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異世界コレクション日替わり限定販売 聖劔『エクスカリバー』 各日限定数80本  お1人様2本まで

作者: 大介丸

 

「(・・・一体俺は何を買いに行こうとしているのだろうか)」

 彼は、何とも言えない表情を浮かべながら、手に持っている広告のチラシに視線を向けた。

 チラシには、眼を疑う商品が載っていた。



『異世界コレクション  ○月○○日(○)→○○日(○) 六階催会場




「(・・・一体俺は何を買いに行こうとしているのだろうか)」

 彼は、何とも言えない表情を浮かべながら、手に持っている広告のチラシに視線を向けた。

 チラシには、()()()()()()が載っていた。


()()()()()()()()() () ()○月○○日(○)→○○日(○) 六階催会場

 ()()()のかわいい雑貨から()()()()()()()()()()()()()()()()()、こだわりの調味料まで厳選50ショプから()()()の商品が

 大集結する楽しくてお手軽なイベントです』


 かなり馬鹿げた事が、広告に載っている。

 しかもこの馬鹿げた商品の一つを親から、『暇そうだし、買ってきて』と、彼は頼まれた。

 頼まれた商品と言うのが――――。

()()()()()()()()()』だ。



 広告には、『聖劔エクスカリバー  ()()()()()()() ()()()()()()()() 1200円』 と載っている。

「・・・マジか」

 彼は、何度も広告を読み返しながら呟く。

 もちろんこの事について親に尋ねたが、その返答はさらに、彼を困惑させた。

 親は、『週末の『迷宮』探索に必要になるから』など、彼にはさっぱりわからない事を

 言ってきた。

 少なくとも彼は、親が知らず知らずに重度の中二病にでも感染したかとは思ってはいない。

 第一親はライトノベルやRPGゲームなんてしないし、読まない。

 さらに、尋ねようとしたが、『○○時から整理券配るらしいから、早く行ってきて』と言われる

 始末。


 彼は困惑しながらも購入代金を親から受け取ると、しぶしぶと『異世界コレクション』なるものが

 開かれるデパートへと向かった。

 その道すがら、彼は何か『()()()』を感じた。

 最初、彼がその『()()()』を見た時は、『気のせいか』と思った。

 だが、デパートの建物が近づくに連れて人の姿も多くなっていき、その『()()()』も気のせいでは済ます事は出来なくなった。



 その『違和感』とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「(――――ナニコレ)」

 彼は、表面上はいつも通りにしながらデパートに向かっていたが、内心は穏やかには

 できなかった。

 デパートに近づくにつれて、現代ではありえない武器類を持っている通行人の姿が多く

 なってくる。

 デパートに着くと、丁度良い時間に開店したため、彼はいそいそと6階までエレベーターで

 上がる。



 会場には、すでに10数人『聖劔エクスカリバー』の購入目当ての来店客姿が見えた。

「俺は良くネット小説なんかである、異世界移転をマジで経験したのか?」

 彼は唖然とした声で小さく呟く。

 彼の視界には目当ての商品の他に、RPGゲームやライトノベルで登場している武器や

 魔道具らしき商品が展示されていた。

 彼は、それらの商品を観ようとは思ったが、やはり親に頼まれた買い物を済ます事にして、

 まず他の来店客に説明などしている店員に向かった。

「すいません  この広告に載っている商品の売り場はどちらになりますか?」

 彼は、おそるおそる尋ねた。

「こちらになります。整理券を配るのは○○時からで、販売は○○時からですので」

 そう店員が応えてきた。


 店員が示した場所には、すでに数人ほど並んでいた。

 彼も、急いでその列に並ぶ。

「(うげぇ・・・整理券が配られるまで一時間かよ・・・)」

 彼は、腕時計を見ながらため息を吐きそうになるのを堪えた。

 腕時計から後ろに視線をむければ、もう行列が出来つつあった。

「(・・・・いやいや・・・どんだけだよ)」

 その光景に、彼は引きつる表情を浮かべた。



 ――――整理券が配られるまでの時間は、彼にとっては苦痛だった。

 喋る相手がいれば、多少緩和されていたかもしれないが。

 その苦痛を倍増させたのが、後ろで並んでいる中年女性達の会話だ。

 日頃の愚痴かなと、聞こえてくる会話に耳を少し傾けた彼だったが―――予想が外れた。

 曰く、『○○県の『迷宮』はレアもの出やすい』、曰く『うちの所の旦那は、『迷宮』潜るより

 魔道書を読んでいる方が良い』  曰く『孫がいないから、関東方面の『迷宮』には行けない』

 などなど・・・。

「(とんでもない世界に転移したんじゃないのか・・・俺は・・・)」

 その会話を聞きながら、彼は思った。

 また、彼の前に並んでいる2人ずれの中年女性と中年男性の会話からは、さらに彼を困惑させる

 話をしていた。

『 聖劔『エクスカリバー』は、1日5回だけ英雄王を召喚出来る』


 そんな内容の話だった。

「(・・・そんな出鱈目というか、意味の分からないのを二本も買って帰えらなくてはならないのかっ!?)」

 彼は、引きつる表情を必死に押し込み、『二本買ってきて』と言った親に文句言いたい

 気分だった。



 ――――苦痛の時間が終わり、時間通り()()()()の『聖劔エクスカリバー』を二本購入する事が出来た。

 整理券と代金を手渡すと、頑丈なケースに入った『聖劔エクスカリバー』を二つ渡される。

「(結構重い・・・これ持って帰るのかよ・・・)」

 彼は歯を食いしばりながら、ケースを二つ持って売り場から離れる。

 他の客は、同じように二つ購入しても平然としながら持ち帰っていた。


 彼は少し離れた所で、ケースを床に置き、携帯で自宅に電話を入れる。

「あ、お母さん?。 ○○だけど、購入出来たよ・・・。時間はかかるし人は多いし、重いし・・・

 疲れた」

 携帯で、そう告げる。

『ご苦労様 時間あるから何か観て買って来たら? 『イージスの盾』とか販売してたはずよ』

 電話口の親から、そう返答が返ってきた。

「・・・・買えたら買うよ。詳しくは家に戻ったら話す」

 そう言うと、電話を切った。

 彼は少し息を吸うと、『聖劔エクスカリバー』の入った二つのケースを両方の手で持つ。

「信じられん・・・親から『イージスの盾』という言葉が出るなんて・・・」

 彼は、そう呟くと重いケースを持って自宅へと脚を向けた。








リアルで、親にある日替わり限定販売商品を買いに行ってくれと頼まれ、整理券が配られる間の

一時間に、思いついた短編です。

いや、待っている間って・・・苦痛なんですよ・・・。

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