表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/54

俺とあのこと

「ごめん、最後の方が聞こえなかったんだけど。もう一度言ってもらっていい?」

「クロエ! なんでおれとファニーじゃ優しさが違うんだ!」

「男に女の子と同じくらいの優しさを注ぐ意味が分かんない」

「ぐぬぬ、女の姿をとるんだった!!」


 心底悔し気に歯ぎしりをするバルーフに、肩をすくめてみせる。っていうか女の姿をとればよかったってことはやっぱりこいつ男か、と思って聞いてみれば。アジ・ダハーカに性別はないとのことだった。男でもあり、女でもある。それがアジ・ダハーカというドラゴンらしく。


 女の姿はすごいんだぞ! ないすぼでーなんだぞ! とテーブルに乗り上がらんばかりの勢いで一生懸命に語ってくるバルーフに思わず生暖かい目を向ける。うん、ないすぼでーじゃなくてナイスボディね。っていうかミルクティーこぼれるからやめろ。くだらないやりとりをしていれば、涙が流れた跡を拭いながらファーヴニルが楽しそうに笑った。


「……ふっ、あはは。クロエさまとヴァルっていつもそうなの? 楽しいね! ……えーと、力の源は同じだからクロエさまが魔法を使えれば問題……って、魔法、使ったことないよ、ね?」

「ごめん、全然ない」

「安心するといい、下地はできてるぞ!!」

「「下地?」」


 そりゃあね! 今の科学社会の中で魔法なんて使ったら大変なことになりますからね! そもそもドラゴン自体見つかったら大変なことになりかねないからね! 

 っつか力の源は同じとはなんぞ? と首をひねっていれば、察したのかバルーフが「人間が霊力と呼ぶものとおれたち《幻獣》が魔力と呼ぶものは同じなんだ」と説明された。俺の思考を読むなんて、バルーフ、恐ろしい子!


 おずおずと上目に聞いてきたファーヴニルに、謝ればとんでもないと言いたげに胸の前で両手をふられた。しかし、バルって呼ぶなんてよっぽど親しいんだな……っていうか、なんか発音違くなかった? と思い聞いてみると爺さんがバルーフにつけた名前が、ヴァルというらしい。


 なんだよ、いきなりあだ名とかお前らマブダチかよ! とかつっこみそうになったわ。そのことに、なんでバルーフが名前を付けたときに驚いた声を出したのかわかった気がした。

 とりあえず、座りながらドヤ顔しているバルーフに聞き返す。腰に手を当てて、得意げだ。そこで納得したようにはっとしてファーヴニルも頷く。


「あっ、そうだよね。だってエレノアさまと敬一郎さまのお孫さまだし、ヴァルがついてたんなら魔法の1つや2つ教えて」

「クロエはおれと真名契約してるからな! ちょっと練習すればおれが習得している魔法くらいちょちょいっとできるに」

「ちょっと待ちなよ。真名契約? ちゃんとクロエさまの意思が含まれてるんだよね?」


 一段低くなった声でふわりと美しい笑みを浮かべながら問うファーヴニルに、俺とバルーフは視線を合わせる。同じタイミングで首を傾げそして、同時に口を開く。あれはおれの意思が含まれてるというかいないとかいう前に、あえていうなら……。


「「……事故?」」

「ヴァル、ちょっとこっち来て」

「や、やだ! 違うんだ! いまの人間がまさか真名で生きてるとは思わなくてだなっ! あ、痛い!!」

「言い訳無用だよ!!」


 勢いよく立ち上がった笑みに凄みをプラスしたファーヴニルが、バルーフの横まで歩いていくと。その首根っこを掴み、椅子から引きずり降ろしてずるずると赤い絨毯の上を引きずりながら食堂から出ていった。


 バルーフが泣きそうな顔をして俺を見ていたが、俺は俺で肝っ玉母ちゃんってこういうのかななんて考えてたらファーヴニルにめちゃくちゃ睨まれたので黙って見送るしかなかった。ビビったとかいうなし。バルーフには心の中で合掌しとく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ