかば期待と素直になれない心情がせめぎ合って微妙な顔で聞いて来るアルリシア。ツンデレも大変だな。
「そ、そうよね。こんなのお祭りか何かの記念日にしか食べれないわよね。」
何気に全員がお通夜の様ながっかり感で埋め尽くされる。おい其処の魔王、何一緒にがっかりしてる。まさか帰る気ゼロとか言わないよな?
「もうこの魔王には敬意を払わなくて良いような気がして来た。」
「いやいやレン君聞こえてるからね。君の料理はどれも革新的でこれ迄のどの料理よりも美味しいんだ。今後中々食べれないとあれば、ガッカリするのも仕方ないだろう。」
「では、向こうに着いたら今日の料理のレシピを書いて渡しますので、送り届けたらちゃんと帰って下さい。そして、奥さんなりシェフになり渡して作って貰って下さい。」
「良いのかい?助かるよ。序に兵士の食堂にもレシピを渡して置こう。ありがとう、兵士達の食事も改善される。あと、もしかして嫌われてるの?」
「嫌ってはいません。王族の職務を全うして欲しいだけです。」
それを聴いた兵士達も"わーい!"と言いそうな笑顔で喜んでいた。それにしても、そんなに酷いのか?魔族国の食事事情。
そんなこんなで森の中での最初の夜が更けていった。
そして、翌日朝起きてから困った事態が起きるとは誰一人想像すらしなかった。
魔王様を始め兵士達皆さん迄が、昨夜からの食べ過ぎで動けなかったのだ。
朝食も取れない程に食べるって一体何時まで食べてたのか。
僕とアルリシアは充分食べたら、早々に退席して就寝に入ったから全く把握していない。
残念魔王様に請われて酒を出したのが悪かったのか、二日酔いにこそなってないが、まともに動ける状態ではなくなっている。
煮物用にライスツリーから造った料理酒と、エルフの里で譲って貰ったフルーツで造った果物酒は、料理用とはいえ前世の世界の大吟醸にも劣らない味である。
樽で出せば二日酔いになるのは目に見えているので、日本酒一升餅と果実酒二本しか出さなかったのだが、どうやらその分料理の手が進んだ様だ。
別に一日位遅れても良いのだが、今は客人も待たせているので、あまりゆっくりはしたくない。
「一体何時まで食べてたんですか?あれ程食べ過ぎには注意する様に言ってあったのに。」
「いやぁ面目無い。酒と料理が美味し過ぎてついついね。」
魔族で美形とはいえ、男のテヘペロ程需要は全く誰得なのだろうか。
「仕方ないですね。あまり出したくは有りませんでしたが、最終手段です。」
「何か妙案が?」
ニッコリと笑みを浮かべ、ストレージから大型の多脚戦車を出す。
「「「「!!!!!」」」」
「戦闘用汎用多脚ゴーレムです。名前はまだありません。」
「な、な、ななななななな………。」
「な?」
「なんて格好良いんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
え?驚くのそこ?この魔王様、残念だけど意外と大物なのかも知れない。
「これなら全員が乗っても余裕が有ります。」
「何で最初から此れを出さなかったのかね?」
「乗れば分かりますよ。」
多脚戦車の後部下からハッチが降り、全員が乗り込んだ。
「全員適当なシートに座ってシートベルトをして下さい。アルリシアさんは車椅子の脚を開いて最後部で固定してくださいね。」
全員が席に着いてシートベルトを着けたのを確認して、非常用の袋を数枚ずつ手渡してから操縦席に乗り込む。
駆動キーを回し魔力が充分に行き渡った所で始動を始めた。鈍い音と共に歩き始めた多脚戦車に誰もが驚愕と激しい嘔吐感に悩まされる事となった。
「な、何故出さ……無かった……か理由…が分かった。」
「はい、これ酷く揺れるんですよ。あと、大き過ぎるので、木々を時々薙ぎ倒しながら歩かなきゃなりませんし。」
「こ、此れが……後……二日も…続く……んです…うおぇぇぇぇ。」
イレーヌさんを始め、順次食べ過ぎメンバーが用意した袋に輝く物をマーライオンして行く。
中に酸っぱい香りが立ち籠めるが換気機能も無いので、悪臭が半端無い事になっている。
唯一無事なのは操縦している自分自身と、車椅子のショックアブソーバで揺れが緩和されているアルリシアだけだった。
僕が無事なのは恐らく車の運転手が車酔いしないのと理由は一緒だろう。
こうしてエルフの里から拠点への行軍二日目は順調?に始まりを見せた。
きちゃな〜い(笑)




