初来店、いらっしゃいませ!
「…はぁ客こねでなぁ。まぁこんな街から離れた場所じゃぁ誰も来ないよなぁ…」
野良猫の隠れ家カフェがオープンしてから早3時間
来客数……0人
壊滅的だ…嘘だぁ…
前に修行してたときは俺目当てで来てくれたお客さんもいて
オープンする日も場所も伝えたのに…
まさか、誰も来ないなんて…
「はぁ…まぁ…仕方ない…よな。初日だし…
もぅ今日は店仕舞いして街に行ってチラシでも配ろうかな…はぁ…」
そんな事を思いながら朝引いたコーヒー豆をドリップしながらぼんやり外を眺めていたら
小柄な女性が店内を覗いていた
あれ…?お客さんか?
そんな事を考えていたら
カラン…カラン…
何故かドアを半分だけ開けて
顔をひょっこり出して
「あのぉ…外にニューオープンって書いてあったんですけど…やってます…か?」
おぉ…!!!!!客きたーーーー!!!
「え!あ、はい!やってますやってます!
あ、ここどうぞ!丁度今コーヒー入れたんでサービスで一杯どうです…か?」
やべ…嬉しすぎてめっちゃしゃべっちった…
これで帰られたら…やっちまった…
「あ、よかった!嬉しい!じゃぁお言葉に甘えて…失礼しまぁす。
…わぁお客さんいないからか、広く感じますねぇ…」
…今ボソッと酷いこと言ったな、この子
まぁいっか
「とりあえず、ブラックでいい?ミルクと砂糖はセルフにしとくから好きなだけ入れてね?」
少し高めのカウンター席にちょっと苦労しながらも無事に座った事を確認してコーヒーと粉ミルクと角砂糖のセットを出した
「じゃぁお言葉に甘えて…」
ごっそり
え、この子角砂糖を鷲掴み…
甘党すぎるでしょ!
目をまん丸くさせながらその子を見ていたら
「嘘です。冗談です。こんなにいりません。
ただ単にやってみたかっただけです」
あはは…
なんだこの子…不思議ちゃんだなぁ
でもいい子そうだなぁ…
「あ、そういえばどうしてここに来てくれたの?街はずれだし、一人みたいだけど?」
その子は砂糖を溶かすのに必死にかき回していた手を止めて、優しく微笑んでくれた
「私、散歩好きなんです!それでお花も咲いてるし、蝶々も飛んでて追いかけてきたら偶然にもここにたどり着いたんです。偶然にです、偶然。たまたまなんです。」
あ、あぁなんだろ、偶然来たことをやたらと押してくるなぁ…
まぁいっか、コーヒーをお気に召したのかニコニコしながら飲んでくれてるし
夜営業してる事言ってみようかな?
「あ、そういえば自己紹介させていただきますね?野良猫の隠れ家のオーナーをしてます。野良猫 翔、と言います。夜もディナーとかお酒なんかも出しますんでよかったら来てください。お客様第一号なんでサービスしますし、どうですか?」
問いかけてみたところ、コーヒーを一気に飲み干してバッと顔を上げて目をキラキラさせていた
「お酒!来ます!あ、友達も連れてきていいですか?たぶんその子もここ気に入ってくれると思うんです。あ、私めいっていいます。じゃぁ初めての女ですね笑
コーヒーご馳走様でした!では、また夜に来ますね!」
と、言うとこっちの返答も聞かずに風のように去っていった
何故が銀色なスプーンを落として…
「ふふ…面白い子だったなぁ…めい、ちゃんか…では、またのご来店を心よりお待ちしております。」