夢の社
ナナは、嫌な夢を見ていた。
(痛い……痛いよ……)
眠りにつく途中は、とてつもなく痛かった。
叩かれたような、殴られたような。いや、踏みつけられた? 分からない。分からないけど、痛い。でも中途半端な夢だったからか、真っ暗だった。ひたすら暗闇の中で痛めつけられる。
——怖かった。
夢の中で視界がはっきりし始めると、木の葉の上を歩くような音がした。
ナナは、誰かに片手で持たれていた。巨大な何かが、ナナを持っている。まるで、人形か何かを持つかのように。
何が自分を持っているのか、みあげようとしても、うまく見えない。周りを見渡すと、それは近所の神社だった。
巨大な何かは神社の裏に行くと、そこに一本立っている木に、ナナを押し付けた。
そして、ようやく見えた。
ナナを持っていたのは……巨大なぬいぐるみだ。
そのぬいぐるみは、ナナが持っているクマの女の子のぬいぐるみだった。
しかし、いつもと着ている服が違う。
いつもは可愛らしいピンクのワンピースを着ているのに、なぜか白いポロシャツに白いスカートだったのだ。首からは白い切れが下がり、その先の胸元には見慣れない手鏡がぶら下がっている。そして、同じような切れが頭に巻かれていて、そこには、二本の長いバースデーキャンドルが。そして、手には、トンカチ。今ぬいぐるみがくわえたのは、長い釘。
「!」
ナナは腕を振り回し、足をバタつかせ、叫んだ。
ぬいぐるみの魔の手から逃れたくて。
しかし、腕や足は言うことを聞かず、声は出なかった。
——胸が痛む。
ちくり、と針を刺されたかのように。
(……私……死ぬの?)
ぬいぐるみの手が、振り上げられ、
(そんなの……いや……)
勢いよく、
(やめて……)
振り下ろされた。
(……いやぁっ!)
かつーん……
かつーん……
かつーん……
かつーん……
釘が打ち込まれる音を聞き、
胸にとてつもない痛みを感じ、
血の匂いを感じ、
ぷつり、とナナの意識は途切れた。