不気味な感覚
「私、実はね・・・」
「海紅ちゃんたちと友達になりたかったの!
だからクラスの子に教えて貰ったんだ!」
そう・・・なのか。
何だかまだ引っかかった気持ちもあるけれど
そう思ってくれたのは素直に嬉しい。
「本当に海紅たちと仲良くなりたかったの?
それだけ?」
「うん・・・聞いたって言ったら引かれちゃうかなーと
思って・・・!」
「なぁんだぁー!良かったー!仲良くしようね!」
海紅は結局そう返して、連絡先を交換して
解散したけれど私は何か腑に落ちない。
友達なんてレベルじゃない。
もっと深い関係がある気がするんだけど・・・
やっぱり何か変だ・・・。
その日の夜も掃除をしながら同じ事ばかり
考えていたけれど全く分からない。
それもそうだ。ちょっと気配を感じただけで
何の根拠もないことを考えているのだから。
「はるかちゃん、そろそろ寝たらどうだい。
あとはワタシがやっておくから」
祖母が部屋から出てきた。
いつもそう言ってくれるけれど、無理をして
倒れたりする方がダメだ。
「大丈夫だよ、これが終わったら寝るから
おばあちゃんも寝なよ。」
「そうかい・・・悪いねえ。そういえばさっき
はるかちゃんの携帯が鳴っていたよ。
お友達からの連絡じゃないかい?」
「えっ?そうなの?」
全く気付かなかった。水周りの掃除をしていたから
水の音で何も聞こえなかった。
「それじゃ終わったから戻るね、おやすみ」
「いつもありがとうね、おやすみ」
そう言って私は自分の部屋に戻った。
「ふぅ・・・」
夕飯の支度・洗濯・掃除・宿題を全て終わらせて
自由な時間になるのは大体10時過ぎくらい。
明日も早く起きて弁当を作らなければならないため
日付が変わるまでには寝る。
だから自由な時間は2時間もない。
そんな貴重な時間はとても心地がよい。
好きなことをしてゆっくりとくつろげるから。
あ、そういえば連絡があったんだっけ・・・
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宛先 Yaminoshihainin@jk.com
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差出人 菜々乃
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今日はありがとう(o^^o)とっても楽しかったよ。
また3人で話そうね!
あと、沈黙しちゃったりしてごめんね。
本当に何も無いから安心してね!
それじゃまた明日〜(´ー`)/~~
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ゴミ箱に入れる │ 返信 │ フラグを付ける
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そういえば菜々乃と連絡先を交換したんだった。
わざわざメールを送ってくるなんて
よっぽど嬉しかったのだろうか。
さっきも海紅と仲良くなりたかったからって
言ってたし、やっぱり仲良くしたいだけだったんだ。
菜々乃にメールの返信をして
今日はやけに疲れたから寝ることにした。
・
・
・
3人で過ごすようになって一ヶ月の月日が流れた。
私達はすっかり仲良くなって週末はいつも
どこかへ出かけては遊んでいる。
そして、今日は3人で新しくできたという
遊園地にやってきた。
「すごーい!!広くて綺麗だね!」
「海紅ーはしゃぎすぎだよー!ウフフ!」
「そういう菜々乃もはしゃいでるんじゃない!」
とても楽しみにしていた遊園地。
電車の中で何から乗るか話し合った結果
初めにお化け屋敷に行くことにした。
「菜々乃ちゃん、お化け苦手って言ってたのに
本当に大丈夫なの?」
「そーだよ!菜々乃が倒れたら楽しくないよ!」
私達も無理をさせてまでお化け屋敷に
行くつもりは無い。
というか、むしろ私はお化け屋敷は行きたくない。
でも海紅が楽しみにしていたから行こうと言った。
「本当に大丈夫だよ!たまにはお化け屋敷も
いいかなーと思って!」
「じゃあ早速行こう!」
お化け屋敷はこの遊園地の人気アトラクションだ。
さらに今日は三連休の真っ只中。ものすごい人だ。
私達は100分待ちと書かれたボードを抜けて
並び始めた。
「やっぱりすごい人だね・・・
お土産やさんもすごい人だろうね」
「こんなに並んでるけど
ジェットコースターも乗れるのかな?」
「え〜!海紅、モンキーマウスと写真撮りたいけど
この人混みじゃ無理だよぉ」
どうやらモンキーマウスとはこの遊園地の
イメージキャラクターのようだ。
キャラクターと写真を撮るのに
何十分も並ばなければならない。
本当に全部行けるのかな?
そうこう言ってるうちに私たちの順番が
回ってきた。
「いよいよだね〜」
「ああぁ怖くなってきたぁ」
係員の人に案内されて黒いカーテンのかかった
扉を開けて中に入る。
少し中を進むと真っ暗でほとんど何も見えない。
これじゃどこに何があるのかも分からない。
「物凄く暗いね…」
「あっ、あそこ少し明るいよ!」
「あそこで少し休憩しようか!」
ランタンの付いたくぼみのある所で
少しとどまることにした。
後ろから人がやってくるけどくぼみがあるから
詰まらずにスムーズにいける。
なんとなくやってくる人を見つめていた。
家族連れが多いけれど、やっぱりカップルが
1番多い気もする。
そりゃそうだろう。お化け屋敷と言ったら
遊園地デートの代名詞だ。
すると、ある男性になぜかオーラを感じた。
あれ?そういえば菜々乃と出会った時も
こんなオーラを感じた気がする。
その男性は彼女らしき人と2人で手を繋いでいた。
顔はサングラスと帽子を付けていて、暗いせいもありほとんど分からなかった。
不思議な気分だった。
それと同時に不気味な感覚にも襲われた。
何だかここに居てはいけないような罪悪感に
心が蝕まれるような感覚だった。
カタカタカタカタ
ん?なんの音だろう
横を見ると菜々乃が涙目で震えていた。
ここにはまだお化けもいないし、
ランタンで暗いわけでもないけれど・・・
「私、私ッッ・・・・・・うぅぅ」
菜々乃が泣き出した。
to be continued・・・