ゆびきった
私は子供の頃から何か約束をするたびにゆびきりをする。
約束を守るためだ。
でね?中学を卒業する前に友達とゆびきりをしたんだ。卒業後、10年経ったらまた会おうって…。
それから7年の歳月が流れた。
今は社会人として働いている。忙しい毎日だ。
なれない仕事にぼわれ、1日1日を終えるのがやっとの毎日。
それから3年、ようやく仕事にもなれ少しずつゆとりができてきたこの頃、何気にふと思い出した事があった。
10年経ったらまた会おうって…。
そろそろ10年経つかなぁ〜?
みんな覚えててくれてるかな?
集合場所は母校の入り口と決めていた。
だから私は入り口に立って待っていた。
約束した時間は朝の10時。
メモしてあったのをとってあったから間違いはない。
あとは友達が来てくれるのを待つだけだ。
これと言って店とかが近くにあるわけでもない為、ただボーッと突っ立っているだけだ。
それでも約束時間の30分前。ちょうど9時半だ。
念の為アルバムの写真を携帯にとって来ていた。
顔が変わってたらわからないが、そう変わるもんじゃないだろう…。
そう思って。
でね?何人かがぞろぞろとやって来る姿が見て取れた私は携帯に写してあった写真と見比べてみることに。
どこか面影を残している子もいれば様変わりしちゃった子もいた。
特に女子は化粧をして見違えた子が何人も…。いやぁ、化けると変わるもんだなぁ、などと思いながら挨拶を交わした。
そしたら昔、仲が良かった男子だったのだが、ウエスト周りが太くなっていたのでおもわず笑ってしまった。
「そりゃないよ〜。」
「悪い、悪い。」と言いながらも実際そうとは思っていないことは言わずにおいた。
その中で特に仲の良かった仲間が来ていない事にちょっとガッカリしてはいたが、場を白けさせたくはなかったので、そのまま話をし続けた。
そしたら仲間の1人がこう話し出した。
そいつはもう死んでるって。
「なんでそう言うの?」て言ったらね、こう言ったんだ。
「だってそいつの葬式にも出たんだぞ?」だって。
いつそんな事になったのか全く聞かされていなかったのでその程度の友達だったのかと肩を落とした。
それから集まった仲間達、と言っても20人くらいか、移動する事にした。場所は近くの喫茶店。
それほど大きくない喫茶店なので、私達が行ったら他のお客さん達入れなくなりそうだなぁと思った。そしたら仲間の1人が前もって予約してくれてたみたいで完全貸切となっていた。
手回しがいい。
店に着くと直ぐにドリンクをオーダーし、まずは挨拶や近況を報告した。
みんないろんな職場に着いてるんだなと改めて思った。
仲の良かったはずの死んじゃった子、生きてたら何になりたかったんだろうと考えていたらトントンと肩を誰かに叩かれた。
後ろは確か壁のはず。
トントン、…また叩かれた。
オカシイ。後ろは壁のはず。
そこで私はその場から移動した。
そして他の子達と話を始めるとまたトントンと肩を叩かれる。 話に夢中になってた私は肩に触れた手を振り払った。その時周りの人が驚いた顔をしていた。
「どうしたの?」
「あっ、あっ、…。」
そこには手だけがあった。
怖くなった私たちはその場からさっと離れた。
店員は何事かと近寄ろうとしたが、何人かに止められて近づくことはなかった。
そして気がつくと手は消えており、不気味さに店内はシーンと静まり返った。
「な、なぁ〜、別の場所に移動しようぜ。」
仲間の1人がそう言うとみんなこぞってその場から離れた。もちろん私もその1人。
「なぁ〜、さっきのアレ、手…だったよな?」
「ああ、うん、そうだよね。間違い無いと思う。うん。」
「でもなんであそこに出たんだ?あそこは俺達ほとんど行ったことがない喫茶店だったよな?」
「うわ、でもあの子とは何度か行った事があるから…。」
あの子とは亡くなったと言われている友達だ。
まさかあの世からやってきたんじゃあるまい。引きつりながらもみんな楽しくワイワイ騒いでいた。
でもね?またトントンと肩を叩かれて固まってしまった私は思わず「有里子?」と呟いた。するとまたトントンと肩を叩かれた。
怖かったけど後ろを振り返るとそこには不気味な姿の有里子が立っていた。
全身が真っ黒。
片手だけがユラユラと揺れていてまるでこっちにおいでよと誘っているみたいだった。
見ていた仲間達は皆引きつって中には騒ぐ子もいた。
男子がそうなんだから女子がどうだったかって言わなくてもわかるよね?そりゃもう大変だったよ。
徐々に近づいてくる有里子から距離を取ろうと皆一斉に後ろに下がる。
すると有里子は右手を出して人差し指を出した。そう、それはゆびきりのポーズだ。
約束を守って出てきたのかと私は思い半ば引っ張られるように有里子の元へ足が動く。そこを仲間達が必死になって押さえ込んだもんだからそれ以上前に進む事は無いとは思っても私も実際は怖かったので有り難かった。
すると有里子は悲しそうな顔をして徐々に後ろに下がっていく。まるで別れの挨拶をするかのようにお辞儀をして消えて行った…。
その場で見ていた仲間達は皆固まっていたのだが、私が近づかなかった事にホッとして、中には泣き出す女性もいた。
みんな怖かったんだ。
そう思ったらちょっとホッとしている自分がいた。
それ以降有里子の霊は現れなかった。
後日改めて有里子の家に行って実際に亡くなっていることを確認すると、母親が言っていた。
ゆびきりの事ずーーっと気にしてたって。
そう、彼女は事故で亡くなったらしい。
意識が亡くなる直前に「ゆびきり…。」だけ呟いて亡くなったそう。
それを聞いたらこちらとしてはなんともいいようがなかった。
だから今ここにいる仲間達だけでもと言う事で仏壇に手を合わせて祈った。
「ゆびきった。クスクスッ。」
そんな彼女の笑い声が聞こえた気がした。




