ぬいぐるみの悲劇
ルミ子は、学校でナナの死を知った。
最初はざまあみろぐらいに思っていたのだが、死に方を知った瞬間、まさに顔が青くなった。
ナナは、胸に巨大な穴を開けられて、自宅のベッドの中で亡くなっていたのだ。
しかも、布団やシーツには一切汚れがなかったという。穴も開いていなければ、血さえついていなかったという。服は血だらけだったのに……。
昨晩のことを、ルミ子は思い出す。
昨晩、どうしても気が済まなかったルミ子は、ペアルックのぬいぐるみを手に持ち、丑の刻参りをしに行ったのだ。
どうせ呪いなどかからないのだろう、とたかをくくっていた。言ってしまえば遊び半分、気が済まなかったから気持ちを落ち着かせるためだけにしたのだ。
白い着物なんてないから白ポロシャツに白いスカートで。首から下げる鏡は白い布を切れにして、それに手鏡を結びつけた。ろうそくも同じ。ただ、ろうそくの代わりに長めのバースデーキャンドルだったけど。
手に長い釘とトンカチ、そしてペアルックのぬいぐるみを持って、夜中の2時に家を出た。
近所の神社の建物の裏に、木が立っていた。そこに、藁人形の代わりにぬいぐるみを釘で打ち付けたのだ。あのペアルックのぬいぐるみをナナに見立てて。好きな人を取られた憎しみを込めて。
かつーん、かつーん、と音は響いた。
しっかり打ち付け、ようやく気が晴れて家に帰ろうとして、ふと後ろを振り返ると……
……ぬいぐるみから、血が滴り落ちていたのだった。